中国エネルギー問題の挑戦

06/09/07 南方週末  劉君

 中国は今環境問題の大きな壁にぶつかっている。産業規模が巨大になるに連れてエネルギー消費も大型化し、金融市場の改革の遅れがその対策に役立たない現状で、今後のエネルギー市場の改革が政治経済の両面から注目されている。

 02年から”油”、”石炭”、”電力”の欠乏が目立ち始めている。それは経済の問題だけではなく、環境問題とも繋がり、経済成長が認められるようになったこの20年間、それは誰もが気にしてきた問題でもある。

 1979年から05年にかけて中国のGDPは年9.6%の成長を続け、エネルギー消費は4.9%の増加を記録してきた。
 その期間のGDPは7倍に拡大し、エネルギー消費は2倍だ。この数字の格差が示す意味は各生産の場が自己のエネルギー消費を3分の2に抑えてきたことで、これは賞賛すべき抑制だろう。

 だがその努力も01年末にWTOに加盟した以降は各産業が大型化しエネルギー消費も拡大している。
 筆者は21世紀の20年間に中国が如何にこの消費を抑え、環境の悪化を防ぐ事が出来るかで、その後の中国の運命が決まる程の分岐点にいると思っている。

 中国はこれまでエネルギー消費は70%を石炭が占めてきた。その比重は当分変化しないだろうが70年代から徐々に石油とガスが使われるようになってきた。
 その消費比率は発達した国家と比較すれば明らかに石炭消費が飛び出ている。何処の国家も経済の成長と共に石炭から石油やガスにその比重を移している。
 石炭は石油やガスと比べ排気ガスが多い。石炭使用の国家では産業の大型化と共に排気ガスが増大している。
 中国では石油の消費比率が20%前後なので今後とも環境破壊は改善されず増大し続けるだろう。




 中国の石油産量は年間2億トン程度で、国内需要を満たすことが出来ず資源不足国だ。
 他国の一人当たりの消費と比較すると、アメリカは28バレル/人、日本と韓国は17バレル/人、中国は1.7バレル/人で、エネルギー消費を石炭に頼っていることがこれでも解る。
 中国の工業化が完成するには現在の10倍の石油が必要なので、大半を輸入に頼ることになる。だが世界の石油生産量から計算するとこれは実現不可能だろう。
 05年の世界原油加工品は前年より増加分の40%が中国に輸入されており、現在の石油価格の上昇は中国の石油需要増と見なされている。従って中国が直ちに石油依存型に変換することは非常に困難な状況である。

 現在の国際取引は発達した国家が全体の3分の2を消費しており、中国が大きく使用分量を増やすことは、既存の分割を破壊するだろう。
 さらに中国が海中油田に目を向けることなどが、経済問題から国際的軍事問題に発展する可能性もある。
 
 このような事情で中国は今後ともエネルギーは石炭中心に行かざるを得ないだろう。
このことは環境問題がさらに大きくなることを我々に突きつけている。

 今後中国の生活水準が上昇し居住空間が変化し各人が車を持つ時代が来ることを考えると、産業の大型化とエネルギー消費も大型化することは目に見えている。
 この数年の経済成長を見ると鉄鋼・土地・車・コンクリート・電解アルミなどへの投資が急速に拡大している。これらは全て産業の大型・重工業化を意味している。

 さてそれらの将来を推測すれば、他国からの輸入だけで中国が満足出来ないことは明瞭だ。何故なら中国には巨大な人口と広大な国土が有るからだ。中国の需要に世界は対応出来ないだろう。
 
 その点はシンガポールなどとは完全に異なる。中国が大国、強国を求める以上は、その安全についての配慮が欠かせず、当然自身での供給能力も不可欠だ。
 中央政府もこの目標を示しており、今後の20年、中国はエネルギー消費を下げることは出来ない。

