歴史上の暗部 蒋介石の巨大な財産


05/10/09 文学城 

 国民党の高級官吏の私有財産の状況は巷でも噂がいろいろあるが、その巨大さは当時の政治経済を支配していたことと深い関係にある。

 1949年までの国民党天下の時代でさえ、国民の中に彼等に対して多すぎる財産への不満は充分に国中に浸透していた。

 1934年の「江南正報」は国民党元老の蔡元培の話として、”蒋介石1300万元、宋美麗3500万元、宋子分3500万元,孔祥シ800万元、孫科4000万元、張静江3000万元、等々で彼等の財産は上海の外国銀行に預けられている。その合計は5億元に上る。その実態は名義換えなどがあり詳細は掴めない。”と暴露した。

 筆者はアメリカのスタンフォード大学に所蔵されている書籍の中から、1939年の日付けで上海銀行に預けられている次の項目を発見した。
 
 蒋介石 6639万元、宋美麗 3094万元、宋子文5230万元、孔祥シ5214万元、宋慶齢1200万元、陳立夫 2400万元、 宋子良 550万元、、、、。

 これらの人物は全て国民党政府の高級官僚である。当時日本も国民党の財力を懸命に調査していたが、その実態は掴めなかったようだ。

1939年の当時、中国国内の銀行預金の総額は605900万元、政府予算収入が74000万元、上記の上海外国銀行に預けている国民党幹部18人の預金総額は国内総体の9%に相当し、政府予算の77%で、正に国内に敵集団を作っていたと言える。

 彼等は上海以外にも各地の外国銀行にたんまりと預けていたと思われる。

 蒋介石夫婦の預金総額は9733万元で国内預金総額の1.6%を占め、政府予算の13%に当たる。

 蒋・宋・孔・陳の4大家族だけでその預金総額は23777万元で国内預金総額の3.9%を占める。これは政府予算の32%で、彼等4大家族は国民党の軍事大権を握ると同時に財産大権を握っていた。

 1933年当時の公務員の賃金は部長以上でも800元で、これから計算すると宋子良の収入は部長の573年分に相当する。
 
 国民党は1927年に政権に付いた。それから1939年の12年間に合法・非法のあらゆる手段を弄して巨大な資産を築き上げた。

 当時は4大家族の”おめもり”を期待して、莫大な賄賂が届けられていた。
 一般人の生活水準は極めて低い当時に政府高官には豪奢な生活が楽しむことが出来たのである。そしてそこへ近づくために、汚職や賄賂や腐敗が国民党の中に蔓延し、それは日本を追い出した後も静まることはなかった。 
 国民党の短期存命は此処に大きな原因があったことが推測できる。

1949年に国民党が海外へ飛散したが、高級公務員は定期的収入無しに彼等は悠々と生活できたようだ。
 「民国史」の研究が進むと、これら巨大な私有財産についても確実に明らかになって行くだろう。

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訳者注:
 国民党時代、中国には蒋・宋・孔・陳の4大家族以外人間ではない、と言う言葉が流行りました。

 角川文庫の「宋家の3姉妹」には、宋美麗が抗日のためにアメリカへ義捐金募集に渡航し、そこで得た国家を動かす大金を私有する話が出てきます。
 そして中国大陸には今でも国民党とその4大家族に対する恨みは消えていないと思われます。
 私が台湾にいた1995年の当時、大企業は全て国民党が握っていました。台北の宋美麗の財産があるというホテルで火災が起きたとき、職場の台湾人達は「万歳」を叫びました。

 大陸も台湾も国民党には大きな恨みを持っている点では同じでしょう。

 ところが、今年になって中国政府は国民党幹部を盛んに大陸へ招請し各地で大歓迎会を催しています。それは現与党の独立志向の民進党を倒すためです。
 この辺り、日本人には思いつかない手段を選ばない戦略です。
 
 では全国民の期待を担って生まれた現在の中国政府が、平和や安定を創らず、腐敗においても国民党に劣らないなかで、何故50年の権力の地位にあるか、これは又別途研究の必要がある問題でしょう。