中国赤十字社に疑いの目

08/06/5 南方週末 沈亮

 
   赤十字始まって以来、前代未聞の献金額

  概略

 中国では四川地震後、テレビの画面には赤十字の寄付を求める字幕が連日映っており、多くの人がその番号を覚えるほどだ。
そしてその赤十字社が始まって以来最大の寄付金 「6.24億元」が集まったと報道され、人々の目は今その経理の透明性と使途について疑問の目を向けている。

 赤十字の募金が始まってすぐに「総計1300万元を使って、現地へ1000組のテントを送る」と発表された。それを聞きつけた人達の多くが、赤十字社のテントは金縁張りで1組1万元もするのですか、と言う皮肉をインターネット上に掲示したのである。

 記者が調べたところ、テントの価格は約1380元でそれを赤十字社は950元に交渉して値引きしたという。従って報道の「総計金額かテント数のどちらかが言い間違えたものと思われる」、とのことだ。
 
 またある人は、赤十字社が今回契約したテント会社の社長は”王平”という人で、赤十字社の社長でもある、とホームページに掲載した人がでた。
 これも多くの関心を呼んだ。しかし記者が調べたところ別人のようだ。

 赤十字社の対応の遅さについても疑問の声が挙がっているが、調べてみると赤十字社は政府機構と同様の検査や規則に基づき購買や配給を行うが、普通の方法だと購買の公示が 20日間必要とかの規則がある。今回はそれらを大胆に短縮して救援物資を送っているという。

 またこの遅配の問題は赤十字だけの責任ではないようだ。今回赤十字社が30台のトラック貨物を現地に届けようとしたところ、現地政府が「当政府と足並みをそろえてほしい」という要求が出て配達を留めていると言う。

 赤十字本社には国家から3人の監査官が来て常駐している。救援物資の配送についてもこの監査組に相談する必要がある。彼等監査官は毎月、会計や物流や各種成績の検査結果を上部に報告する義務がある。
 地震発生後の20日間、赤十字本社の10幾つある各部の電話は寄付金の電話で24時間鳴り詰めで、また建物の中庭は寄付金持参の人々で埋まった。

 そこに来ている一人の人は記者に「赤十字社がより多くの信用を得て透明感を増せば、この組織が一層信用されるでしょう」と語っている。
 またある人は「アメリカなどは、ある慈善組織が信用を失えばすぐに他の組織を探すことが出来る。しかし中国ではこの赤十字社しかない」と言う。
 
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訳注:
 次は同じ新聞の記事から

  民間意識調査

災害献金の使途の疑い     39%       5441 票
救援物資の用途          3%       387 票
地震後の再建策          7%       967 票
崩壊した建物の手抜き工事   42%     5954 票
地震後の発電所や
   化学工場の建設に疑問   5%      601 票
災害孤児の待遇が心配       7%     966  票

  オリンピックを控えて情報公開を進める中国政府。当然国内のいろいろの状況が報道され、それに付随する問題に国民の疑問が集中します。
 そのことは中国の建国以来初めてのことです。

 この意識調査のように公的な面に関心を寄せると言うことはいままでは許されなかったことだけにその項目が興味を引きます。
 特に最大の関心が「建物の手抜き工事」というところが飛び出ています。粉々に崩壊した現場写真を中国の新聞では「豆腐をつぶしたような残骸」と記しています。

 2番目が献金の使途で、この2項目の数字の高いことは政府への信用度がきわめて低いことを顕示しています。
 これほど信用度の低い国は世界でも珍しいでしょう。

 しかし最終的には、不正な使途が発見されたときそれを公的に追求できる裁判のような機構が必要ですが、社会主義ではそれを欠いているので、国民の疑問を完全に解決することは不可能でしょう。

 報道の自由・透明度を謳った今回の中国政府。しかし「豆腐のような粉々の建物の崩壊」が手抜き工事かどうかを求める親たちの要求は報道規制されました。