書籍紹介 
老鬼(らおくい)」
我が青春の文化大革命
 
馬波(まぽ) 上・下
集英社発行1996/12初版¥1800.
各地の公共図書館にあります

作者(主人公)は1966年文革発生の年、北京市の高校を卒業。毛主席に傾倒し、先ず自分の母親を大字報で告発。彼の母親は有名な作家。そして家の中のタンスを斧で破壊し、姉二人を縛り上げ、400元を盗んでベトナムへ抗米救国に参加しようとします。
 しかし途中それは失敗して、今度は内モンゴルの農村へ出かけます。(毛沢東の呼びかけ”上山下郷”)
 そこで待っていた波瀾万丈の人生。
マイナス40度の厳寒の中で、彼は「反革命」として半年は土牢、その後5年間”労働改造”の身で働かせられます。
 彼を反革命にしたのは、「毛沢東にも間違いがある、江青は西太后の生まれ変わり」と友達に漏らしたことです。その証拠を作り出すために党幹部は彼と付合った全ての友達を恫喝し誘導し有罪に仕上げます。このため多くの友達とは裏切りの関係になり、生涯離反して生きていくことになります。
 また彼の孤独な人生を救ったのは”偉小立”という女学生。でも彼女は彼を反革命として糾弾する側に回り、免罪後も彼とは近づこうとしません。そして党に加入し、文革中停止されていた大学に入り彼の前から姿を消します。(大連外国語学院???!!!)
 しかし生きながらえた彼は、母親が周恩来に直訴することで救ってくれたのを知ります。
 文革とは何であったか、見事に描かれています。
 内モンゴルの生産隊に参加した学生数は10万人。彼等が必死になって7年間耕作したモンゴルの大地は、砂漠化しつつあることが解って、1975年末に撤退することになります。
 再び草が生え、放牧可能な大地に戻るには何十年も必要とか。
この本は1989年の天安門事件の場で売り出され、40万部という中国では例を見ない部数が若者達に読まれます。一度彼はアメリカに逃げますが、現在は中国に戻っています。