養鶏場で死んだ鶏はどこへ行ったか


07/07/19 南方週末 穆丹

  中国では1年で約50億羽の鶏を食べているが、その安全は大丈夫か。



 養鶏場では5%以上が死んで販売されている




 中国科学院植物研究所主席研究員の蒋高明さんが05年7月以降、山東・内モンゴル・北京などで病死鶏の行方を調査し、最近その結果を発表した。結論は半分以上が私たちの食卓に上っているということだ。

養鶏関係者は先ずほとんどが純朴な農民で、彼らは正直に死んだ鶏の行方を教えてくれた。ある農民は得意げにさえ語った。
 「市場へ持ち込んだ3000羽の鶏の内300羽が既に死んでいたが、それらも含めて卸売り場で売り尽くし、儲けさせてもらった」。
 南方記者もその調査地域を拡大してみた。陜西、湖北、安徽、江蘇省の10以上の養鶏場で調査した結果、どこでも病死した鳥を売りさばいていた。購入側はほとんど鳥を見ないで取引をしている。ただし10万羽以上を扱う大型養鶏場は死んだ鳥を売り出していない、と言う。ただしこれも実際はどこまで信用できるか判らない。

 先述の蒋高明さんは市場に入ってくる死んだ鶏の8割が食卓に上っていると言う。

 また別の事例も教えてくれた。それは鳥病院で死亡したものも売りに出されているらしいということだ。当然それらは病気による死亡で、本来は埋めるか焼くかしなければならない。それがどういう経路か、売りにだれているようだ。その売り上げは病院の収入となっている。その数量は毎日農家が鶏病院へ出入りしているところを見ると中国全体ではかなりのものだ。
 見ただけで吐きたくなる死んだ鶏の売買で儲けている人達がいる。その取引業者は最大で500キロほどの範囲で活動している。勿論取引の現場では生きている鶏より値段は落ちているようだ。

 華南省のある市場で記者は市場職員の肩書きを借りて、1人の販売員に話を聞いた。
彼は15歳から市場に入り現在22歳。自分の店の権利を得たところだ。
 彼の話によると卸売市場では死んだ鶏も腐乱したもの以外は普通に取引されており、毎朝50万羽が店に出、そのうち死亡鶏の数量は約5%くらいだろうという。つまり毎日2万5千羽が食卓に上る勘定だ。

 市場での現場では鶏たちは荒縄で縛られその付近一帯は羽が散らかり腐臭もする。死んだものも値札が付けられその価格も毎日の市場で上下する。ある時の「竹糸鶏」は1羽3元、「清遠鶏」は1羽9元だった。
記者はまた鶏たちの加工工場を見学させてもらった。
 第一に熱湯に浸け次に羽取機に掛け、もう一度水に浸け、最後に血を取る。これらの過程は普通の人ではとても見るに耐える状態ではない。記者の前でも突然一人の少年が嘔吐して止まらない。

 死んで間もない鶏は焼き鳥、炙りなどで食卓に提供され、死後古くなった鶏は脚や羽、爪などを取り去った後に冷凍保存される。いったん冷凍すればそれが古いかどうか、死んだものかは判断できなくなるのだ。
 死んだ鶏の砂肝は焼き鳥に回され、腐乱しかけている鶏は脚や腸を火にかけ、鳩肉とか雀とかに化称されて料理に出される。

 鶏病院の医者が教えてくれたが、自身が鶏肉を楽しもうとして中身をよく見ると、鶏が大腸菌感染で死亡した後心臓や肝臓を1ミリの厚さに切り取ったもので蛋白分泌物が出ていた。それは黄色で判ったようだ。
 ある焼鳥屋は死んだ鶏の内臓分泌物の除去などはしないと言う。従ってそのことは普通人には判断できず専門家のみが見ぬけるものという。
 ただしこんなことにかまわない業者が多く居る。
 中央テレビの記者がある業者を隠し撮りしたところによると、死んだ鶏は2元で取引されていて、毎日300羽を購入すれば1日約2000元ほど儲かる、と業者が答えている。

 売る側の養鶏家にすれば顧客の安全より、やはり少しでも稼ぎを上げたいところだろう。
中国政府の方は、鶏流感が流行ったとき、政府は1羽10元の補助を出すと公報した。
 しかし実際はその救助は大変困難を伴った。普通の大きさの人口5万人ほどの村でも養鶏場は40個ほどあり、そこには鶏が300万羽ほど居る。地方政府の担当者は普通5人以下なので何時になったら補償作業が終わるか見通しも立たなかった。そのことで余計死んだ鶏を政府に頼るよりも、早く捌いてしまおうという気分が強まったようだ。
あの時は流感の鶏の売買は厳禁されたが、その後は取り締まりの政府は片目を開け片目を閉じて検査をする風潮が残り、それを見た農家は死んだ鶏の取引を普通に行うようになったようだ。

