中国経済の奇跡的発展はその制度による

06/01/05  南方週末 肖耿

 中国が過去200年間世界から後れを取っていたその根本的原因はその”制度”にある。

 そしてこの25年間は経済制度の改革が幸いして素晴らしい発展を見せている。その発展は中国だけの問題ではなく、世界に影響を与えている。

 私が経済に興味を持ったのは20年前のことで、当時中国科学技術大学に在籍していた頃、まだ中国には「経済学科」と言うものがなかった。そこで「管理科学」を専攻した。外国へ留学することになってアメリカのロサンジェルスで「経済学」博士コースを採った。そこで中国経済を勉強した。でもその頃はまだ中国が現在のように発展するなど予想も出来なかった。

 私の子供の頃、時代は大躍進政策の直後で中国全体に飢餓が充満していた。やがて改革開放が始まって外国への留学が許可された。私はアメリカへ留学し、1990年香港に戻ってきた。
 
 未だに子供の頃をはっきりと想い出す。誰も一カ月の配給は二・三切れの肉で、それは今日で言えばマクドナルドで一つのハンバーグに含まれるている代物であろう。
 ああ、同じ一生の間にこれほど激しい経済の発展を経験するなんて、誰が予想しただろうか。
 私が現在懸命に研究しているのは、この20年間の素晴らしい経済発展の原因です。人類史の中でこのような発展の歴史は存在しないのではないか。一言でその原因を言えば「先進的国家からその制度を取り入れたこと」に有ると言うことでしょう。

 数千年の中国の歴史は中国が巨大な文明の大国であったことを示している。200年前でもその経済規模は世界最大であった。アメリカはまだ頭を表していなかった。
 しかしその後アメリカが爆発的に発展し、中国は衰退の一途をたどり貧窮国家に陥った。根本原因はどこに有るのだろうか。
 中国の土地、中国の人、或いは指導者等々がアメリカと比べて劣っていたからであろうか。そうでは無く、原因は経済制度だけにあったと言えるのではないか。なぜならばこの200年間で中国とアメリカの違いと言えばただ経済制度にしか求めることが出来ない。


 アメリカは当時から世界の文明国の制度を取り入れ、世界から優秀な人材を取り入れた。それに加えて大陸の肥沃な土地があった。
 これらがアメリカを世界の指導国家としての地位に押し上げた。
 
 他方中国の経済制度の旧習は”閉塞”にあった。
 そこで「開放政策」が取り入れられると、生産力に大きな変化をもたらした。
 私は学生達にいつも話している話題は「日本の明治時代の発展」で、それを書いた”Angus Maddison”と言う歴史家である。
 日本のそれと中国の1979年の改革とを比較し、この「改革」がもたらした素晴らしさを論じさせている。
 中国のこの25年の歴史はアジアの4つの昇竜の一つと称され、日本が明治に経験した経済発展の重要性と比較されている。

 中国がこの25年間に採ってきた改革による発展の主要な原因は3つ有る。
第1は、中国共産党が13億人という大家族の国家を安定的に治めてきたこと。
 アジアでは中国より安価な人件費の国家が他にもある。しかし多くの外国が中国に投資しているのはこの「安定」にある。
 
 中国政府の行政能力はとても高い。このことを外国企業はよく知っている。中国政府というのは中央も地方も共に行政は効率的だ。
 中央も地方もその間の競争は激烈で、飛行場や港、鉄道線路、車道などに大きな投資が実行されている。

 第2の原因は、中国の経済改革が徹底していること。今では日本より開放的になっているのではないか。中国に来れば世界の商品を買うことが出来る。外国企業の投資に対してほとんど制限を設けていない。税制面でも優遇している。
 中国と外国企業との合弁は至る方面で見られる。その結果金融面でも世界と連携している。
 中国では地域別の差が大きい。知識水準や経験も差が著しい。だが地方へ外国企業が入ってくれば直ぐにどの地方も世界と結ばれる。当然技術などもその地方に根付くようになる。

