中国法院体制の泥沼
(概略)

05/03/24 南方週末 秋風
 赫勧松と言う弁護士が鉄道車内食堂で食事をしたとき、金を払ったが領収書を貰えなかった。そこで北京鉄道管理局の法院に提訴した。中国では法治国家を目ざし、90年に鉄道関係の諸事件ではこの法院に訴えることが決められている。

 だが法廷が始まると、弁護士がまだ席に着かない中に裁判官は休廷を宣言、そして7分後には彼は強制的に法廷から追い出された。
 つまり領収書の発行は不要とのことである。
 鉄道法院は刑事・民事・経済等の紛糾事件全てを扱うことが出来る。
 そして業務上は鉄道法院は北京最高裁判所の下級機関である。だが、行政機構の上では鉄道法院は鉄道管理局のみに従うことになっている。鉄道法院の人事・財政は鉄道管理局で管理している。
 つまり、この事件は弁護士の要求を鉄道管理局の要求に従って鉄道法院が裁決をしたことになる。 

企業内法院は国家の法院に従属しないのか。鉄道法院は専門法院と称されている。中国には軍事法院、海事法院、林業法院、鉱山法院、石油法院、農業開墾法院などがある。
 それらはそれぞれの部門の管理局で人事・財政が保障されている。これらほぼ全ての部門が企業化されている今日、この制度は正しいものだろうか。
 法治国家を目指すには先ず司法の独立が必要ではないだろうか。そのこと無しに企業運営も正当なものになれるだろうか。

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 訳者注:
何故鉄道局が領収書を発行しないか、それは脱税のためです。新中国が建設されたときは、各経営体(ソビエト)の中で全てが完結していました。その中で賃金や食券から住宅まで支給していました。中央には収益の一部を納めていました。
ただし計画経済であったのであまりにも経済生産が低く、生活が貧しく、社会保障の医療や義務教育などが実現できないままでした。
文革が無くても計画経済のままでは1980年代に社会主義中国は地上から消滅していたと言われています。

 法律が無くても敵階級が無くなれば国家は理想社会になると考えられ、階級闘争に力を入れました。しかしそれは常に上から管理されるだけで、国民の平等や基本的人権などが完全に無視されました。それは現在も強く残っており、私がこの5年間翻訳してきたどの物語も個人の人権を党や国家権力が無視した悲しい社会であることを代言しています。
 そして改革解放後、1992年、各企業は中央に税金を送ることになり、そのために必要な法律が現在作成されています。
 しかしこの例のように司法の独立がないので税金逃れが堂々とまかり通っています。

中国に進出している外国企業が地元党委員会のご機嫌を取らないと税率が上がったりします。
 司法の独立をすれば、党や国家機関が最初に法廷に立たされるでしょう。

 でもこんな当りまえのことがついに建国後55年経って新聞に登場するようになりました。毛沢東が聞いたら腰を抜かすのではないでしょうか。
 ああ、無情!