著書紹介
  「今の中国がわかる本」沈才ヒン
 三笠書房 知的生き方文庫   533円+税
 この100年に中国で起こったこと、そしてこれから起こること

 著者は三井物産所属、1944年生まれ。
文革時は学生、農村への下放を経験。
 文革終了後日本の三井物産に就職。

 日中相互の関係をかなり平等に、偏らず相互を評価しつつ現在の関係を説明しています。
 著者自身が驚いているのは現在の中国の高度経済成長で、1992年以降の登小平首相による改革改造とその後の急成長の姿を書いています。
 「国やぶれて山河有り」の中国詩が、現実は「経済起こって山河破れ」と嘆いています。

 書の最後に農村問題に触れています。中国の最大で最難の課題です。
 現在の都市では働く農民の臨時工は約1億2千万人。都市労働者の実数量の6割が農民臨時工です。
 彼等は都市に於いて人権や賃金に置いて極端に差別されており、中国に革命が起こるとすれば農民に依るだろうと指摘しています。
 現在、党は土地を農民から取り上げて開発競争をし、その成果によって党員の成績を評価していますが、土地が開発されて以降もその土地が何も使用されないやり方が全国に蔓延していて、人口増加が止まらず農地が減少していくために、2003年には中国は食糧輸入国に変わっている。これが続けば2030年頃に地球規模の大規模食糧不足の時代が到来するだろう。
 中国の農業生産の生産効率は極端に低く、アメリカの80分の1、日本の40分の1。

 2005年だけでも農民暴動は8万7千件に昇った。しかし農民は横の団結が出来ない(横の組織がない)ので、革命の中心には成りにくい面もあると書いています。

 高度計経済成長している中国が地球上最大の汚染を排出しており、それを止めるためにも、また中国の民主化のためにも、如何にして損害が少なく独裁制度を廃止するか、いろいろと提案しています。
 一番避けたいのはソ連型崩壊で、ソ連は崩壊後10年は経済規模が急速に小さくなった。望ましいのはフィリッピン型の民主革命だろうと書いています。