 このことを聞いた消費者は大きな反感心が起こるだろう。だが現実にどれほどの被害を起こすだろうか。死んだ鶏も普通は加熱後食卓に上る。そうすれば病気が移ることはまずない。
 中国疾病予防センターの陳君石さんは「普通の家庭が熱処理すればほぼ問題はない。しかし流通過程の処理業者が生肉に触れるときが怖い」と語る。
 また中国健康教育協会副会長、複旦大学教授の李楓さんは「動物は死後急速に腐乱を早める。伝染病菌も発生する。中間業者はそれを抑えるために各種薬剤・添加剤を加重に掛ける。それが人口に上るのが危険だ」と言う。

現在中国の鶏の死亡率は5から10%と言われる。「これはかなりの異常な高率だ」と、先述の蒋高明さんは言う。

彼の調査によると養鶏家は鶏のえさにサルファ剤を加えたり、キノリンアルコールという使用禁止の薬剤で病気を防ごうとしている。養鶏場では毎日大量の添加剤、安眠剤、抗生物質などを与えている。養鶏家は鶏の寿命が普通は200日あるのを40日で終了させようとしている。農家のこのような非科学的知識では鶏の死亡率を下げることは至難の業だ、とも言う。
 さらに集中営養鶏場の籠の狭さが問題だ。記者が北京と天津などの北方の養鶏場で見た経験では、鳥は集中した狭い小屋で飼われていて、鶏は体を後ろに向けない狭いところに押し込められている。そして籠から出した首だけが自由に動いている。
 これは本来の生物の基本権利を侵害している。
 このため、鶏は脆弱で、近くで爆竹が聞こえると驚いて死んでしまうほどだ。
 本来飛べるはずの鶏が今では道路に置いても歩けないのが普通だ、とのこと。

 このような環境の鶏が生きているか死んでいるかの違いはあってもとにかく人の口に入っている。さらにこれらの鶏の糞が肥料の原料となって重金属を含んで使われている。

 現在の農村では誰もが信じる笑い話がある。どこかの家で冠婚葬祭があれば「鶏肉が安いから出るぞ」と言って参加したがらない、と笑いあうのだ。 
 ただし、もっと貧しい人は身体の小さい集団養鶏場には居ない鶏を買って食べるだろう。

 生物学者が最近心配の種を増やしているのは、「生物学的に違反した養鶏方式」が鶏だけではなく、アヒルやガチョウにまでその飼育方式が似てきていることだ。ガチョウが籠から出ている時間は年間40日程度で、基本的に水に浸かることさえ許されていない。

 食品の安全は突然問題が発生したのではない、とある消費者が言う。環境の奇形性で成長した後に起こってきた当然の帰結で、長期に亘って人類に恐怖を与える、と言う。
 
 専門家たちが指摘するのは、奇形の集中養鶏方式ではなく、自由に草原を歩かせ、牢獄式の籠から出て太陽の下で遊ばせ、200日の寿命を全うさせ、生物の生態にあった方式で養鶏することが異常の早死を防ぎ、食品の安全を得ることが出来るのではないか、ということだ。

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訳者注:
 この数年、中国の輸出品の安全が地球全体を騒がせています。
 今や中国製品は多くの国家の家庭と密接に繋がっており同時に生命に直接影響しているので、中国製品を買うことに慎重になっているというところでしょうか。

 ただ外国人が忘れてならないのは「中国人」が危険食品から守られているかどうかです。

 中国の中央政府の対応で目立つのは常に自国の商品を庇う反論が含まれていて、問題がどこにあるのかを隠し、今後どうするのか言明しない点が目立ちます。特に自国の人に対する対応が気になります。

 この記事で取り上げている集中養鶏方式による死んだ鶏販売の問題は他の食品などの危険と共通点があります。
 公的機関が管理を半分放棄していること、国民を長期にわたって文盲の状態に置いてきたので、科学的知識が国民の中に浸透していないこと、この2点です。
 公的機関が法律で統治する機能と思想が欠けています。

 集中養鶏方式は日本でも全世界でも採用されています。生命体の基本権利を侵しているという考えは重要な指摘です。

 「集中で管理する」、この最大で極限の方式が人類に適用されたものが、「社会主義的経済計画」でした。それはすでに悲惨な形で破綻した姿を私たち人類に示してくれました。
 
 8月8日の毎日新聞によると、オリンピック開催のために、水不足を解消する目的で消えた水田が6667ヘクタールに及ぶ、と記されています。
 北京の水不足は深刻で、水資源として可能な水量が北京では1人当たり128立方メートルで世界平均の60分の1しか無いので、オリンピック期間の2年間水田耕作を禁止しました。この影響で転作(トウモロコシなど)を強制された農民は数万人に達します。
 ある農民の女性が「結局農民は皆殺しにされてもいいと言うことだ」と反論しています。

 NHKでも「オリンピックの期間、田畑に水を引き入れ禁止」を通達する様子が報道されました。
 農民を集めた説明会で党幹部が「中央は君たちよりももっと高度な判断をしている」として農民を納得させていました。