洞庭湖のネズミ退治


07/07/26 南方週末 李虎軍





 洞庭湖湖岸にはネズミが大量に住んでいる。長江から大量に水が入り洞庭湖の水位が上がるときにはネズミ達が逃げ出して大移動を始める、その様は壮観だ。
 畑作被害を守るためにこのネズミ退治が必要だがそれはどの専門家も不可能に近いという点で一致している。

 最大の関係は「三峡ダム」

 6月20日、三峡ダムに大雨が降り洪水のようになって水があふれ出した。洞庭湖の水位が毎日50センチずつ上昇した。すると湖岸に生息するネズミ達が堤防を越えて大移動を始めた。

 02年に5月中国科学院長沙農業現代化の郭さんが研究論文を発表している。それによると毎年6月頃から水量が増え湖岸の生息面積が狭くなる。02年は10月頃から長江の水量が減少し、それにつれて洞庭湖の水位も下がる。湖岸が拡大し、ネズミの繁殖季節を迎える。その前年は水位下降期間が長く繁殖期間も長くなりネズミが大量に誕生した。
 数年の研究でネズミの数量と湖岸で行われている畑作被害が比例していることが判っている。
 そのころの研究ではダムの建設が年間水位を安定させ湖岸の面積を拡大することに関係し、結果としてネズミの繁殖を助けている。
だが、堤防を作るなどで被害を止めることが出来ると考えられていた。
 
ネズミの繁殖は強大で、年間に2度から3度子を産む。ある実験室の研究では誕生後20日で次の勾配が始まる。連続して出産するときは雌は乳が止まらない。食べ物は自然界のものは何でも食べ制限がない。07年度の発生率は、30%を遙かに超えているようだ。

 その他の関係

 ネズミとの闘いはダム建設の昔から行われていた。
 1970年代ころからネズミの大量発生とともにスピロヘーターのような病原菌が拡大し、流行性の出血を伴う高熱病が蔓延した。
 今年は建国後11回目のネズミ大移動の年だという。
 専門家達の間でも議論が尽くされていない。
 ある人は、湖岸での畑作面積が増大したことがネズミの生息地を増加し大量発生に影響しているという説。しかし畑作地と本来ネズミの生息地である湖岸とが離れていれば被害は小さいという反論もある。

 また別の有力な説は天敵大量捕殺が影響しているという。1976年から81年の間に、いくつかの商店が蛇20トンを捕まえて販売した。1990年代以降、ネズミ毒を大量に散布し、そのために猫、狐、フクロウなどが中毒で大量に死亡し、ネズミの天敵が消えた。これを自然界多様性の破壊と言っている。確かにフクロウや鷹やイタチ、蛇などが急速に減少している。

 自然界ではどの種族も鎖で繋がっており、どれかが急速に減少すれば他の種族の増大と関係している。
国連が洞庭湖の2つの地域を湿地帯として保存を奨励している。そこでは無公害の畑作が行われており、人口と建造物も制限され、小型ほ乳類も多数生存している。イタチの走り回るのを随時に見ることが出来る。そこだけはネズミ公害が報告されていない。
 逆に同じ洞庭湖でも人口密集地では当然としてネズミの天敵は居なくなっている。そして被害が増加している。これは当然の理屈か。


 一つの警告

 20世紀90年代から亜熱帯農業の研究が中国科学院で始められた。05年5月に大量のネズミ公害が発生。その損害額は2000万元に達した。
 07年は4月頃からネズミ公害が増加。中国科学院は4月26日被害警告を発した。だが残念なことにその警告は外部には知らされず、政府部内の連絡に止められた。政府部内でもどの部門に知らされた判らないのが実情という。
 昨年は湖岸面積が拡大した年なので12月に危害対策練習が実施され、07年の被害を見通して堤防や塩ビ製の壁作りなどが提案された。
 しかし実際は堤防のない部分は1000キロメートル以上ある。既設の堤防も修復が必要となっている。中央が予算として居るのは全国で1000万元で、農民1人あたりにすれば0.1元程度にしかならない。これではほとんど修復さえ見込みがない。

3月には「植物保護」と言う雑誌上で洞庭湖ネズミ被害が拡大の予報を出している。 ダム完成で水位が定位で安定し、ネズミの繁殖期が延び、被害増大が予想されたので、5月には大量の捕獲が行われた。その捕獲数はこれまでの最大であると、書かれている。それは副総理回良玉も重要視している。
 
 短期決戦は無理

 7月3日「湖南日報」が”ねずみ取り大戦”を報道。それ以降各種メディアが連続して報道している、曰く「20億匹のネズミが洞庭湖に」。

 20億匹の根拠について中央テレビは5カ所の観測点を儲け1畝当たり500匹以上いたこと、と述べている。

 訳注:1畝は6.7アール。1アールは100平方メートル。

 とにかく6月21日から24日にかけて行われた「ネズミ捕り大戦」で約225万匹、重さにして90トンの捕獲成績があった。
これまでの研究によればネズミの大量発生は3年ごとに起こっている。この災害を完全に防ぐことは至難の業だろう。

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 次は7月12日の南方週末から
   (文頭の写真も)
 今年の被害は水稲が8000畝が被害。さらに5000畝は収穫絶滅、10000畝の落花生、トウモロコシ畑などは1000畝。

 6月21日に見渡す限り緑で覆われていた畑が1日だけでネズミに食い尽くされて全面に土が現れている。これほどの伐採は機械でも不可能だろう。

 ネズミは住戸のドアもかじり、うるさくて眠れない。

ネズミ退治の大戦が始まると1000人以上の参加者が、昼も夜も交代して闘った。


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 訳者注:

 ウイキペディアより
 洞庭湖
通常期の湖の面積は最低でも2,820km2だが、長江から膨大な量の水と堆積物の流入によって増水期は20,000km2にも及ぶ広さになるという。
 琵琶湖
   面積 670.33 km2

 これで見ると面積は琵琶湖の約4倍。増水期は7倍にも広がる。

 洞庭湖の水域が夏期は数倍に拡大することで長江の氾濫水を吸収し、下流の水害を減少させています。