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人々の網の目 - Web of People -

 無知をさらけ出すことを恥じず告白しよう。モーリス・ブランショの名を意識するようになったのは、ほんの数年前、このサイトを通してである。恐らく、それまでにもその名を目にはしていただろう。しかし、それまでは単なる文字列の一部に過ぎなかった。だが、このサイトに接した途端、ブランショという文字列は一つの固有名詞となった。それほどに、発信者による浩瀚な文献目録 ‐ブランショ主要著作目録とブランショ邦訳文献リスト- はインパクトがあったのだ。そこでは、いまなおフランスに存命する作家にして批評家への一種の入れ込みようが感じられ、強い印象を残したのである。その印象は再訪したいまでも変わることはない。だが時を経たことで新たな発見があった。たとえば、「ブランショはどこで誰を論じているか」という視点でまとめられた文献データはその一つだ。先のブランショ初体験以降、その名に多少なりとも敏感に過ごしてきたはずである。その結果というべきだろう、ブランショ以前に既知の人物のなかにブランショによる影響を受けたとされる人々を見つけていた。たとえばデュラスであったり、たとえばバタイユであったり……。もちろん断片的で、なかば受け売りめいた知識に過ぎない。だが、それでもその知識が「ブランショはどこで誰を論じているか」というデータと照合する部分を持つと、より詳しくより正確に知ることへの欲求が静かに湧き上がってくる。いまはまだそこまでだ。だが、またしばらく時をおいて、再々訪してみよう。そのときはここで公開されているブランショ関連の翻訳文に好奇心が湧き上がってくるかもしれない。もし湧き上がってくるものがなければ、また時をおこう。そしてまた訪れよう。なにかが湧き上がってくるかもしれない。あるいはなにも湧き上がってこないかもしれない。だが、いずれにせよふとまた訪ねてみたくなるだろう。そうぜずにはいられない不思議な魅力があるのだ。(2003-02-23記)


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