重慶で1000万人が飲水不

07/03/15 南方週末 李海鵬







  この村では水くみに1往復で8時間かかる。
   仕方なく共同で炊事をしている
   

 昨年の重慶は100年目という干魃に見舞われた。そして今年も又、既に干魃の兆候が見えている。
3月3日、重慶市のすぐ上流の四川省から水の供給を受けて干害が収まっているように見えるが、事態は1891年以来の干魃到来と見られている。

 重慶には150万人の飲料水と98万頭の家畜類が水不足に迫られている。水の衛生から考えれば1000万人が水を求めている。

 春節(2月18日)以前から熱い日照りが続いている。近隣ではトウモロコシの植え付けが始まっているが畑には水の気配が全くない。トウモロコシを植えても直ぐに涸れ死する、筍は地上に出て直ぐ涸れ死している、と農民達は言う。見渡す限り土壌は褐色で水気がない。
 ある村では750畝の筍が既に90%が涸れ死したという。桑の実も収穫は10%だ。

 昨年も100年目という大干魃だった。だがこの様子では昨年を超す災害をもたらすかも知れない。長江の水位は歴史上最低を示している。このままでは直ぐに重慶市は飲料水が出なくなるだろう。市内の一部では既に40台以上の消防車による給水が始まっている。

 気象台は人口的降雨を試しているがほとんど水滴が見られない。
 3月9日現在水不足が現れていないのは41区画の内5区画で、被害の顕著なところの農家は養豚を放棄している。

 70年までは農業地への用水が重要視されていたがそれ以降は都市工業化のみに用水が計画され農地への水路は長江から遠く離れていることもあって引っ込みの坑道には落ち葉やゴミがつまって使用出来ない状態で、それらの改修にはほとんど投資がされていない。水路工事の施設率は全国の3分の1以下の水準だという。
 村の幹部は農民に「請負制度であるから水路の維持も自分持ちだ」と説明している。

 重慶には昔は水不足というのは聞いたことがない、と年寄りは言う。年間降水量は1208ミリで世界的に見ても降水量は多い。重慶近隣に注ぐ河は36条ある。その中に長江や嘉陵江という大河もあり、また三峡ダムという巨大水資源池、それは600キロの長さ、もある。

 訳注:日本の平均降水量は1600ミリ


 普段の年は近くにチベットが控えていて春になると雪解け水が豊富に解け流れてくる。
 そして同じ盆地内にある四川省も水資源については同様に恵まれた環境と言われてきた。
 しかし現在1700立方メートルの水量を抱えているが、それは国際基準の警告線より低い。

 水資源があっても水路がないと言うのが、専門家の見方。

だが今年は11年周期と言われてきた干魃の年だ。3月半ばで周囲の山には既に積雪が消えいている。

 同じ四川盆地の西端にある成都は年中雲が多くて有名だが、冬が来て以来日照りが続いている。 
 成都へ注ぐ河の水量は7割から8割の減少を示している。
 それは上流に多数のダムが建設されていることが大きく影響している。上流で貯めて下流に流さない、それが多くのダムの役割だ。   
三峡ダムの建設も下流に影響を与えている。下流の国家自然保護管理の洞庭湖は長さ100キロ級の湖だが、今年の初め大きな水底が現れた。
 重慶に注ぐ大河の1つ、嘉隣河には20のダムが建設された。それが下流に如何に大きな影響を当たるか、その自然の動態についてこれから検討されるようだ。動態が検討されて、それが変動することまで検討されるのは何時になるか見当が付かない。

3月3日、四川省は先ず嘉隣河の水を大量に蓄えた後、重慶市と交渉に入った。中国では水資源管理は9つの部門に別れている。

 重慶市が独自で水問題を解決する限界を超えた3月初め、四川省への交渉が始まった。だがその交渉は困難を極めた。両市は数百キロ離れている。水を支給すれば多方面に影響を与えること。利益が複雑に絡むこと。例えば幾つかの電力会の利益が犯される。
 そこで国家総合防衛局が出動までした。
 重慶市はそこで1万個の井戸を掘る計画を立て、10万人の要求に応える準備をしている。その間も中央政府や各種電力会社など9つの部門が議論を繰り返している。
 ある専門家は国家級の特権を持った「超絶の」指揮権がある部署がお出ましになって欲しいとのことだ。
 
 重慶の行政地区内には2730のダムがある。その貯水容量は37億立方メートルある。
その利用は上流を含めた地域や数多くの電力会社など多方面に影響する。だが現在の干魃に対して簡単には利便の面で融通の折り合いは付いていない。
 その理由は流域には大型国家企業や集団企業も数多くあり、地方政府も幾つもある。
 水利の調節を如何にするか、何処の要求にも応え、調停をすることはほとんど不可能と見られている。

電力会社は懸命になって水量の貯蓄を計り、下流は一滴でも多くの配水を望んでいるのだ。
 多方、その流域では盲目的に開発が進められている。1980年代に小さな炭坑が多数開発されたように。
 小さな政府では河に設置された発電所を民間に貸し出すところもある。それらの管理や利用の調節はほとんど不可能となっている。

 ある農民の争い

 05年の灌漑の時、水路の争いで兄が弟夫婦と喧嘩して、弟の嫁を刺す事件があった。 また市から遠く離れた村では農民が共同でダムを造ろうとした村も現れた。
 その村は貧しいところだが、初め市に資金面の協力を求めたが規則に無いとして拒否された。彼等は水汲みには片道1時間掛かる。
 そして近くに小さなダムを造るには50万元必要と解った。市に拒否されて村政府に頼んで5万元支給がされることになった。それでは全く足りないので、今村民は途方に暮れている。
 その村では半数が出稼ぎで、現在の田畑はほとんどが涸れきっている。記者が現地を尋ねると村の幹部は棚田に立ちながら、「今、北京で開かれている人民大会に行って何とか支援して貰うよう頼んで貰えないか」と語るのだった。

 多かれ少なかれ他の農地でも同様な状況だろう。

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訳者注:
 この記事を訳し始めたときは単なる気候の異常だけと思っていました。ところが途中から如何にも社会主義らしい官僚主義が登場します。
 でも他人事ではありません。長江の流量が減ればその長い流域の乾燥が汚れた空気を日本に運ぶでしょう。
 重慶は長江の上流の四川盆地の東端にあります。周囲は山脈で囲まれています。その盆地には多数の河が流れ込んでいます。そこが水不足とはどういう事でしょうか。
 水量不足が起こり、その管理に官僚主義が重なって、人々を苦しめている、と言う構図でしょう。

 重慶は日本の東京から2000キロ程離れていますが、第2次世界大戦ではこんな所まで日本軍が無差別爆撃をしたことを最近知りました。
 





ダムの底