ベトナム大改革


南方週末  06/04/20 
  ベトナム中央研究所 
   ボ・トリ・タン教授
南方週末記者 李盛

記: 最近発生しているベトナム改革の大論争は何が問題となっていますか。

ボ: 現在ベトナムはこの20年の市場経済採用以降大きく改革され発展をしてきましたが、そして国際関係が密になってきましたが、これを如何に受け継ぎ発展を続けるかが問題となっています。
 今は国際的には「発展途上国」と見なされていますが、今後の政策を如何に進めるべきか、それは意識や実践面で大きな試練を受けるでしょう。

記: ベトナム・ネットのファン・タイ記者が「社会主義市場経済」を唱えることに異議を表明していますが。貴方はこのことをどう思っていますか。

ボ:「社会主義」を目指した市場経済という言い方に根本的な問題があるという人が居ます。それは市場経済の中で個人的・民営企業の役割が社会の中で拡大する過程で問題視されてきました。
 計画経済から市場経済に変化するとき、社会主義と言う概念が明確に提議されなかったからです。
 具体的に言うなら、公務員制度、監督の辞職制度と懲罰制、特に大問題は腐敗汚職を如何に防ぐか、等々です。

記:そのような問題は突然表面化したのですか。

ボ:いや、改革を始めた最初から表れていました。とくに問題視されたのは「個人資産」を如何に評価するかでした。市場経済路線に入って20年、未だに社会主義に向かった過度期と考えています。しかも一つ一つの問題を如何に扱うべきか模索の状態です。
 ただ、問題は複雑ですが、それが正常な過程と言えるでしょう。
 
ベトナムにはまだ計画経済の部門も残っています。市場経済の運営を潤滑にすることを主とする要求がありますが、それは計画経済と矛盾します。
 国際的な経済面の結びつきが強まっている現状で、その大勢に遅れてはいけません。

 記:ベトナムは長期に「市場経済」と「社会主義」とが如何に関係しているかを模索してきたと聞いていますが、その結果が出ていますか。

ボ:これは難題です。始め国有経済でスタートしGDPの中心を占めましたが、そこでは全てが効率が悪く同時に巨大な腐敗がどの部門でも発生していました。
 他方、市場経済では搾取や貧富の拡大などが問題視されてきました。
 今後も試験的な路線模索が続くでしょう。そこでは効率と公平を追求することが極めて困難であることは誰もが認めています。

個人所有権が進展する過程で、私営企業の経営者が党員になることにも問題が指摘されています。

記:ベトナムで国有企業と私営企業との状況はどうなっていますか。

ボ:現在国有企業は全生産総額の30%で、その企業数は20世紀の90年代には12000企業有ったものが現在は3200となっています。国営企業の経営内容は今後とも楽観できない状態です。

 私営企業はベトナム全体の90%の人々に職場を提供しています。私営企業の数は18万軒で、これは90年代の4倍となっています。その経営能力と発展は今後とも拡大の一歩を続けることは明確です。

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訳者注:
 ベトナムがアメリカから独立したのが1973年。その10年後、改革開放をして市場経済を採用しました。
 この記事には社会主義の問題点が簡単に記されています。

 アメリカから独立して人々が勝利を喜び祖国愛に燃えていた時、そんな時点でさえ国民は国営企業が配給する制服ではなく、自由市場で売られている個性的な衣服を選んだのです。その結果国営企業の倉庫には衣服が山と貯まりました。
 ここに中国のような「社会主義」が主張する「公平」と言う中身が極めてレベルの低い、押しつけのものであることが解ります。

 中国と違うのは、「敵階級」との闘いを強調した30年間が無かったことでしょうか。
 中国は建国後の30年間、そのことで内乱のような状態でした。
 インターネットの辞書「ウイキペディア」には朝日新聞がその当時の中国の実情を知りながら報道しなかったと書いています。
 
 また、両国とも社会主義の基本的欠陥である個人の人権を如何に守るかについてここでは発言されていません。権力者が善であるとういう(あり得ない)前提で議論が進められています。
 しかし現実はそのような国家も存在し続けるでしょう。
 とすれば、国際的な繋がり、人間的な、人権と民主主義を内容とする関係が拡大し、世界は向上するのでしょう。