書籍紹介
中国がひた隠す毛沢東の真実
   著者 北海閑人(ペンネーム)
   廖建龍訳 草思社 ¥1800
   2005年10月第1冊。

 著者は党中央の元書記局幹部、現在は退職。
 ついに党内部中枢の人から真実を語る人が出てきました。2003年までの中国政府がやってきた実態を書いています。
 次のような項目があります。

1. 毛沢東が延安で「文芸講話」を発表した頃(1942年)、右(走資 派)や左(トロッキスト)等とレッテルを貼って政治粛清して独裁的恐怖政治を建てる様子。被害者は数万人に及ぶ。

2. 人口抑制を説いた北京大学長、馬虎初の詳細。
 彼は国際的に有名な学者で、最初は国民党統治下で税金を裕福層にも掛ける事を主張して投獄され、新中国になって毛沢東などがマルクス主義に基づいて「価値を生むのは労働であり、労働者の数が多いほど良い」と言う理論で、ソ連にならって多産の母親を「母親英雄」として表彰し人口拡大を目指した事に反対し追放された。

3. 文化大革命の詳細
 文革の終了後1978年、”党総書記葉剣英は「10年間の文化大革命で2000万人が死に、1億人が酷い目にあった。8000億元が消費された」と述べた”、と書かれています。
 文革の詳細は中国内部でも若い世代は文革を知らない時代になっているということで、初めから詳しく書かれていて、日本でも歴史資料として役立つと思います。

4. 2003年でも、現政権は毛沢東を使って政権維持しようとしていることが書かれています。ただ毛沢東の墓の傍に毛沢東によって虐殺された党幹部の像が列んで建てられたり(彭徳懐元帥等)、あまりにも無責任なやり方だと批判しています。  

5. 朝鮮戦争の秘密
 戦争準備過程から南へ軍事侵略するまでのソ連首脳と毛沢東・金日成との会談が書かれています。2週間で全半島を制圧する予定だった。

6. 大躍進政策の一つの被害例として、青海省は人口300万人の内100万人が餓死したこと。その被害者の中には「労改」で獄死した人も多い。その人達は親族が現在都会や台湾にいて遺族の骨を貰いに行くと、適当な骨を親族に売りつけている話。(台湾人には1万元、国内には5千万元ほど)

************
 これらの話を著者が推測されないように書かれているとは思いますが、しかし現在も北京に住みながら書いたわけで、発言の自由のない中国でどうなるのか心配になります。