水質汚染の深刻さ

07/09/06 南方週末  蘇永通




 第10回全国人民大会で「中華人民共和国水質汚染防止法」が可決され、この問題が民族の生存に強く関わっていると警告した。
 全国の約半分の地下水汚染が深刻で、3億人の農民の飲用水が安全上問題があり、ほとんどの河は全て汚染されていると説明された。
中国の7大水系の内、松花江、黄河、淮河は中度の汚染、寧河、海河は重大汚染となっている。
 淮河と寧河での現地調査によると治水処理よりも汚染速度は遙かに速いことが確認された。
 揚子江の水を黄河に廻す大計画は、汚染水地域を拡大する大計画になる、と警告している。
このことは数年前に既に予想されていた。
 
 オリンピックを迎えて北京では水質の問題が大きな圧力となっている。

 江蘇省徐州では製紙工場の排水が汚染を広め、上流でも全省の83%が、飲用水には3類以下が最低基準として必要だが、5類の高度汚染となっている。
山東省でも水質が基準を満たしていないことが解っている。しかもこれらの改善は当分見込みがないとされている。

 検査を担当した柳委員は「子供の頃揚子江の水を飲めば美味かった。しかし現在は飲めない」と話している。

 揚子江中流に建設された三峡ダム、そのダムに貯まった水には極めて多くの浮遊物が浮かんでいる。

 揚子江の流水量も最近は極端に減少しているが、これらは周辺の開発を停止してでも対策を立てるべきではないか、と検査官達は言っている。

 西洋国家も汚染問題に当面していた時代がある。中国もその道を通らざるを得ないのだ。 
中国の現在の汚染は当面の利益追求が重視されている結果だが、しかしその代価は現在得ている利益の数十倍になるのではないか。
 雲南で計画された「世界園芸博覧会」。ここに現れた汚染を取り戻すには「博覧会」で得た利益の数百倍になると見積もられている。
 太湖、巣湖に爆発的に現れた青藻現象。周辺の無錫市では現在全市で水がとても臭い。
その対策に、経済的に見るとGDPの15%を削減すると見積もられている。

 中国では汚染対策法が出来たのが1984年、その後96年に改修され、今年の草案は大改造となっている。
 
 国家環境保全局が発表したところによると、05年発生の汚染事故は1406回、水質汚染は693回で、丁度半数が水質汚染だ。
 汚染に対して罰則も強化されてはいるが、しかし例えば松花江の世界を驚かせた大事件でも汚染源の国家企業への罰金は100万元で、誰が見ても少なすぎると表価されている。

 事故に対する情報発信も中国では問題となっている。上記の松花江の場合、飲用水使用停止の8日間何が起こっているのか一般市民には解らなかった。
 人民大会では地方政府とその担当官吏の責任を明確にすべきとの建議が多く出された。
 
どの事件でも検査官が現地で調査を始めると、担当部署は他の部署へのたらい回しをして、責任逃れをしているのが現実だ。
 松花江の場合、吉林市では「全てを上部に報告済み」という態度だったが、実際は誰が報告したのか、誰に報告したのか、どのように調査したのか、対策は取ったのか、等々、結局何も出てこなかった。
 
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訳者注:
 松花江事件:翻訳、06年3行目に記しています。

 中国の官吏の態度は漫画チックで笑いを誘いますが、しかし現実に中国の公害は直接日本に影響しています。黄砂や汚染空気の飛来、汚染の中で作られた食品など。
 韓国への黄砂の影響は日本よりもっと深刻だそうです。

 日本で”中国政府公認”の「中国NEWS」と言うのが発行されています。「人民中国」ほど無味乾燥ではなく、少し客観的事実も書かれていてます。

 07年11月号に次のような記事があります。

 食品流通にはびこる「ジレンマ」の解決が急務。
「法が増えるが減らない安全問題」
 食品流通の問題は法の未整備が原因ではない。むしろ関連法は多すぎる程制定されている。問題は誰も法を尊重せず、抜け穴だらけになっている点にある。

 正に現在中国の社会主義らしい悪弊を正直に突いています。「誰も」とは勿論党員達のこと。
こんな記事を中国国内で”国家公認”記事にして良いのでしょうか。