03年度 読者便り から    

03/01/25


「毎回、ドッキとするような話で、怒ったり、涙が零れそうになったり、
いつもありがとうございます」
「学校の学力低下が問題になっています。、、、、、、、、日本の憲法は「能力にしたがって教育を受ける権利がある」というのに日本の左翼は平等主義に関わり過ぎたように思われます。ときに中国では文革で知識層を虐待して(カンボジャのポルポト政権は殺害までした)、学生も下放とかで農村に送ったりしていたが、文革後は、日本以上に能力重視の学校制度になったと聞きます。若しそうなら、現在の中国の発展も能力重視の教育制度の結果にもよるか、本当のところはどうなんでしょうか、お分かりでしたら教えていただきたいところです。」
 
 これに関してもやがて記事が出ると期待しています。

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訳者
 私の知っている所は、大連と杭州と上海の学生ですが、家庭では家事を一切しません。その暇があったら勉強しなさいと親が叱ります。(95年頃から自宅通学が許されています)

 大連の時、有る家庭で子どものピアノの相手をしましたが、ピアノ塾の練習速度と練習量には吃驚しました。私も9年日本で習いましたが、日本では普通、教科書は2冊以内です。予備の練習曲を入れても3冊です。ところが中国では5冊有りました。
 そして課する練習時間も日本の倍以上ありました。
 これらの意味する所は、競争が猛烈であると言うことでしょう。
 日本より遙かに少ない大学に日本の人口の10倍が希望するのです。
 ピアノの栄光を得るには日本の10倍の競争を勝ち抜かなければなりません。
 子どもに熱い期待を掛けるのは、親の老後の社会保障が無いことも関係しています。私は大連で勉強したとき、私と私の子ども達との間に援助関係がないと言ったら中国人は驚いていました。
 
 年末にも多くの密航者が東京に来て銀座をトラックで逃げる所を逮捕されましたが、彼らが「蛇頭」に払う金額は数十万元ですね。それを払っても、命がけで日本に来て稼ぐ、これが彼らの生きる唯一の道なのです。中国の経済発展が始まったのは「国民計画経済」が廃止されて以降です。
 南の海岸側で特に経済発展しているのは、海外と自由に取引できる条件があるからです。
 
 この様な競争と「能力主義」とどう関係しているのか。詳しくは解りません。

03/03/16

1.
私は毎月、青山学院大学を会場に開かれるWTO(World Trade Organization) 研究会に参加しているのですが、昨夜は中国のWTO加盟後の実情について、フォワーダーの報告を聞いたのですが、あなたが提供されている情報のように表向きの措置とは別に官僚たちの不当な行政に大いに悩まされているようです。

2.当方夫婦で春節ホームステイツアーに行ってきました。ホームステイ先は韓村河(北京郊外、市内からバスで1時間位)。中国唯一のサクセスストーリー(成功談)と思われます。
1軒320へーベ、集中暖房で水洗トイレ付き、村中が豪邸です。
高齢者に年金、小麦粉はただに近い値段で支給、夢のような村です。
集合住宅のパンフと中国石油部のカレンダーも併せて進呈します。

3.「東北現象

の記事なかなか意味深ですね。この中国の現象を見ると、かって日本の産業を支えた九州の三池や北海道の夕張のことを想起しました。

03/03/17

「根拠のない加刑」

これはひどいですね。まるで人権が守られてない。どうしてこんな野蛮なことができるのだろう。しかし,同じようなことをブラジルでも聞きました。ブラジルでは日本に出稼ぎに行くことを絶対言わないそうです(出稼ぎ先は日本だけではないようですが)。ばれると帰ってきてから必ず賊に襲われるからです。
よく考えてみると、この背景には貧困がありますね。街や他国に出稼ぎに行かざるを得ない貧困があると思います。またそうなるとどこでも悪いやつはいるもので,これも貧困がゆえに人の稼ぎを横取りしようとするハイエナが出てくるようなものですね。まさに衣食足りて礼節を知るということですかね。
昨年の関西のクラスメイトの同窓会で、新日鐵化学から深センに長い間支社長として赴任してた京都出身の男が言ってましたが、「毎日のようにゴルフをやったが、ゴルフをやってるときが一番安全だった」と、どうしてと聞くと、会社が金を払っているので,その筋(暴力団)が守ってくれるからだといってました。そうしたら随分金も使っただろうというと,日本の金にしたら知れてるとの返事だった。
今回のような警察や公安による略奪は明らかに権力の退廃堕落ですね。昨年の全国大会でもかなり問題になってると日本の新聞にも報道されていましたが,リアルな翻訳を見るとやはり驚きますね。

