民間人が南京市の住宅購入に団結


06/01/26 南方週末 鞠靖
(概略)

 今中国の多くの都市で住宅購入が混乱を起こしている。例えば南京では建設原価3500元から4500元/平方メートルの住宅が売値は5000元から9000元/平方メートルと跳ね上がる。

 この建設原価は政府が計算したものではなく、建設業者が出したものでもない。購入者が計算したものだ。建設業者が原価を表記するという習慣が中国にはまだない。
 ところが南京市の紹角という人が「南京愛家連盟」と名乗って賛同人をインターネットで呼びかけ、この原価を計算し発表したので、今これが中国全体に大きな波紋を呼び起こしている。

 30才の紹さんは家を買おうとした。両親と一緒に住む彼の年収は6万元で、家を買おうとすると飲み食い無しで10年掛かることが分かった。
さらに問題なのは買った後も、その家屋の質に重大な問題があることが多いことだ。
 或いは仲介と称して金を騙し取る輩も多い。 

      訳注:
         月収が南京市で平均1500元程。 
         年収にすると1万8000元程で、
         上記の原価を30坪で計算すると
         15万元から27万元となり、約10年
          以上の年収が必要となる。 


 紹さん05年4月にインターネットで仲間を募集し、北京でこの問題に取り組んでいる「ユイ」と言う人にも相談した。
 するとすぐに会員は300人になった。ただこの人達が集会で話しあった結果、それぞれの要求は部屋の大きさや構成などバラバラで、簡単には購入者の団結を作ることは難しいことが分かった。
ただ、購入者が騙されないように、販売側が騙さないように、建物の構造が質的に問題がないことを目指すことにした。
 そして今年の1月に南京市の一例として販売中の建物の原価を計算しインターネット上で発表した。すると原価は2500から3700元/平方メートルのものが、約8000元/平方メートルで売られていることが分かった。
 

 彼とは別に櫨という人も同じような行動を取っていた。櫨さんは政府の強制立ち退きに出会って家を買うことにした。しかし頼んだ人に騙されて金を取られた上に住宅を買うことが出来なかった。
 そこで彼もインターネットで「精鋭櫨」と言う名で住居購入者の団結を呼びかけた。そしてその同意者はすぐに500名程になった。
 しかしその数を持ってしても、建設業者との交渉が有利に進むことはなかった。購入者の要求もいろいろで、売り側の力は圧倒的に彼等を凌いでいた。
 そこで購入に当たって騙されないことの注意点を表示するに留めた。現在までに購入した会員は市価の5%引きの利を得ている現状だ。
 
 そして南京市人民大会議員の「張力軍」と言う人が1月の議会に”庶民が建物を購入するに当たり業者は原価を表示すること”と言う議案を提出した。

 訳注:
張”力軍” と言う名前。
文革の頃生まれた子供に、親は”軍”と
言う名前を争って付けました。女性にも。
だからこの人も現在の年齢は40歳弱でしょう。


 その意義について張氏は「今までは原価などは議論されたこともない。市場の明確化のために一つの試案だ」と述べている。
 だがこの影響を受けてやむを得ず市政府の関係局が動き出し、建設原価表示を支持する態度を出した。

 張氏は言う。
「購入者が500名程度団結しても、建設業者は購入者に比べて圧倒的に力が大きい。何か政府の方でも力を出すべき時だ。
 交渉が平等で、透明になることが目標だ」

 05年5月に江西省では建築物の原価表示を政府が診査する法律を建てた。だがこれまでまだこの法律が実行されたことはない。

 民間の「紹」さん達の動きが政府を動かしつつ有る現状と言える。浙江省でも地方政府として原価の表示を義務付ける法規を作成している。国土資源管理局もこの動きを受けて対策を行うことを決めた。北京政府もこれを後押ししだした。
 
 前掲の櫨さんによると、購入者側にも専門知識のある人が参加して、原価を計算することが出来れば、売り手と買い手の力関係も対等になるのではないかと言う。
 そして同じような建物購入者の団体が出来てきて欲しい、と言っている。
 
現在までこの運動を引き起こしてきた中国人

 ユイ凌カン 03年12月ホームページに募集。すぐに広範な参加希望者が出た。
 彼は土地を共同購入した後建設業者を選択して建設する方法を提案している。06年にこの第一歩を計画している。

叙可心
 99年に団地を購入。その所有者として、所有物件の維持と権利拡張を図って団体を作った。
 03年人民大会議員に立候補、まだ当選していない。

 秦兵
 07年「住宅購入共同計画」を発表し、建設業に大きな波紋を作った。

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 訳者注:
  中国の住宅事情を知る記事と思い掲載しました。
 しかもこの記事は中国の国家のあり方も現しています。
 先ず市場経済になって国民全体の生活範囲が広がり活発になって、党が全てを指導すると言う原則が実質上無くなっています。
 かっては3人以上が集まる時は党が指導者として配置する事になっていました。つまりあらゆる要求の先頭に党が立つという原則です。しかしこの原則が現実には大衆の団結を抑え、国家の発達を抑圧してきました。
 この掟は国家の基本原則です。この掟は国民に恐怖心を与えるばかりではなく、積極性を奪います。人権が奪われます。科学技術の発達さえ無くなり、世界から大きく取り残されました。

 改革開放後、党が後退し、国民の自主性を前に出した「市場経済」を採用し国民の生活全体が活性化しました。この動きは30年前の住宅(現在の農民の住宅)を見れば一目瞭然です。
 住民が団結するその一例がここに表示した住宅購入を巡る動きです。

 また議会(人民大会)の動きも出てきました。これまでは原則として議会は「おしゃべりの、飾りのもの」で、議員は党が指名してきました。(選挙の形を取っているが)
 ここにあるように党よりも市政府よりも先に民衆の要求を代弁する行動が見られます。
 「おしゃべりの機関」が」指導者の党よりも先頭に立っているのです。
 
 中国の場合、生産や商業を行うとき(業者)先ず党書記に相談するという国家です。(法治国家でないので)
 住民の権利無視で、庶民の上の方で全てが解決されています。
 住民を追い出し、そこに商業施設を建てることを提案するのも業者です。それがGDP拡大に役立つなら党は「住民の追い出し」を許可します

 こうして民主主義が発達しなかった社会主義なので、住宅購入時には一方的に業者に押しつけられて買うということになっています。

 実にこのような大きな壁を破ることに「インターネット」が役割を発揮しています。

 ところが、話が変わりますが2月11の日本経済新聞によると、中国はインターネット検索機関の「yahoo」や「gougle」に対し、中国を非難するホームページや意見は表示しないという契約を作っているそうです。

 そして03年に四川省で一人の公務員が匿名でインターネットに政府の腐敗を掲示したところ、その投稿者の名前をYAHOOが警察に教え、その結果,
投稿者は「国家転覆罪」になったと書かれています。
 私が中国にいたときも「プレイボーイ」等は検索表示できませんでした。
 私が時々紹介している「文学城」も中国人は見ることが出来ないようです。その他中国政府にとって好ましくない記事は常時生まれているでしょう。それらを中国国内では見られないのです。見られないだけでなく、批判意見の投稿者の情報を提供させているのです。YAHOOとgoogle の言い分は、外国に入ればその国の政府指示に従わざるを得ない、と言っています。