発信者の研究対象は近代日本の性と性欲に関わる言説。数編の論文や著書『セクシュアリティの歴史社会学』（勁草書房、1999年）の正誤表が公開されているが、なによりも圧倒されるのは広範な文献目録群。明治以降の文献を集めた性欲文庫やオナニー文献目録、大正期の通俗性欲学の大御所である羽太鋭治と澤田順次郎の著書の所蔵文献目録がそれだ。徹底した文献渉猟ぶりは、古書収集を趣味とする発信者の面目躍如といったところか。だがなによりも、各目録の切り口に大いに感心させられる。なるほど、性や性欲、自慰といった切り口で、近代日本を見ていくと、教科書からは浮かんでこない明治期、大正期の日本の姿が浮かんでくる。歴史社会学者ならではの労作だ。（2002-07-30記）