韓国見学の意義は何処に


06/06/15 南方週末 譚羽飛

 最近中国政府は韓国の「新農村運動」見学に3年間で1万人の公務員を見学に行かせることを決め、これが世間の話題になっている。

話題と言うよりは、その効果を疑う疑問の声の方が大きい。単なる公費旅行でないかと疑っているのだ。
 
 確かに韓国は中国と同じくアジアに位置し、儒教国家であった面は同じだ。その点では欧米に学ぶよりは得るところがあるかも知れない。
 1970年代の韓国は工業化の前夜で都市集中など急速に近代化していた時だ。
 その時韓国は社会的にも多くの矛盾を抱え、それは今の中国がGDPで1000ドルを超えようとし、多くの社会問題を抱えているのと同じだ。
 しかし韓国は「新農村運動」を経て、都市と農村との格差を縮め、社会総体として全面的な発展に成功した。都市と農村との格差は30年間を通して都市1に対し農村が0.8から0.9の間を行き来している。
 05年の農村での収入は都市部の84%となっている。

 そこに表れているのは韓国の農村における自治組織の数字だ。94年に200万人が農民組合に組織されている。その組織率は「韓国の生命庫」と称されている。

 中国がそのような面を韓国に学ぶことは意義有ることだ。だがその実、我が国では誤解されている面も多い。
 
韓国の農業発展は確かに政府主導の投資があったが、しかし民間側の独自の参加が大きく参与していた面を見落としてはならない。
 農民がその運動に一貫して主体になっていたこと、その立場が尊重されていたことだ。
 例えば農村に何を建設するかは、常に農民が主体的に選択することが尊重され、可能となっていた。
 政府は只それを可能にするよう支持し、物質的供給を与えた。
韓国の農村共同体が常に大きな実行組織であった。

 農村の発展は農民の自覚、農村共同体の発展の歴史でもあった。もしこの面を見落とし、全て政府主導のこれまでのやり方で行くなら、中国がこれまでやって来た”維新”を謳いながら残滓のみ歴史に残すことになるだろう。
 中国はこれまで全て政府主導で改革を進めてきたその結果、悪弊のみ残ることになっている。
 これまでの中国式のやり方で行くなら、農民の自治組織が破壊され、農村の内部からの発展力が押しつぶされるだろう。

 さらに、韓国の「新農村運動」は純粋な農村運動ではなかったことだ。
 1945年の「光復」以降、韓国の経済は急速な発展段階に入るかと思われた。しかし当時の韓国の道徳水準は経済の発展を希望通りにはもたらなかった。戦争、動乱、通貨膨張、等が韓国の勤勉、誠実、節約心などを破壊していた。
 
 1960年代の韓国では都市と農村は異常な不平衡状態であった。若者は全て都市へ流入し、農村の伝統文化、倫理観、社会秩序、が大きく潰されていた。
 当時の韓国の学者は言っている。「韓国の社会発展、進歩をもたらすには先ず国民の道徳倫理観を引き上げなければならない。」

 韓国の「新農村運動」はこのような状況下で進められた。それは緩やかな社会改造運動でもあった。社会の基礎構造を造り、生活環境を整え、それと共に農産業を発展させる。 民間組織と国民の倫理道徳観を成長させる事が必要だった。そのために住宅を建て、交通路を整備し、民族精神・社会文化の育成が重要視された。
 このような農村の主体を尊重し育成するということを認識しないで、中国式の指導方式を続けるならば、大きな破壊を農村にもたらし続けるだろう。

 韓国見学が本質を見つけ、単なる機械的な物真似にならないようにして初めて有意義なものとなろう。

 さらにもう一つ言わせて貰えば、中国の農民に学ぶことが基本で、彼等に発言権を与えることだ。数億の農民が主人公となって初めて事が成就するだろう。

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訳者注:

 「中国はこれまで全て政府主導で改革を進めてきたその結果、悪弊のみ残ることになっている。」

 この言葉を聞いた農民は恐らく歓喜のあまり号泣するのではないでしょうか。
 これはマルクス的社会主義思想の欠点を見事に突いています。新中国の悲惨さを見事に表現しています。
 このような本質の理解者が中国にも現れたことは本当に驚きです。
 数年前までは党が主人公となって全て政府主導で上から下へ「革命」を押しつけてきました。
 そして現在の農村が有ります。農民の生活・道徳意識が作られました。悲惨なことです。

 この筆者もかってはマルクスを”精神が異常になるまで学習”した1人でしょう。そして”振り返れば社会の破壊だけが残っていた”と自覚した1人でしょう。
 建国後の中国は全ての生産を北京から指示しました。生産者・労働者の意志を無視して。農業生産を北京で指示しました。農民を無視して。
  この方式は生産が後退しただけでなく、人権が完全に無視されました。

 恐らく韓国見学は党員(形だけでもマルクス主義者)が主でしょう。(役員は大半が党員)
 それではこの記事を読んでも真理を理解できるでしょうか。
 ”中国の農民に発言権を与える”そんなことが出来るでしょうか。