中国の学校にも給食法を

07/01/04 南方週末 呉 非

 07年9月から中国の農村でも9年生の義務教育が無料で行われるという。
 もしこれが順調に実行されれば大きな国民の支持が得られるだろう。

 ただし無料ということが法律となると、地元政府の予算が対応出来ないことが多くの地方で予想され、そのことで学校の運営が逆に困難となるのではないかという懸念が関係者の中に不安を与えている。
 地方政府幹部が腐敗や無能な人ばかりではないであろうから、何とかなるとは期待したいが。

 私が最も問題と感じているのは生徒達の健康と栄養問題です。学校の宿題が多く、それが圧力となって体力が大きく下降しています。
 中国のメディアはこのことを随分遠慮して報道していないが、学校内での軍事訓練や講堂での儀式などで卒倒したり、最悪は自殺したりする事件が多発しています。ほとんどの学校は休憩時間を与えていません。そのことで心理面での圧力、或いは病気になる生徒も多数出ています。
 高校入試の心理的圧力で精神病に近くなった生徒が高校へ進学しているのが現状です。

 これを都市と農村で比較すると、栄養問題が大きく影響していることが判ります。
 北京大学などの大都市の学生の中で、都市で育った学生は大体が健康そうに見えるが、農村出身の学生は身長も低く身体的成長も子供に近くみえます。
 一見したところ中学生のように見えるのが農村出身の学生です。都会育ちの生徒は先生よりも身長が高い子もいます。
 しかし農村では栄養が悪いのが一般でそのことは体力や容姿に顕著に表れています。
 
 私がある先生に「生徒達に毎日牛乳を飲ませてはどうですか」と質問したことがある。するとその答えは「とてもとても牛乳や肉などには手が届きません。まずはご飯を充分に食べることから始めないと、、、」との返答でした。 
 現在の農村での中学校は全寮制が基本です。1月に2日の休みしか有りません。つまりほとんどの食事は学校提供のものです。その学校が提供している食事の内容は、まあ、都会の人にはとても見せることが出来ない内容です。
 
 有る生徒が親に出した手紙によると、「肉まんには肉が入っていません。3種の野菜だけ。スープは顔を近づけると容器の底が丸見えです」と書いています。
 又別の話で、生徒が先生に「私は学校で5年過ごしました」と話したところ、その先生は「まあ、それで良く生きて来れたね」と驚かれたとのこと。
 学校の食堂運営は校長や先生、或いはその親戚に委託されているが、儲け意識ばかり熱心で仕事に対する誠意はすこぶる低いものです。
 さらに多くの学校では学外での飲食を禁じ、学校の食堂での食事を義務づけています。
 その反則に対しては厳罰が規定されています。これでは生徒達の体格や容姿に明確に不健康が目立つのが当たり前です。
 このままで、もし国家に一大事が有れば役に立つ若者が居るのでしょうか。農村の子供達にその役を期待するのは残酷です。
 
 中国には学校教育での栄養基準というものがまだありません。当然政府の管理部門が学校の食堂に立ち入り検査した例など有りません。たまにメディアが問題を指摘することがあっても。

 日本では1954年に「学校給食法」が出来ています。そこで学童の栄養基準も規定しています。
 戦争後日本の経済が最悪だったとき、政府は学童の糧食を八方手を尽くして集めています。
 中国は改革開放後数十年になります。経済発展は世界を驚かせています。常識的には日本より遅れること50年と言われています。そうすれば今こそ中国の「学校給食法」が出来ても良い頃ではないでしょうか。

 今世界の話題は「子供達の飽食」です。カロリーの取りすぎです。しかし中国の農村では栄養不足が深刻な問題です。
 皆さん、子供達の食事について関心を持って下さい

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訳者注:
 中国で生活の改善などを、社会的規模で語るとき、毛沢東死後の「改革開放後」どうなったか、と語られています。
 これは全く不思議な話です。本来は1949年の「建国後」で語るべきです。
 しかし建国後の30年間は生活の改善や向上が全く見られなかったのでその30年を無視することになっているようです。
 
 建国後58年、その半分が社会の発展とは逆を突き進んでいたわけです。これは1国の歴史としては正に悲惨なことです。
 しかし社会の制度や基本は現在もあまり変わっていないようです。
 教育を制度として根付かせるには人権尊重の社会的な育成が必要ですが、そのためには国民の下からの要求が通る制度が必要です。
 学校給食が業者の儲けに利用されているとき、何故マスコミが報道出来ないのでしょうか。農民が何故告訴出来ないのでしょうか。
 これらの管理を党が独占していることでマスコミも告訴も不可能なのです。
 教師達や各界の発言の自由があれば「学校給食法」はすぐ提案されるのではないでしょうか。
 国家の発展は党が指導する、と言う発想を変える必要があります。上から国を変える、これが社会主義の決定的な欠陥です。
(ただし中国やソ連とは違った社会主義も世界にはあるようですが)

 それにしてもこの記事の中に「政府幹部の腐敗や無能」と言う言葉が登場するような時代になったことは驚きです。