中国の農民保険を考える

06/01/19 南方週末

 労働と社会保障農村保険司副司長 劉属竜

 中国は1980年代半ばから農村の社会保険の模索を始めた。
 一部には山東省煙台市のように農民老齢保険を実施しているところもある。加入農民は数十万人で、老後月に80元得ることができる。

 しかし中国全体で見ると社会保障に加入している人口は都市と比較すると都村が24に対し農村は1で、その補償金額も都市を22とすると農村は1である。
 
この保険制度実施の困難の理由は、農民の収入が極端に低いこと、人口が極端に多いこと、老齢化が急速に進んでいること、若年者は都会に出稼ぎに行っており、農村の土地財産を子供に譲って家族子孫を継承する伝統が消えつつあり、若年者の収入が農村に戻らないこと等々にある。
 各家庭の農民が土地の使用で得る収入は3分の1のところもあり、つまり農民の主要な収入は出稼ぎと言うことになる。

 現在既に4000万の農民が土地無く、仕事無く、預金無く、社会保障もない状態となっている。
 しかし専門家が欧州13カ国を調査した結果、農業生産が全生産量の15%以下の国家でも社会保障をしており、中国は既にこの条件を満たしている。
 
2030年頃に中国では高齢者が最大となる時代を迎える。このままでは困難は大きくなるばかり。

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訳者注

 中国の歴史(或いはその主義)に関心がある人は1980年代まで社会保険が存在しなかったことに驚くでしょう。 
 私自身も1993年に中国人から直に聞いたときは信じられなかったです。
 毛沢東の居た時代の30年と言う長期間は社会保障という政府事業は皆無でした。それは当時の”計画経済”ではあまりにも生産力がお粗末だったこと、階級闘争こそが社会発展の原動力という思想で階級闘争に力を入れて、生活が不安定だったこと、が主原因です。

 改革開放が叫ばれた80年代半ばから急速に生産力が発達しました。
 つい先日の報道によると2015年から9年制の義務教育を開始することになったと書かれています。ただし教科書や給食や先生の賃金をどうするかは未定だそうです。
 このまま法治国家になり人権を保障する普通の国になるのでしょうか。

 中国の新聞では農民の出稼ぎ者を「民工」と記していて、日本の新聞もそのまま「民工」と書いています。でも私は「出稼ぎ農民」と訳しています。”都市に住む権限のない農村出稼ぎ者”が正確な表現です。