振り返って日本はどうだろうかと、やはり日本人であるがゆえ考えてしまいます。流石日本は近代化された法治国家、中国やブラジルのように野蛮なやり方で人の稼ぎを略奪することはしない。暴力団でさえあからさまには略奪できない。
しかし、彼らは法の網をくぐって隠然と脅迫をちらつかせ、企業の上前をはねてゆく。また彼らの少々の暴力には警察は見てみぬをしている。そのために神戸では最近一般市民の犠牲が何件か発覚し,警察が放置したと訴えている。
政治家となるともっと巧妙であることはよくご存知で、族議員は官需を提供することを約束して政治献金を受け太っていく。官僚は自分の天下り先を必要以上に作って、何度も天下っていく。そのたびに何千万円の退職金を得てである。そのため、日本は世界の先進国に例を見ない、銀行・ゼネコンを巻き込んだ公共事業大国になってしまった。そしてまた日本国民は先進国に例を見ない借金政府を抱えることになってしまった。それでも政府は大丈夫と思っているらしい。それは勤勉な日本人の貯蓄が一千兆円以上あるからだとみているようだ。したがってこれから福祉(年金・医療費など)を削って消費税など税金を上げ追々国民から収奪していけばよいと考えているのではないだろうか。既に構造改革のもとに始まっているようだが。

「アメリカが軍隊を投入するかも」と言うブラックユーモア分からないではないが、アメリカは中国にはよほどのことがない限り手を出さないと思いますね。何故かって?それは石油がないからです。今のブッシュ政権は核と石油に特別の力点を置いているように思います。軍事面からだけ見ればアメリカの力は圧倒的です。アメリカ以下の10ヶ国を合わせても勝てないといわれるほどですから。だから力だけから見ればアメリカは世界中どこにでも手を出せるでしょう。現に「力の政索」によってそうしているといえるかもしれません。
国連の反対を押し切っても、無法といわれることを無視しても、イラク戦争をやったのもその一貫だと思います。
しかし、最終的にはアメリカはイラクを支配できないと思います。ベトナムと同じように。どの民族も他民族に支配されるのは我慢あらないと思います。それが人類の歴史における20世紀の最大の教訓ではなかったかと思います。
そして民族自決のもとに世界に190ヶ国を超える国々が誕生してると思います。

余談になりますが,私もエジプトに行った時イスラムの世界を垣間見て、我々と大きな考え方の違いを感じた点があります。それはバクシーシ(喜捨)といわれる精神・考え方です。一口には言い表せませんが,「富める者は喜んで物を与えよ」、それが当然のアラーの精神という考え方です。ですから向こうの金持ちはラマダン明けなど年に一度は貧しい人々に振舞っています。
日本の旅行者はチップと受け取っている人もいますが、基本的なところで違っている
と思います。旅行者は富める者と考えているようです。ですから旅行中に巷で物を置き忘れたりすると,それを拾った人のものになるのです。「それは私のものです」といってもダメなのです。「いや,これはアラーの神が私にくれたものです。」といって返してくれません。それでも返してもらおうと思うとそれなりのお金を払わなければなりません。場合によっては返してくれません。
喜捨とは上手いこと訳したものです。
今度のイラク戦争のテレビ映像を見て、無政府状態になるとものすごい略奪が堂々と行われ,それも誇らしげに見せながら奪っていく姿に、そのことをつくづく感じました(もっともこれはアメリカのやらせという報道もありますが)。彼らはアラーの恵みと考えているのではないかと思います。
日本や欧米では,人のものには手を出さないと言うのが常識ですから、この考え方の違いはなかなか分からないと思います。現に阪神大震災の大混乱中でも、よそからの火事場泥棒はありましたが、略奪のような混乱はまったくなく、むしろ互助精神が発揮され、人間のすばらしさを感じたほどです。暴力団でさえ任侠精神をこのときは発揮して炊き出しなどやったのですから。この日常の考え方の違いは大きく,富めるアメリカはてこずると思いますよ。もたもたしてるとすぐ反米感情に転化しかねないと思います。既にその傾向が出てますが。

