本務校である上智大学をはじめ、出講している各大学でのイスラム関係の講義資料を公開している。レジュメはもとより、先行研究の文献ガイドは貴重な発信。聞きかじりに過ぎないことが多い我々の知識が広がり、深まる機会を与えてくれる。あわせて「私たちの多くにとって、中東という地域、イスラムという宗教はなじみが薄く、ステレオタイプにとらわれた理解に陥りがちである。この講義ではイスラムの基礎とその実践について、柔軟で地に足のついた理解をめざしていく」といった各講義の概要説明を傾聴したい。「イスラームを日常として生きる人々の暮らし」「living Islam（生きているイスラム／イスラムを生きる）」と、視点はどこまでも「等身大のイスラーム」理解に置かれている。このような異文化理解を基軸とした視点は、エジプトの西部砂漠に住むベドウィンをフィールドワークを通して研究する人類学者ゆえだろう。安易なイスラーム理解がよりいっそう戒められるべき現在にあって、いっそうの意味を持ってくる発信だ。（2002-03-18記）