早くから歴史史料の電子化、データベース化に携わってきた研究者の一人。その成果の一端は、東京大学史料編纂所で古文書フルテキストデータベースとして公開されている。またこの「実験研究の報告」として科研費報告書「日本中世古文書フルテキストデータベースの構築方法に関する研究」が公開されている。さて研究成果であるデータベースは自ずと利用者を限定せざるを得ない。また誰もがその恩恵に与かれるわけではない。そう考えると、より多くの人々にとって有益なのは、むしろ他分野での応用について示唆に富む科研費報告書のほうかも知れない。特に「あとがき ―共同研究の問題意識と若干の予測―」で示された論点は、先見性に満ち、いまなお新鮮味を失っていないだろう。歴史史料の電子化という専門分野を超えた幅広い文脈で関心を持ち一読することを勧めたい。（2003-05-07記）