03/03/17

訳者
実は南方週末03/0306 のホームページが読み込めず、この週は発行されないものと思っていました。ところが添付の朝日新聞によって、江沢民によって妨害されていることを知りました。やはり中国のトップでは凄い権力争いが行われているのですね。
この朝日の記事から、この号が100万部も売り切れたと有りますから、ものすごい人気ですね。(この南方週末も、朱鎔基さんも)

12年前、天安門事件で学生達が射殺されたとき、実は新聞というものはまだほとんど発行されて居なかったと聞いています。
(人民日報以外。この新聞は発行されているがあまり読まれない。)あの天安門事件を知ったのは都会のほんの一部の人だけだったと、聞きました。
それから推測すると中国の民主化も、凄い早さで進んでいる、と言うことになります。

.03/03/25

「今朝25日、朝日新聞朝刊6ページ「地球儀」欄で、「南方週末」が朱首相を褒める特集号を出し、「庶民が日常的に感ずる不満を共有し、官僚と抵抗勢力の壁に切り込む姿勢が広く共感を呼んだのだろう」とありました。そういう良心的な新聞なのですね。それにしても読むだけでも大変な記事量の中国語で翻訳する努力を惜しまない要さんも、同じ使命感でおやりになっているのでしょう。私も怠け心に鞭打って、乏しい理性と良心を駆って努力をせねばと思っております。ご健闘を祈ります。」


 中国は、ますます注目を集めるこの頃ですが、いつも中国情報のメイルいただきありがとうございます。
民族が多く、人口が多く、また国家体制の問題も含め、最新の中国の問題点、実情を知ることが出来感謝しております。

03/8/25 

  今度の『中国の腐敗に付いての紹介』

を読んで少し考えてみました。「社会主義」って何だろうと? 昔少しかじった知識から判断しても疑問に思うことが沢山あります。
ソ連が崩壊して、資本主義が社会主義(共産主義)に勝ったと言われました。その中心のアメリカで、「やがて21世紀のマルクスが動き出すだろう」と予言する学者も現れています。
それはさておき,中国は社会主義? 本当にそう呼んでよいのだろうか? 私は疑問に思っています。確かに,「市場経済を通して社会主義へ」と言われているようですがまだ社会主義ではない,しかし資本主義でもないのでしょうね。

すると、そもそも社会主義ってなんだろうということになってきます。
今まで,「資本主義の搾取から抜け出す手段は、生産手段の社会化(共有化)しかなく、これが社会主義の基礎だと、そしてそれによってやがて富(生産物)の公平な分配をもたらすことができるようになる」と理解してきました。
しかし,歴史はそう単純ではなく、マルクスやエンゲルスの予測と違って資本主義の発達してない国が社会主義を目指して失敗したというのが現実ということになってしまった。

この歴史的現実から何を見たらよいのでしょう。結局のところ搾取が存在する限り社会主義とはいえないのではないかと思います。それが資本家によるものでなくても、ある特権階級であっても同じことだと思います。
よく計画経済か市場経済かで社会主義か資本主義かが云々されますが、それは少し違うのではないかと思います。資本主義だって、独占段階に入っている先進資本主義国では、資本主義生産の無政府性から脱却するために,ケインズの理論にもとずき政府介入の計画経済による生産調整を実施している訳ですから。ソ連や中国の場合、計画経済というより統制経済といったほうがむしろ近いのではないかと思います。

さて中国の現実ですが,古い社会制度を残したままで、一党独裁の特権階級支配になっていると見れます。人口の8割を占めるといわれる農民は取り残されたままです。他の2割が経済解放区による工業生産の恩恵にあずかっているとしても、今の現実は富の公平な分配(社会主義)にはほど遠い話と言わざるを得ないのではないでしょうか。

ソ連もスターリンがメンシェヴィーキや他の政党を潰して、ボルシェヴィーキの一党独裁にしてしまった。一党独裁では、国民の意思や知恵は活かされず、結局歴史の進歩に耐えられなくなって崩壊したということではないでしょうか。

また、中国の党の思想や北朝鮮の党の思想ですが、研究者ではないので口幅ったいことは言えないのですが、彼らの思想は毛沢東思想やチュチェ思想ではあっても、マルクス主義とは違うのではないかと思っています。もう40年位前になり忘れましたが,毛沢東の{実践論・矛盾論」やマルクス・エンゲルスの文献などかなり読んだことがありますが、少し違うのではと思ったことがあります。それはマルクスにはチャーチスト運動にもとずく議会主義はあるが、一党独裁の考えはなかったように思います。

