人々の網の目 - Web of People -

　日本人英語学習者コーパスデータが示すように、英語研究資料の公開にいち早く取り組んできた研究者としての顔を持つ。また1993年という極めて早期に外国語教育へのインターネット導入に取り組んだ教育者としての顔を持つ。さらには英語教育をテーマとするメーリングリストEFLJを1995年に立ち上げ、運営してきたネットワークのオーガナイザーとしての顔を持つ。まさに先駆者の一人である。研究・教育両面でのネットワーク利用を実践してきただけではない。経験に基づき、「WWWの研究面での意義」「外国語教育におけるインターネット導入の意義」を早くから考察してきた。その成果の一端は、「WWWページ作成の意義とその研究利用」と「インターネットを利用したライティング授業」として公開されている。ここで展開されているWWWによって研究者による研究共同体が成立する、という議論はいまなお新鮮だ。しかしそれ以上に傾聴したいのは、インターネットの利用は「研究のありよう」「英語教育のあり方そのもの」に影響していくという指摘だろう。ここにはインターネットのインパクトに正面から立ち向かおうとする姿勢がある。皮相的な解釈に陥るのではなく、根源的な問いを見出そうとする志向が強くある。インターネットの普及が進んだ現在では、各論には賛否があるだろう。だが、インターネットに対してラディカルな問いを立てるというその姿勢には、みならうべき点が少なくないはずだ。（2002-03-18記）