北アルプス西銀座縦走
黒部五郎岳から三俣蓮華岳〜双六岳を経て鏡平〜新穂高温泉へ


7月18日(木) 折立===太郎平小屋(泊) 
7月19日(金) 太郎平小屋===北ノ俣岳===中俣乗越===黒部五郎岳===黒部五郎小舎(泊) 
7月20日(土) 黒部五郎小舎===三俣蓮華岳===双六岳===鏡平小屋(泊)
7月21日(日) 鏡平小屋===ワサビ平===新穂高温泉


例年、梅雨明けを待ってアルプスを歩くのだが、今年は、仕事の関係で、1週間早くの計画にした。
異常気象でお盆過ぎの台風が到来したりと、出発前まで天気予報にヤキモキ。
心配が的中で、初日以外は、雨、霧、曇り。
雄大なアルプスの展望を楽しむことはできなかった。
唯一、花だけが沈みがちな心を和ませてくれた。
わずかに晴れ間に撮った貴重な花の写真で山記録に彩りを添えてみました

タカネヤハズハハコ

ニッコウキスゲ

7月18日(木)
大阪を朝出発し登山口の折立へ

12時15分、登山届けを提出し、太郎平小屋へ向け出発。

登り始めて1時間ほど経った頃今回初めてご一緒したFさんが足に痙攣。登山の初心者ではないが、縦走での大荷物で少々堪えたのかもしれない。

しかし、Fさん、Iさんと現役ではないがナース。状況に応じたテキパキとした処置に、黙って様子をみることにする。
Fさんの荷物を他のメンバーで分担し、痛み止めの処置を施しながら、ゆっくりと登って頂きながら様子をみることにする。



太郎平小屋前から薬師岳を

三角点を過ぎた時点で、太郎小屋への到着が遅くなる連絡を携帯でとってみるが、圏外で繋がらない。

コースは明確でもあるので、私とリーダーのT氏が先行し、T氏がUターンで残りの3人を迎えに行くことにする。

17時15分、小屋に到着。荷物を置き、T氏が来た道を戻る。
18時前4人が小屋に到着。

処置後のFさんは、その後順調に回復したようで、特別異常も起きずに前進できとのこと。(^。^;)

太郎小屋は、夏休み前でもあるためか、一部屋を私たちだけで占有できるゆったりさ。

キヌガサソウ

ゴゼンタチバナ

7月19日(金
昨夜半から、雨と強い風が小屋の屋根を叩いている。黒部五郎岳への長い稜線歩きは、雷雨になるとエスケープルートもなく危険。
何とか雨を避けたいと思うが期待に反し、濃い霧が流れている。ひょっとしたら、黒部五郎岳は無理かも…
このまま小屋にとどまり、明日になって天気が回復したら薬師岳に登って帰ることになるかもしれないなーなどと眠れるままに、4時過ぎに起床。5時出発の予定で、朝食は弁当にして頂いていたのだが、天気が思わしくなくしばらく様子をみることにする。
とりあえず小屋で、スープを作り、朝食にする。リーダーのT氏と「どうしましょうか?」
「そうやね…」随分考えておられたようだが、とにかく出発しましょうということで
6時に雨具を着け出発

8時北ノ俣岳のピーク。
雨と強風の中の山行は厳しい。
強い雨だが雷の心配はなさそう。
Fさんも順調。他のメンバーも元気。

登山道は、ほとんど強い雨で沢のようだ。


キバナシャクナゲ

ハクサンチドリ

稜線に出ると、たちまち激しい雨と強風に身体を前屈みにしても何度も吹き飛ばされてそうになる。

北ノ俣岳を過ぎた頃、単独の男性と出会う。聞くと断念して戻るとの事。

9時赤木岳のピーク。

後の話では、この時点でT氏は撤退を考えていたようだ。
ガスと霧は変わらないが時折雨も小雨になり、風も弱まり、このままいけば回復していくかもしれないといった状況もみられ、前進すべきか撤退すべきか、随分リーダーは悩んでおられたようだ。
そんなT氏と打って変わって、メンバーは、至って気楽。
「行きますか?」との問いかけに「はーい!行きます」という訳で、黒部五郎岳へ前進。