さて、北朝鮮からの拉致帰国者の変化についてですが、なかなか鋭い分析ですね。結論から言えば、私も貴殿の見解にまったく賛成です。彼らについての情報をすべて追ってきたわけではないのですが,少なからず関心をもって新聞記事など読んできました。その中で、まだ子供たちや夫を残してきた辛い条件の制約から、すべてのことを吐露できないのですが、彼らの表情や言動には(特に,蓮池夫妻と曽我さん)、帰国時の不自然な硬さと違った落ち着きとふっくらとした人間らしさを読み取ることができます。

03/04/13

私は翻訳を通して知った中国の、各種党の大衆虐めが予想より遙かに多く規模が多きいので、腐敗なのか、これが本質的なのか解らなくなっています。
少なくとも資本主義では抵抗する手段や公的組織が存在しますが、社会主義ではそれが有りません。
本当に今後何が出てくるか解りません。今後とも良ろしくお願いします。

03/05/05

「宝籤で精神病」「銃撃されて」

を読んで,いずれも被害者が気の毒で腹立たしさを感じますね。
やはり思うことは、民(たみ)の立場にたつ機関がないということを痛感しますね。
かって、文字通り、民が主の社会を実現していくことが民主主義であり,民主化だと聞いたことがありますが、なかなかうまい言い方だと思ったものです。
日本では民主化の一環として、中央集権を地方分権にということが叫ばれていますが、今の中国では、地方分権を進めると、よく考えないと逆に中央の権力を振りかざして民はますます被害をこうむるのではないかと思いますね。

03/07/03

”中国語の先生(天安門事件で逮捕されたことがある人物)から「南方週末」は発禁になったと聞きましたが本当ですか。”
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訳者
でも現在6/29日の新聞は読めます。

03/9/17 
  
 「東北現象」

 貴殿からの情報で中国の大きさ、組織(社会管理)の難しさを毎度感じております。そんな中で餓鬼にあえぐ農民が、犠牲を払いつつ登小平に開拓開放のきっかけを作った事も感じさせるものがあります。
 しかし大きいがために改善が遅いのでしょうか。
 組織の他に人間とは性善か?性悪か?を考えさせられます。

 9/2日送付メイルに 学生の時から資本主義か?社会主義か?は論じて来ましたが、やはり両方に良い点もあり、悪い点もあるように思います。
 組織上、両方のいいところを取り入れる管理組織は無理なのでしょうね。
 その場合、国の発展段階でどちらかをとることはいいのですが 卒業後社会主義について感じたことは
  1)北朝鮮、ルーマニアなど建設当時は、民衆と共に国家建設に夢を持って進んでも執行権力者が時と共に独裁者になって行くことは大きな問題です。毛沢東やスターリンについてもそうでした。
  2)貴殿の情報をもらいながら感じたのですが、世にある情報がそのまま流れないのは大きな問題です。少なくても米国の情報の方が、中国よりフィルターなしで流れております。

03/11/07 

翻訳について:
「生態汚染は避けられないのか」:

この記事を読んで40年前の就職時の頃を思い出しました。高度成長の時代で,公害は垂れ流しでした。水俣病,イタイイタイ病など多くの事件を思い出します。我々その仕事で行っても生産優先で馬鹿にされました。
昭和48年の公害国会で流れが変わっていきましたが,今の環境問題重視の世相を思うと隔世の感がありますね。
いずれにしても、中国もそうならざるを得ないでしょう。しかし,気になるのは日本をはじめ先進国が公害の可能性のある工場を皆んな後進国に移転してきたことです。

「若者の未来に風通しを」

いい話のようですが,まるで”おしん”の時代のような錯誤に陥りますね。中国やインドの遅れは何だろうと考えたとき,やはり長い間植民地支配に置かれた人口の多い大国だということを抜きには考えられませんね。その方が支配者には有利だったのだから。また彼らもいくら人口が多くても,自分の国は自分で切り開かざるを得ないことは分かっていると思いますが、どうでしょうか。

「貧乏学生と先生」:「ものづくりより人づくりのほうが大切だ」と言う精神が今の中国に薄れていることの実態ですね。現に,日本に抜け出している中国人の元教師の口からもそのことをよく聞きました。「いまの中国では教師は尊敬されてない,待遇も悪い」と。しかし,このことはやがて国づくりによい影響を与えないことは確かですね。今,日本でも教育が問題になってきてますが,時代の変わり目はいつもそうなのかもしれませんね。

「可哀想な江沢民」:権力者の運命も民衆に支持されないと憐れなものですね。
中国語の先生から、江沢民の息子はアメリカの市民権を取得しておりいつでも国外脱出できるようになっていると聞いたことがあります。本当かな?

