月収10万元の驚くべき稼ぎ方

07/09/06 南方週末 周思序


 半年で「偽広告訴訟」で訴えた件数は200件、これで彼等集団は大儲けをしている。 彼等訴訟団が市場に現れると商店主達は大慌てになる。その頭目を黄志広という。

 03年国家工商総局が「偽広告」を調査した結果、全広告の20%が欺瞞或いは過大広告だった。 
 例えば、健康に効く、消費量は全国一、博覧会で最高賞受賞、等々だ。
  
 中国の最近の法律によるとそれを訴えて勝訴した場合、「消費者保護法第49条」で被害額の2倍を得る、と規定されている。
 ここに暴利の手段を彼等集団は見いだした。
 訴訟で得た金額は月収10万元に達している。さらに彼等はその収入に対して税金を払わない。
 
 黄志広は30才未満、福建省人、現在は武漢に住む。武漢では「ごろつき」として恐れられている。

 05年、彼等は世間に出回っている「緑色食品」の商品中の多くに添加禁止物が入っていることを見つけだした。
 そこで中国の各大都市で訴訟に出た。深セン市法院は彼等の訴えを認め、5種の禁止物が入っていることを確認した。
 そこまでは彼等集団がまさに大儲けの一歩手前に到達したことだった。
 だが法院は同時に彼等が「疑似広告訴訟の専門家」で有ることも明らかにした。
 8年前にも王海という人がこの方式で大儲けをしたが、その時の法院は「専門家」として敗訴に決めた。今回もその再現になりそうになった。
 中国には「過去の判例」を参考にする、という法律はないので、もし今回敗訴になっても他の都市で勝訴する見込みがあったが、彼等は慌てた。

そこで彼等集団はマスコミに商品の危険性を訴え、判定が有利になるよう運動した。その結果出た判決は彼等が勝利したが、只の「7.4元」の弁償金を得るだけとなった。

 彼等の学歴は中学か高卒程度だが、早くからパソコンを使ってインターネットで各種情報を調査している。法律の条例構成知識は判官より詳しいようだ。
 
 彼等は企業側の弱点も良く理解しており、広告中に「業界第一」などの文字を見つけると、直接企業側へ脅迫に行く。
「あなた方の商売の行く手は真っ暗ですよ」と。

 ある食品産業の公司が裁判に負けて13000元を支払った後、彼等に直接「今後の商売打開の道」を教わりに来た、と言う。

 またある年商4億元以上の公司が工商局の調査を受けたとき、社長が思わず「奴らを殺してやりたい」ともらしたという。
 
 彼等は「有名商品」とか「国家推薦」と言う広告を見つけると、その商品を大量に買い付ける。その買い手は全国に散らばっており、損失額を大きくして、その訴訟も全国各地で訴える。

  金のなる木

 「偽広告追求」、これが彼等の儲け手段だ。1ヶ月数10万元になると豪語している。
武漢だけで10人以上の仲間がいるようだ。
匿名で記者に語ってくれた人は「07年の正月以降既に10数万元の収入がありました」と教えてくれた。現在も訴訟に持ち込んでいる件数が数件有るという。毎日銀行通いで忙しいという。
 勝訴した直後、判官が彼等の後ろ姿に向かって「馬鹿野郎」と罵声を浴びせることもあります、とのことだ。

 有る専門家の話によると彼等の行動は「お金」だけのことではない、という。

 確かに毛沢東が死んだ後改革開放が始まり、広告が許可された。だが実際の所、中国人で広告を信じている人はいない。嫌悪感さえ持っている。中国は国家として広告に規則を設けるべきだ。アメリカでは偽広告に対し損害保障額は3倍から5倍だ。昔アメリカでも疑似広告が出た時代があったが、この損害額が決められてから消費者が監督者になり、疑似広告は影を潜めている。

 各企業は彼等集団に対し、一方で睨み付けながら、多方で「仲良くしましょう、相談相手になって下さい」等と持ちかけているようだ。だが彼等集団は「そんな手には乗らないよ」と言っている。

 彼等集団にも弱みがある。数ヶ月無収入と言うこともある。半年の訴訟が200件を超しているが、その訴訟費用と旅費交通費だけで20万元を超しているという。これらは一種の投資で、かなり危険な不確定な生活様式でもある。彼等の家族にとっては安心出来るものでは無いようだ。
 彼等の一人が「私達に生活の保障がないので仕方ない生き方です。この社会に規則がないので仕方なしにこのような手段を選らんでいるのです」といっている。
 しかも彼等はどの街でも嫌われ者だ。商店街に入っていけば直ぐに店主達が飛び出してきて、「お前達の来るところではない」と取り囲んで追い出すそうだ。

 さらに驚くことが解った。彼等集団に接することが増えると、彼等の携帯電話に「お前達の妻や子供に注意しろよ。命はないかもな」と言う脅迫の電話が幾つも入ってきているのだ。
 
 昨年の末、彼等集団が街で食事をしたとき1人の仲間が頭に大きな包帯をしていた。事情を聞くと不意に襲われた、と言う。
 彼等の毎日は、誰かに尾行されていないか、何処で寝るのが安心かとか、不安は尽きないようだ。 
 交差点を横切るとき完全に青色にならないと渡らないとか、単車に乗るときはヘルメットを必ず被るとか、何時も襲撃を警戒しているようだ。
 彼等の人生訓は「人に接するときは低姿勢に、人を告訴するときは大胆に」、そして「人に弱点を捕まれないこと」だと言う。
  
 彼等の信条
* 我々は市場経済のキツツキだ、キツツキが多ければ虫は少ない。

* 世の中に悪い人は居ない、ただ悪い環境のみ有る。合法性があるか、社会に有益か、他人の利益を守っているか。

* 「あら探し」と言われても良い。我々は社会の批評家だ。私達のやっていることが良ければ応援し、悪ければ反対して結構です。

 
* 本当は公的部門がやるべきことをやらして貰っている。もし公的部門が真剣に職務を執行していれば私達は飯の食い上げです。

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訳者注:
 世界では中国の商品に対し警戒心が広がっているとき、国内ではそれを逆手に応用して生活の手段にする人達がいる。
”蛇の道は蛇”と言う格言がぴったりの、法律の無い中国ならではの恐喝集団です。
 彼等集団は判官より条例に詳しい:中国で判官が国家試験制度になったのが5年前です。それまでは酒場の踊り子や運転手が着いていました。
 法廷を独立機関としないこと、法治国家を目指さなかったこと、ともに敵階級が居なければ社会は安定発展するという思想のためです。
  中国の公的部門が職務に忠実になって脅迫集団が飯の食い上げになるとき、その時世界の私達も中国商品に対して安心出来るときでしょう。
 ただ欺瞞広告とその商品の被害に最も遭っているのは中国人です。