書籍紹介
 「興亡の世界史 05」森安孝夫
   
シルクロードと唐帝国
講談社 2300円

シルクロードとは単なる「東西交易路」ではなく、突厥、ウイグル、チベットなど諸民族が入り乱れる激動の世界史の最前線だった。近年注目の”ソグド人”とは何か。唐は漢民族の王朝なのか。中央ユーラシアの草原から、西洋中心史観と中華主義の克服を訴える。

 これがこの本の主題のようです。
 シルクロードは東西だけではなく南北にも複数で縦横に走っていた交易路で、15世紀になって海洋交通が生まれるまではアジアと地中海を結んでユーラシアが世界の交通路で当時の世界史はユーラシアで創られていた。

 そこを紀元前からソグド人が、あるときは国家を作り、あるときはユーラシアの諸国家に溶け込んで交易の主役を果たしていた。
 例えば日本人が西洋の服と考えている「ズボン」はアジアの騎馬民族の服装でバンドと靴とが騎馬民族の必需品であった。
 また西欧が宗教歌を単旋律で歌っているとき、中央アジアでは既に各種の楽器が共同の合奏をしていた。

当時の交易には騎馬による運搬とそれを守る軍事力や通信方法が必要で、今でも中国には”胡”の付いた言葉や文物が多数あるが、それらはソグド語だそうです。例えば胡椒、胡弓等々。胡の付いた姓の人。

 日本の、世界の教科書には、西洋が文化の起源であるかのように、あるいはアジアでは中国が中心であったかのように書かれているが、西洋に文化が生まれたのは海上交易が生まれた15世紀以降で、中国もアジアの大草原に興亡する諸民族に大きく影響されて創られてきた。
これまでの中国は中華主義観点に捕らわれて、ユーラシアの大きな役割を理解出来ないで来た。

 特に中国の最盛期と言われる唐時代は圧倒的に突厥やウイグルやモンゴルやチベット、ソグド人その他の諸民族に影響され国家そのものが彼等と共同して存在してきた。”唐の都「長安」は正に国際都市であった”、と書かれています。

 「世界史」を最初に書いたのは、西欧でもなく中国でもなく、14世紀のモンゴル帝国下の「集史」で、イスラム文化圏で生まれた。
 アジア史はこれまでは世界の中で日本が主として研究をしてきており、最近になって中国もそれに参加している現状だそうです。
 アジアの大草原に発見されつつある歴史的遺品もこの著者らによって発見され解読などがされているそうです。

 全ての人類はアフリカから生まれ、世界中に拡散していったということから見ると、日本の由来はアジア史に大きく関係していて、地中海や印度や中央アジアにその由来を結んでいる。その日本で今、偏狭な愛国主義が生まれ日本の文化の純粋性を強調したりすることにも警告を発しています。