世界最長の海上大橋工事手抜き


07/01/18 南方週末 呂明合




 新年が始まって直ぐに、杭州湾を跨ぐ世界一の大橋の
手抜き工事のニュースが伝わり大騒ぎとなっている。

 1月8日中国新聞浙江省分局が「毛履平という工事請負人の一人がこの大橋の北側部分52号に手抜き工事をしたことを告白」と報道した。
 その内容は、工事基礎部分の手抜き、鉄骨が露出している、25ミリの補強筋が入っていない、と言うものだ。 

 設計図によると、その工事場所は杭州湾と大橋を繋ぐ部分で交通量の最も多い場所となる。
専門家によるともしこの報道が事実なら事態は深刻で、支持基礎崩壊や橋の破壊さらには基礎の沈下が予想されるとのこと。
 報道によると「毛履平が浙江省交通局にこのことを告白した直後、施工業者に雇われた殺し屋がモーターバイクに乗って彼を襲撃した。彼は小道に逃げ込んで何とか難を逃れた」という。
 交通局の調査によると確かに幾つかの手抜き工事が見られるという。ただ補強筋の手抜きは部分的のようだと言う。
 中国新聞はこの報道記事を海外の華僑に提供し、世界的に注目を集めるようになっている。

 1月10日浙江省の隣県、安徽省のある新聞社がこれと全く反対の報道をしている。
 そこでは「現在各種検査を受けているが工事は順調に進んでいる。質量の両面で設計図と完全に一致する。25ミリの補強筋も問題がなかった」と述べている。 

工事担当の嘉興市交通局の説明

「現在当方はまだ問題の存在を確認していません。昨年12月12日に毛履平の話を聞いています。幾つかの問題点が見られますが、工事の質的な危険と見られるような問題とは考えていません。 
 幾つかの基礎部分のコンクリを壊し検査をしました。鉄骨の手抜きは見られなかった」
 と説明している。

 この現場検査の”立会”に毛履平は立ち会っていない。連絡がなかったという。彼は「私の言ったことは命に掛けて、法律上の責任を負います」と強調している。

 毛履平は身を隠している

 この数日彼は身を隠している。ただ中国新聞の記者だけが彼の居場所を知っている。記者が彼を採訪したときも電話が鳴るとびくびくしていた。そして記者にも電話番号と居場所を絶対他人に教えるなとダメを押した。

黒竜江省出身の農民の毛履平は現在47歳。中学校を出て以降の生活は静かに過ごせたという。やがて料理を習い鉄道局の調理場に入った後工事請負を始めた。06年、仲間と今回の工事を請け負うことになった。1年で280万元の仕事が出来るはずだ、と誘われた。
毛履平は父や前妻、現在上海に出稼ぎに来ている女性等に12万元を借りて人夫や工事材料を集めた。しかし彼に工事を進めた王国強という彼の1つ上の請負人は彼に6万元しか払わなかった。彼と交通局とは直接の接触はなく、王国強氏が受け取った金を毛履平に支払う方式だった。
やがて現場の人づてに彼のように上手く騙されている下請けが多いことが判ってきた。彼等は「直ぐに仕事を放り出して逃げなさい」と勧めたが、しかし彼は既に巨額の借金をしている。

工事の分散請負方式 に問題

 この大橋の北側部分の施行に13の下請けが参加している。彼の元請け王国強氏はその一人だ。
 毛履平の説明によると、王国強氏などの元請けは交通局との間で「丸投げは禁止、工事には熟練工を常時立ち会わせる、」等の契約項目があるが、それらはほとんど実行されていないと言う。王国強氏などが雇っている丸投げの下請けは全て出稼ぎ農民だという。
 工事の過程で交通局関係者が現場に出入りしているが、工事技術に詳しい専門家が現場に居ないことを指摘されたことはないと言う。

 06年4月の頃、一部完成した橋を接合するとき2つの橋の高さが違い、工事のやり直しが行われたなど、基本的なミスが多かったという。

工事落札価格が低すぎか

 大橋北部第一工事区間の落札価格は1.5億元。しかし工事関係者によると実際のコストはそれよりも2500万元超えるだろうという。そうすると工事業者は必ず手抜きを考える、という。
 だが関係者によると落札価格が低すぎる傾向は中国全体で起こっていると言う。
 これでは当然「起こるはずがない事故」が「起こって当然」だと関係者の間で言われているようだ。
 また有る専門家によると、毛履平の言っていることは、実に詳細・具体的に述べられていて、設計図と照らし合わせても納得が行く、という。例えば鉄筋の数が80本足りないなどは、現場施工者でないと判らないとのことだ。
 だが手抜きが事実だとすると、事態は重要となる。重要犯罪事件ともなる。逆に検査しても問題がなければその検査部分の補償も大問題となるだろう。
 交通局の担当者は「年末までの完成」に向けて、今専門家を集め検討するところだという。
 1月15日、中央政府交通部は4人の検査官を現場に派遣した。
 1月16日中国新聞副主任は交通局と合同で毛履平を連れて現場を検査する予定だという。

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訳者注:
 上海から寧波へ行くにはとても便利だそうです。寧波には日本企業も数多く出かけています。
 その世界一長い大橋、決着はどうなるのでしょうか。
 手抜き工事の報道が一方で出ている中で、問題無しとする報道が出るなど、如何にも社会主義らしい現象です。しかも現地ではなく隣県で発行するなど、誰かの命令でしょうか。