「動かない公務員」:どこの国の公務員も都合の悪いことは動こうとしないのかも知れませんね。会社に入った頃、グラスライニングのフリットを扱う工員がよく塵肺に掛かり問題になりました。当時,会社側も補償金を惜しんで、当局と謀って職業病となかなか認定しようとしなかったことを思い出します。

「中国に始った民主化の1頁」:「歴史上闘わずして勝ちとられた自由は1つもない」という言葉がありますが、残念なことに,大きな犠牲を伴っていることも、また歴史的な事実でもあるような気がします。

11/9は総選挙ですね。これからの日本どうなるのでしょう。子ども達は消費税が上がるのを心配しています。私達は日本が戦争に加担する国になることを心配しています。

03/11/11

訳者: 
今日から東京で始まった映画「延安の娘」を見てきました。
出口で監督の池谷さんに会い、素晴らしい映画を有り難うと、お礼を言ってきました。
本当に感動しました。
この映画は今日本全国で上映されているようで、詳細は下記をご覧ください。
http://www.en-an.com    東京は恵比寿の東京写真美術館です。
この映画は全て実在者の記録で、2000年12月から始まっています。
物語は文革の頃(1966〜76)、延安の農村に下方された青年と、その時生まれた娘が親に会いに北京に出かける話です。
当時は恋愛は反革命罪で、下方の青年の2人はそのため15年の投獄と労働改造所送りにされます。
もう一人は生まれた女の子が党に内緒に農民の家で育てられ、大きくなって男子を産み、(これが農民にとっては人間として尊重される)その後人生に自信を持つようになって、実の両親に会いに北京に行きます。
(この映画に登場する2000年で25歳)真の父は現在解雇の身で、娘にあっても服の一つも買ってやれないと、初めは会うのを拒みます。
母は他人と結婚していて、実の娘に会うことを拒絶します。
この物語は全て記録であるところが迫力を持っています。全く飾り気が無く、しかも俳優(登場者?)の動作に作りがない。
現在の中国の農村と都会の姿がこの映画で全て判ります。
また物語には別の2つの伏線のようなものがあります。
一つは老人達の話で、「俺たちの人生は鉄砲を持ち命をかけて日本軍と闘った。毛沢東は偉大だった」と語ります。
もう一つは北京から延安に来て青年達を監督した党幹部達です。その幹部に無実の罪を着せられ、人生をむちゃくちゃにさせられた55歳くらいの人が、北京の幹部に会いに行きます。党幹部の自宅に行き、家族を前に「当時の真実を語ってくれ」と、お願いします。
しかしすでに白髪になった幹部は、全ては党が決めたことで、実行したのは公安だと逃げます。
 
勿論このような情景は中国人には撮影できません。
政治的にも、人情的にも。日本人監督だから出来たのでしょう。しかも全て本人の顔を大写しにしています。

中国はマルクス主義による社会主義を選ぶことによって、地獄より恐ろしく悲惨な体験をしました。
(国家権力を集中し上から人民を指導するという意味で)
当時の姿はどの場面も悲惨で、涙の物語ですが、しかし、その苦しむ姿の中に、ものすごい”人間的な味”を強烈に受け取ってしまうのが不思議です。
ああ、これが人間の生の姿だな、と言う風に感じました。是非皆さんに見ていただきたくて紹介しました。
 この上映を教えていただいたNさん有り難う。
          

03/11/24 

  いつも貴重な裏情報を送っていただき感謝しています。
 おすすめの「延安の娘」早速見に行ってきました。
これは中国版‘残留孤児‘問題といえるのでしょうね。
 何千何万の‘海霞‘がいるということでしょう。
思い出せば大外にも、ハルビンから雲南に下放された人の娘がいて、雲南旅行の時に世話になったものでした。
 大連にいたとき、建国50周年番組で、文革の10年が、すっぽり抜けていたのも思い出しました。やはりあの10年は、中国人には触れたくないのかもしれません。日本人の監督にして出来たのかも・・・。 とにかくドキュメンタリーとして、出色の映画でした。ご紹介頂きありがとうございました。