 第3の原因は”香港”という世界の中で先進的な市場を持っていることだ。
外国企業は先ず香港に投資し、それによって国内への進出を容易にしている。香港で分析や管理をすることで、世界のどこからも安心して投資できる。
 中国は世界の先進的な経済制度を採用してきた。そして合弁企業が大量に出来ている。 例えばフランスの「家楽福」(チャラフ)などで、それは世界一の「スーパー」で、他のどのスーパー商店も現在は「チャラフ」の経営を参考にしている。
 中国は汽車の製造に外国と合弁で製造を始めている。その結果大きな技術進歩を得ている。
 ヨーロッパが上海に「商学院」を建てた。そして今では他の商学院が競ってその経営を見学に来ている。
 こうして中国は今世界の先進的経済体系を取り入れている。その結果現れたのが現在の高度急速発展で、それは中国だけの問題ではなく、世界に影響する大きな現象である。
  

********************

訳者注:
 中国は1949年、”マルクス的社会主義”という経済制度を取り入れ、それは資本主義より進んだ「計画社会」で「経済恐慌」の無い優秀制度として、喧伝しました。世界的にも一つの「社会主義経済学」として当時は成り立っていました。全国民が「マルクス」を気が狂う程勉強しました。幸福な社会を築くために。
 現実にはその学問は人類から捨てられました。しかし採用した国家の人が、しかも経済の専門家がそのことの利害に全く触れないで単に建国後の経済を”閉塞”で捨て去ると言うのは「如何なものか」と、強い疑問が湧きます。

 推測としては、そのことを今の中国ではまだ直接に表現できないので、著者の人生を語ることで、理解を求めているのでしょうか。
 つまり大躍進政策は毛沢東が一気に「社会主義」から「共産主義」への飛躍を求めて実行したものです。そして人類史に例のない4000万人を超す餓死者を出しました。
 この歴史的事例を出せば、もうマルクス的社会主義の利害を語ることは必要ないと言うことでしょうか。でもそんなことでかたづけられる程社会主義の精算が簡単なものでしょうか。

 ここで語られている進歩的経済制度とは、資本主義のことで、不特定多数の人が資本を出し合い、いろいろな事業を興す制度です。
 国家は経済活動には直接にはほとんど関与しません。(マルクスの見た資本主義)

 ただ、そこには国家的に見れば計画性がないので、恐慌を起こしたりしました。その犠牲は貧しい人に集中しました。それらの不幸と矛盾を一度に解決するものとして社会主義は国家が全てを計画的に集中的に上から指導すると宣伝したはずですが、この経済学者は全くこのことに触れず無視しています。これが現在の中国の普通の思想でしょうか。

 私が中国に居た頃も「党が国家を安定的に統治している」という考えは何度も聞きました。多分独裁政権の使い古された言い方でしょう。この言葉を使わないと学者として生きていけないのではないかと勘ぐりたくなります。

 安的的とは建国以来の国民の人権無視によって維持されてきました。膨大な犠牲者のことをこの学者は知らないとでも言うのでしょうか。
 89年の天安門事件の犠牲者が投稿者のほぼ同期生ですよ。

 それと驚いたのは「中央も地方も共に優れた効率」を持っていると言っています。
 現実の中国でこんな事が好くも堂々と言えますね。まだまだ社会主義的傲慢と無責任と怠惰な公務員が全国にいます。

 だからこの投稿が学者のものとは私には受け取れませんが、皆さんは如何でしょうか。
 でも結果として日本の明治と同じく大きく開放的になっているのも事実ですが。しかし明治の開放は身分差も無くし学校教育を始めました。経済面が日本より開放的と局部を褒めるだけでは、とても学問にはならないでしょう。、
 
 つまり今の日本は資本主義の矛盾を解決する一段高い経済制度を探求している時代ですが、中国の経験からは何も得ることが出来ないとなってしまいそうです。