 中国が今後エネルギー問題で挑戦する課題はさらに、無駄な消費、低効率の使用を減らすことだ。政府も企業もこの解決への協力が上手く行っていない。

 現在中国内の源油は国際価格とほぼ連動している。だが石油製品価格は政府が指定している。(国際価格より安い)このことで中国内部で地域によっては原油が欠乏する現象が起こっている。
 ガスと電気も価格は政府指定だ。市場相場よりも相当低価格だ。これが企業や政府などが不必要な消費、低効率の消費に安住する体質を生んでいる。
   
 中国ではエネルギー消費の大型産業はほぼ国営である。彼等はかっての計画経済体制下の既得権益集団である。市場に対応する態度は極めて甘い。鉄鋼産業の改革の遅れが石炭産業の改革を遅らせている。関連産業部門の人達は、住居者も含めて、低廉な供給に甘んじ、市場の動向には無関心だ。
これらの現状を見るとエネルギー主要産業の改革はとても困難だ。

 さらに金融市場に目を向けよう。
 中国ではエネルギー関連産品の生産は品種が極めて少なく、ほぼ他国からの輸入に頼っており国際価格に支配され、石油価格と共に激しい価格変動に晒されている。
 
 1970年代までは石油価格の変動は緩やかだった。だがその後は中東戦争や主要産油国の影響を直接に受けるようになっている。彼等産油国はその価格を上げることに決定的な力を持っている。この20年間はアメリカの数10兆ドルの資金による現実離れした価格操作も著しい。 

 石油とその産品の消費を見込んで売買があり、そこに動く金が金融である。この金融操作が透明で有れば市場も効率が良くなる。
 ところが中国は長期に渡って計画経済であったので、以前は全てが政府指導の価格であった。従って石油生産者も消費者も市場価格で商業取引を行うということがまだ出来ていない。それに必要な金融関係の設備や制度が整っていない。
 05年に燃料油関係部門だけ金融対応が為されたが、他の部門は全て国際的影強を直接受け価格変動も極めて激しい。それによる損失も巨大である。
 源油価格のアジア対応低価格という特権を利用出来ず、国内の関連産業の非協力の下、海外からの影響を直接受けて、国民への被害を拡大している。
 
  金融の機能には「危険予知」「危険対策」「短期価格変動吸収」等の役割がある。その機能によって、国内の関連産業も適当な配置が為され、被害を減少出来る。
 その機能の成功は国民全体に幸福をもたらすだろう。

 以上の各種問題を今後の20年間を見据えて、エネルギー需要を保証し環境問題を克服して行くことが中国全体に突きつけられた課題だ。
 例えば原子力発電や風力や太陽発電などを育てることで石炭使用を減少させエネルギー使用で効率化・安定化させることも選択の大きな道だ。その使用技術を改善することで効率を上げることが出来る。 

 各産業に対しエネルギー使用の効率化有効化に対し政府は税制面でも奨励や懲罰などで改革を進めることも必要だろう。その部門の研究開発に政府が音頭を取って取り組むことも重要だ。
 筆者:海通証券投資銀行


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訳者注:
 私が大連空港に着いたのは99年の3月、空はどんより黒ずんでいました。後で聞けばそれが街全体で使われている石炭暖房のためで、現地新聞によると恐ろしい程の汚染指数でした。
 1年後杭州市に行きましたが、市内の空気はさらに汚れていました。
 00年6月の暖房が使われていない上海はの空気はもっと汚く、呼吸困難を感じました。
 現在の車の台数は00年の3倍以上だそうです。

 時代の流れは、中国は今後さらに発展しエネルギー消費を増やしていくのは当然の成り行きでしょう。
 しかしここに書かれているように石油依存に切り替えれば解決するものでもなく、石油依存は地球の生産能力から見れば不可能だとここに書かれています。
 その問題は50億を超す地球上の人間全体の問題ですが、しかしこの記事で解ることは「計画経済」という特徴を持った社会主義社会ではこのような切実な問題を解決するには全くその能力を持っていなかったことが明白になっていると言うことでしょう。
 全く違った方法と視点で、地球全体の問題を共同して解決に当たることが必要ではないでしょうか。
 今後の20年、中国は適切にこの課題に対応出来るのでしょうか。