バイオリンと年齢

04/10/22                           要 紘一郎

 私は月に一度程度の音楽講座に通っています。
講師は中島良能という指揮者です。

 04/10/20の最後の講座では「バイオリンと年齢」に関する話があり、それは人間や人生の進歩一般に広く関係していると思われたので此処に記録しておきました。

 1.現在バイオリンの日本での最高の権威有るコンテストは「毎日コンテスト」だそうで、そこでの大人の部の優勝者は、大体12,3歳の子供が入選するそうです。つまりバイオリンの技術に関しては、その年齢でほぼ頂上まで到達しているとのことです。
 誤解の無いように付け加えますが、12,3才でコンクール入賞するとは、技術面は勿論、芸術的表現面でも審査されたものであることで、そのようなことが子供に出来ること自体不思議に感じます。 

 江藤俊哉(桐朋学園楽長)は昭和14年12才でコンクール1位。現在77才。
 辻久子 (大阪芸大名誉教授)
 昭和13年のコンクールで1位。12才。現在78才。


 このことを証明するもう一つの現象は、かって日本の音楽大学では教授よりも助教授が技術が上で、助教授より講師が技術が上で、更に講師より学生が技術が上、と言う時代が続いていたそうです。
 
 中島講師の話では、言語も同じように、少なくとも12,3歳までにその国に行けば言語をマスターしてしまうもので、日本の場合英語を中学からスタートして、実際身に付く人はほとんど居ない、と言う現状がある。
 これと同じようにバイオリンも音感の基礎が創られる3歳から12,3才までにその人の技能が開発されるのではないかということでした。

 ピアノの習得は、演奏者の指の骨が有る程度固まらないと出来ない面があるので、12,3歳以上の年齢になる。
 一番音楽方面で技能の開発が遅れるのは声楽で、コンクールの優勝者は35歳前後が多い。(35才は声楽コンクール応募の最大年齢)

 2.教育の在り方

 バイオリンで有名な辻久子さんは、父親からスパルタ教育で育てられたことでも有名だそうです。
 お父さんは宝塚の専属楽団のバイオリン奏者で、日本に戦前はほとんど楽団というものがなかったけれど、宝塚には有って、そこで演奏していたそうです。
 その父親は辻久子さんを小学校にも通わせず自宅で子供にスパルタ式のバイオリン教育をしたそうです。

 その父親はマスコミなどに「自分のやり方は”正しかった”」と自慢していたそうです。
 でも、中島講師の考えでは、音楽の演奏に関しては「これが正しい」と言うものはなく、もう無限にやり方は各人いろいろあるとのことです。
 「これが正しい」と言う考え方は”戦前の古い発想”ではないか、と言うことでした。

3.
 音楽生徒の教育に関しては、鷲見と言う人が有名で、この方はバイオリンの演奏はトップレベルとは言えなかったけれど、現在日本のトップレベルのバイオリン奏者の半分以上を育てたそうです。

 現在日本では鈴木学園がバイオリン学校として有名だそうですが、ここは教則本無しで教えています。つまり子供が小さくて文字など読めないこともあり、文字や楽譜に頼ると演奏に入れる力が半減するからだそうです。 具体的には耳から聞くだけで演奏をするということで、これは大人になると出来ないでしょう。

 一般的に日本ではスパルタ式の教育が普通で、西欧に行くと「褒めて育てる」方式が普通だそうです。
(これはスポーツでもそのようですね)

 中島講師の考えでは、小学生までは日本式のスパルタで中学に入ると西洋式が良いのでは、ということでした。

 当日の講座はここまでで終わりですが、最後に「チゴイネルワイゼン」のバイオリン演奏を、2人の(一人は五嶋みどり ) 演奏者の録音を聞きました。
 私には違うようでもあり、同じようでもあるように聞こえました。
 その楽譜もコピーで貰いましたが、まあ、半音づつ上がったり下がったり、こんな複雑なものを良くも耳だけで聞き分けられるものだと感心しました。
 この曲の作曲者の創造力にも感心!