21世紀最大の問題は老齢化

060113 南方週末 登菫

 21世紀に入ると、発達した豊かな国家は老齢化が重要な問題になることが予想されている。労働人口が減って移民を受け入れざるを得ず、養老保険金問題が出現し、退職年齢が大きく引き上げられ、それらが社会的経済的に大きな問題となる。

 それら発達した国家では人類の歴史上初めて人口減少が見られる。
 ピーター・タロック「21世紀の管理と挑戦」がそう記している。

 イタリアでは一人の婦人が産む子供の数(生育率)は0.8になり、現在の人口6千万人から2千万人前後に減少する。日本もその数字は1.3で、人口は1.2人億から5千万人前後に減少するだろう。西欧もアメリカも人口が減少している。

 日本や西欧の人口は600年程増加を続けてきたが、徐々に減少傾向に入った。
 しかもその中身は、労働人口が減って退職者人口が増大していくという問題を含んでいる。

 タロックの予想では21世紀半までに老齢化を迎え、2030年にはそれらの国家では退職年齢は79才ほどに上がるのではないか、と言う。

 これまではどの国も人口は増加するものとして考えられてきた。だがその前提は崩れ人口減少を見せている。特に労働人口は確実に減少する。
 その減少は発達した国家だけではない。シンガポールや韓国・台湾・香港などに於いても同じ傾向を持つだろう。
 
 国連が2005年度に発表した「人口の現状」では香港の生育率は0.95(これは地球上最低の数字)、韓国は1.22で世界で下から6番目だ。全世界の平均は2.6だ。

韓国政府は女子がより多くの子供を産むことを期待して様々の方法を取り入れている。誕生に祝い金を出したり、3人目の子供には大学まで費用を免除する、また避妊手術をした夫婦に医療的に回復を勧めるなどである。 韓国では、かっては「子供が6人出来れば必ず乞食になる」と言われていた。「2人の子供でも多すぎる」とも言われていた。現在では子供を産むことは「愛国」とみなされている。

 シンガポールも子供育成奨励政策を採っている。04年に「愛欲香水」を奨励している。又これまでの伝統を破って外国の低年齢者を受け入れる条例を作った。
 移民受入れと退職年齢の引き上げは養老保険そのものに危険信号を送るだろう。
 日本などの発達した豊かな国家では、今後の2ないし30年間は大きな政治問題となるだろう。タロックは既に1999年に、これに対処することを考えている国家はない、と指摘している。

 例えば退職年齢を引き上げることは、”左派”、それとも”右派”なのか。60才以降も労働させて税金を納めさせるのは”進歩派”それとも”反動”なのか。
 
 英国でも老齢年金を維持する方法について議論が白熱している。英国では2050年までに退職年齢を69才に引き上げないと養老保険を維持できないと議論されている。
 スコットランドのカラスク市の平均寿命は69.8才で、近未来はその年齢まで保険がもらえないのだ。

 ところが発達した国家の人口が減少しているのに反して、貧困国家では人口が増大しているのだ。
 人口問題の専門家の間では、2050年頃に現在の人口65億が91億になると予想している。

 タロックは「宗教や文化の違う移民を受け入れること程大きな政治問題を伴うものはない」と指摘している。その最も最たる国が日本であろう。これまで日本は移民を受け入れてこなかったのだから。
 移民国家アメリカでさえ劇的な対立を生む可能性がある。
 これは企業運営の根本問題を暗示している。即ち、企業は誰の利益のためにあるのか。株主、或いはその従業員、それとも将来の養老保険の支払人の育成か。

 地球全体の資本市場の3分の1は養老保険金だ。アメリカは数年後にその市場の40%を退職者が所持する状態となる。大企業に限れば60%を退職者が保持する。 
 彼等退職者は外国にも大量投資をし、その狙いは短期ではなく長期の利益を狙っている。
 「資金の動きに伴って権力も動く。これは一種の革命に相当する」とタロックは指摘している。


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 訳者注
 
 中国の新聞からこのような記事を拾うというのも時代の流れでしょうか。極めて現実的で具体的な記事です。
 建国後30年までの記事は(改革開放になるまで)全て「共産主義になれば全ての矛盾が解決され、繁栄は永遠に続く」と論じていて抽象的なものばかりでした。(その結果何も解決できなかった)

 それから多分日本人で高齢者は「発達し豊かな国家日本」という表現に戸惑うのではないでしょうか。経済的に苦しい時代を知っているが故に。

 でもこうして中国でも具体的で現実的な記事が現れると、それは日本にとっても大切な好い影響を与えてくれます。
 今後の日本を「進歩派が引っ張るのか反動が引っ張るのか」は、問題の建方が間違っていると言うことでしょう。

 私の受け取りは移民が増えてますます国際的になり、地球が狭くなる、身近くなる、と言うことだと思います。
 でも最近のフランスのように、高齢化の理由ではなく他の理由で「移民を受け入れ」劇的な対立(原因は何かは別にして)が起こる例もあります。
 地球は生きている、と言うことでしょうか。