テガタチドリ

回復の兆しが見えたのも束の間、益々風の勢いは強く、下から横から容赦なく攻めてくる。2歩足を進めては踏ん張らないと飛ばされる。顔に当たる雨が痛い。立ち止まると冷えて寒い。
何故だか、以前読んだ新田次郎の小説「聖職の碑」の暴風雨の中で遭難死をする子供たちの場面が頭に巡ってくる。
もちろん、今日の私たちはルートも確かだし、装備も充分。100%の安全など約束はされないものの、今の時点では問題はないであろう。
とにかく、それぞれが怪我などをしないように慎重に前に進むしかない。
後の話で、やはりメンバー夫々も色々考えたようだ。
「ザックを置いて最低の装備だけにし、この急場を早く抜けよう」「どこか防風雨を避ける場所をみつけて、ビバークを」など…
12時やっとの思いで黒部五郎岳の肩に。
ちょっとホッとする。心に不安感があるものの皆明るい。
立ち止まれないので昼食の装備も使えない。非常食だけの身体では、少しでも早く小屋に辿りつくのが先決と、黒部五郎岳のピークをあきらめ、小屋を目指す。

五郎岳への途中で、もう1人単独行の男性に出会う。五郎小屋から来た始めて出会う人である。「五郎からの稜線は、あまりに強い暴風雨で歩けない。カールから来た」と
但し、カールも相当な増水とか。いずれにしても、稜線は危険でもありカールへ下る。

本当ならお花畑の最高に快適な歩きのはず。
登山靴は既に水びたし。
2時 やっと小屋に到着。
五郎小屋も、この悪天候で、ゆったりしたものだ。
でも、こんな天候でも、ツァー登山客が居るのには驚き。
東京のツァーで15人程だそうだが、話を聞いてみると相当ハードな健脚ツァーのようだ。
濡れた衣類を替え、遅くなった昼食のラーメンを炊きやっと一息。
明日は、きっと晴れるだろうと期待を胸に眠りにつく

7月20日(土)
雨こそ、あがったものの、やはりガスって視界は悪い。
北アルプスの醍醐味を楽しみにここまできたのに、もうがっかり。
唯一、可愛い高山植物が心を慰めてくれる。この時期、花は本当に多い。
次から次へと出現する花に、ここまで頑張ってきて良かったと思う。

9時 三俣蓮華岳山頂。360度の展望もゼロ。長居は無用。

11時 双六岳山頂。ピークに立つとやっぱりあきらめていたが展望の無さにがっかり。
広々ろした双六の稜線からは何度も写真で目に焼きついた槍や穂高の勇姿を横目におそらく至福の時を味わっていたであろう…あーぁ溜息が出る。

12時 双六小屋にて昼食。

13時15分 双六岳小屋出発
小屋からの小ピークで、パッと視界が広がり、思わず拍手。

晴れていたら、山頂で展望を眺めながら食べようと思って重いすいかを担ぎあげてもらっていたのだが、食べるチャンスもなし。
この晴れ間に、ここでスイカを切る。甘いスイカでお腹を満たし、鏡平小屋へ。

あちこちで写真を撮ったりと遊んできたので、予定タイムを大きくオーバーして
16時着。
やはり天候が悪いためか、鏡平小屋もゆったり。

今回は3泊とも小屋は個室をメンバーだけで占有と恵まれていた。



クロユリ

ミヤマダイモンジソウ

7月21日(日)
最終日。今回の最後の望みは鏡池に映る槍の姿を見ること。
しかし、どこまでも天気運に見離され、夜半から雨。時折稲光も…
せっかく乾かした雨具をまた取りだし、身につけ下山にかかる。
今年は雪も多いのか、新穂高の登山口近くまで雪渓が残っている。
川は雪解けと今回の雨とで大変な勢いで流れている。
普段なら小石の上を飛び越えて簡単に超える沢のようだが、水量が多くて浅瀬を選んでも、うっかりすると靴に水が入ってしまう。もう開き直りで水に濡れて歩くことにする。

登山口からは長い林道歩き。久しぶりの青空。
ちらっと西穂高の頭が…

平湯温泉で汗を流し、高速バスに乗って帰阪。

夏休みに入り、道路は渋滞で大巾に到着も遅れ、23時やっとのことで自宅に辿りつく。

悪天候で、展望には恵まれなかったが、全員無事で、ここまでこれた事に心から感謝。
地図を広げ、「あまりに素晴らしい山だから一度に展望も花もなんて欲張ったら駄目ってことなんだわ」「またいらっしゃいって事なんだね」と仲間と自分たちの歩いたルートを確認しあう。
そして悪天候の中の山行がいかに厳しく、また危険を伴うかということを身をもって体験。
きっと、この経験はこれからの私の山行にどこかにいきてくるだろうと確信し、益々山にはまってしまった2002年の夏山パートTでした。

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