社会進歩は農民には無関係か
070719 南方週末 何三畏
中国では最近「労働合同法」が採決された。だが現実の農民臨時工たちの待遇に関しては、誰にも大きな義務感、責任感を要求している。
次に述べるのは私が経験している一つの物語。
農民臨時工、名は”何長林”。彼は都会に出て学校の臨時工として働くこと15年になる。中国では彼が例え50年働いても「臨時工」であることに変わりはない。
彼には有給休暇がない。毎日学校にきて掃除の仕事をしている。現在は掃除班長になった。しかし、残業代は出ない。最近学校から「保険費」を出すように請求された。だが学校は領収書を渡してくれない。20数歳から現在40歳過ぎまで働き通したが、しかし「臨時工」だ。
こんなことを新聞紙上に「労働者の歌」とかにして書いたら、何か反応があるだろうか。だめだ、「臨時工」にはそんな大それたことは許されない。
だが問題はさらに彼に不利になった。今年の労働節が来たら3ヶ月強制休暇で、その後出社すれば法に基づいて「正式の合同工」になる、と通達された。
慌てた彼は”周立太”という有名な農民弁護士に相談した。周氏は「今、このような相談が多いですね」という。「福利」と言う名目で実労働契約期間をいったんゼロにして、ピンハネを増やすのが目的です、と言う。
地球上ではどこの国も「国際労働節」を祝っている様子を何氏に教えて励ました。
私は07年5月に「南方都市報道」と言う新聞に農民臨時工の生活苦を投書した。そのことで学校の指導者に怒りを起こすことになり、何氏は仕事を干された。
何氏は周弁護士と相談して「15年間の残業代請求」を裁判所を通して要求することにした。
だが問題解決には多くの難関が待っていた。先ず、仲裁機関に訴えるには裁定費用3210元を支払う必要がある。これが中国の法律規定だ。しかも仲裁機関の人達の考えでは何氏の要求はほとんど見込みが無いという。例え費用を払っても審理受付確定に1ケ月、審理が始まるのはその後3ヶ月。そして何氏自身が1ヶ月の無給休暇を必要とするだろう。 勿論、農民臨時工の彼にそんな金はない。
訳注:農民工は月収500元程度。裁定申請に半年分の収入が必要。
これが仲裁制度の現実だ。何氏の苦しみはまるで黒人奴隷の状態と同じではないだろうか。
今中国では「山西省闇煉瓦工場の少年誘拐事件」で持ちきりだ。だが彼等農民の少年たちが何故騙されてまで仕事を必要としているのか、その苦しい生活を知っているだろうか。そこには経済的に苦しいだけでなく、農民には人権が無いことを知って欲しい。
それは何氏の場合も全く同じだ。何氏は働き盛りの人生を「臨時工」として送った。
ちょうどその間中国の経済力は倍に膨れた。そして彼が働く学校の建物は全く新しく美しいものに変わった。だがそれらの変化は彼とは関係がない。今、彼はその進歩発展した環境から追い出されようとしている。
何故農民たちはこの進歩発展の成果を享受できないのか。学校の事情で彼を追い出す時、何故彼に法律に基づいていくらかの補償が出せないのか。
実際は何氏は既に年長者だ。これからどこで働けばよいのか。彼には学問もなく身体を使うことしか出来ない。家族の生活はどうなるのか。おそらくこれからの仕事の待遇はもっと「臨時」という扱いが明確で冷酷になるだろう。
何氏の事例は中国の労働問題の中の一つの例外だろうか。
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訳者注:
人口の7割を占める農民が何故人権が無視されているのか、最大の経済的困窮者であるのか。
これが現在中国の最大の思想的構造的問題でしょう。
裁判機関は党機構の一部、そこで農民の控訴は圧倒的に不利になる。
都市民もほぼ同じですが、社会主義では国民の横の団結と自主性が許されないことが最大の欠陥だと思います。
党がスーパーマンで人民を上から救うという思想が、国民に権利を与えることを邪魔しています。
前回の記事では来年のオリンピックを身近にして、大都市の農民には人権差別を無くすような文がありましたが。
実際の農民達の生活は日本人から見たら本当に悲惨に尽きますね。