03/11/24 

 1、「延安の娘」:こちらではやってなくて、今のところ見れないのが残念です。

2、「毛沢東・スターリン 朝鮮戦争」

歴史の裏側を見るようで興味深いですが、一方でなんだか腹立たしさを感じますね。戦後処理をめぐってのスターリンの領土拡張主義と米帝のせめぎ合いと言ってしまえばそれまでですが、スターリンは日本占領の構想を持っていたことは確かだと思います(それが何処かは知りませんが)。
それはソ連参戦の条件としてヤルタ会談の秘密協定で米英と千島列島の引渡しを密約しており、終戦直後も北海道北部の占領を要求し、トルーマンに拒否された経緯があるからです。いずれにしても、朝鮮半島のように民族の分裂という悲劇を免れれたのは幸いと言えると思います。

3,「湖北省の幹部74人が汚職で逮捕」、「渭南市の表彰式」、「億万長者『孫大午』の夢と現実」・・・・・・

これらを読んで、いずれも今の中国の実態を表していると思います。
今年から代わった私達の中国語の先生は、以前にも話したことがあると思いますが天安門事件を経験した人で、中国の実態を良くも悪くも(むしろ批判的に)率直に話してくれます。日本での仕事は神戸大学大学院、神戸外大、大阪学院大で中国語、教育行政、比較教育論、中国社会文化論などの講師をしている人です。
その先生が話してくれる中国の実態はまさに貴殿の翻訳どおりです。我々生徒達はみんな「どうして?」と驚くばかりです。
その先生が今の中国の実態をいつも分析してくれてかなり整理して理解できます。
その内容は一言ではいえませんが,今の中国は@日本のような資本主義中国(北京、上海など都市部)
   A圧倒的部分を占めるアフリカ的後進中国
   B旧社会主義的東北部中国(土地などが国有)
の社会から成り立っており、その格差は広がるばかりで、矛盾も大きくなっている。
と言うものです。日本の新聞でも報じられたように、家族の生活のため、あるいは自分の街への出世のため、娘達の売春も横行している。
また、街で成功したエリート達も上層部も過去の汚点は隠して、自分自身がそれを乗り越えて努力したから現在があるんだと考えており、一般的な社会矛盾は仕方ないんだ。日本でも東南アジアでもそういう時代があったではないかと言っており、今の状況は過渡期で個人的にはどうしようもないと先生も嘆いています。

私見になるかもしれませんが、中国は社会主義?と問題提起した事があったかと思います。かっては実態を知らず,また世間的な呼称で、ソ連や中国を社会主義国と思っていたときがありました。しかし今では原点に返って、マルクスやエンゲルスが描いた搾取のない社会、即ち生産手段が人民に共有化された社会、こんな社会は当然民主主義の発達の上にしか成り立たないと思いますが、まだ地球上には存在しないと思っています。一党独裁で民主的議会や選挙制度も発達してない中国、それが社会主義国、冗談じゃないというのが私の見解です。

03/11/29

丁寧な感想文有り難うございます。
本当にこの映画には名のある「俳優」が登場していないのに、緊張有り、人間の深い悲しみと暖かみも感じました。私も、何度も涙が出ました。

 映画の中の麻雀を楽しむ老人達が「毛沢東は立派だったが、文革は間違いだった」と話す画面がありますが、これは20年前には考えられない自由化です。
当時では即逮捕、公衆の前でのつるし上げです。
そういう意味で中国も少しづつ自由になっているようです。

03/12/01

この歳になって私はハンケチを出して何度も涙をぬぐいました。ここには悪い人はいません。みな国家権力に人間の喜びを押しつぶされた人々が精一杯、人間として生きています。映画がはねてから池谷薫監督とも話ができ名刺も交換しました。私は、北京と延安(あの高台の痩せた畑、主人公の娘の北京の女性と比べての貧弱な体)の対比もさることながら、政治が引き裂く家族の悲しさを、現在、日朝両政府の政治に翻弄されて家族離散の憂き目を見ている拉致被害者とその家族に思いを馳せています。」
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訳者
 感想文有り難うございます。
私の場合、映画終了後も涙が出て、監督と握手はしましたが、言葉が出ず、そのまま失礼しました。