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榎本誠さん(えのもと・まこと/ローレンス・スターン研究)
榎本研究室<http://www.adm.kanagawa-u.ac.jp/fs/enomoto/enolab.htm>
公開日:不明

 サイバースペースでは特に根強い人気があるイギリスの小説家ローレンス・スターン(Laurence Sterne、1713〜1768)。ここでは18世紀のイギリスに発するとされる近代小説のパイオニアの一人の横顔にふれられる。のっけから、「成立したばかりの近代小説という表現形式を、もうぶち壊そうと試みたかのようなLaurence Sterne」(「Tristram Shandy における表現技法の意味」『国際経営論集』10、1996年2月)という表現が飛び出す。これにはぐぐっと引きつけられるだろう。「近代小説の典型的な形式と全く異な」り、その作品には「一貫したストーリーというものが初めから無い」という。また「広い意味でのこの当時のマルチメディアと呼んでも差し支えない」との指摘も見られる(「Tristram Shandy における時間とSterne の意匠 マルチメディア的小説」神奈川大学経営学部17世紀研究会「麒麟」5、1996年3月)。なるほど、デジタルメディア論にこの作家の名が挙がるわけだ(有馬哲夫『デジタルメディアは何をもたらすのか』国文社、1999年)。点と点が結びつき線となる、そんな一瞬が秘められたページである。さわりだけでも魅力的で刺激的な作家論、作品論にふれると、「その奇抜な発想とスタイルに魅せられ、抜け出せなくなった」という発信者の思いが垣間見えるようだ。紀要論文等を良い意味で使いまわし、スターンについての基礎知識を手際よくまとめ、「この不思議な世界」へと読者を誘う構成も見事。また、すべてを追うことなく誘いにとどめ、別の研究者による、より本格的なサイト「電脳世界のローレンス・スターン」に読者を導く姿勢も素晴らしい。作家とその作品世界への真剣な入れ込みぶりが感じられる発信だ。(2002-09-25記)


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