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足達薫さん(あだち・かおる/イタリア美術史、図像解釈学)
足達薫の芸術史ゼミナール<http://human.cc.hirosaki-u.ac.jp/cp-kouza/adachi.htm>
公開日:不明

 手に取らずとも、その華麗な装丁と重厚さが印象的だった大著『ヴァールブルク学派』(松枝到編、平凡社、1998年)によって、ヴァールブルク学派の名を知ったという人も多いのではないか。ここでは、そのヴァールブルク学派の研究、特に図像解釈学(イコノロジー)がイタリアで受容されていった過程と16世紀イタリアの画家ジョルジョーネに関する文献紹介が公開されている。ここにジョルジョーネという作家が登場するのは、理論的な関心にとどまることなく、「具体的な作品論を基礎に据えることが必要」という考えに基づくようだ。
 だが、全般的に説明不足の感がある。大学での講義用という趣きがある以上、やむをえないのかも知れないが、この状態はやはり惜しまれる。もう少し研究の背景が説明されていると、意図せざる来訪者にも図像解釈学の世界がより広がってくるのではないだろうか。たとえば、なぜイタリアでの受容を問題とするのか、なぜジョルジョーネがクローズアップされるのか、といった疑問を解く道しるべが欲しい。鈴木杜幾子さんによれば、ヴァールブルクの議論は「主としてイタリア初期ルネサンス美術の研究を通じて」(「世界大百科事典」)行われたという。また若桑みどりさんによればジョルジョーネは「生涯および作品についての資料が乏しく、そのため真作決定、年代決定さらにその主題の図像学的意味の解明がはなはだ困難」(「世界大百科事典」)だという。こうした事典の解説を、なぜイタリアか、なぜジョルジョーネかという疑問と結び付けられるのか、あるいはもっと別の説明が可能なのか……。シンプルな発信であるが、だからこそ尽きることなく問いが湧き出てくるのかも知れない。なおさら答えへの手がかりが欲しくなる。(2002-03-18記)


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