珍しい民間芸術


南方週末  05/08/26 何宇翔

 


数メートルの高さで一人の子供が生きた鴨を掴み、その上に娘が立っている。どこから見ても他の支持物はない。だがその格好で街の中を歩く。これが現在も湖南省桃江県馬跡塘村に伝わる民間奇術だ。

 現地では”馬跡塘過事”と呼んでいる。
 これは各種の高所奇術で約3メートルの高さの鉄棒を組み、その上で劇を演じたりする。
 演じるのは普通男女の子供達である。化粧を着けて滑稽な仕草をしたり、お面を着けたり、活発に動き、それはまた可愛くもある。

 このような演出は、一番盛んなのがお正月だが、普段でもお祝いなどには出演され、慶事の気分を盛り上げる。これが演じられるときは、遠くから見物客が訪れる。この奇術は独特の形式で、今回はその歴史的由来を追ってみた。

 1853年、「太平軍」の洪秀全が桃江馬跡塘近辺で当時の清朝政府軍を大敗させた。その勝利を祝して現地の人が高台で演劇を催した。題名は「天王」であった。これが民間奇術の出発であった。1864年太平天国が大敗し、「首都、天京」が陥落した。太平軍の馬跡塘出身の兵士が故郷へこの劇を持ち帰り、改良を加え発展させた。やがて民間奇術として街頭で演じられ、主として慶事に演じられるようになった。
 これが家庭内で代々世襲的に保存され、伝えられている。
 1927年、農村革命で「農民会設立」の動きがあり、この祝賀行事で「許仙湖に遊ぶ」と言う演目で、高台の上で娘がカサの上で跳ねたり舞ったりした。これが観衆の手に汗を握らせ、大喝采を浴びた。
 これが現在まで延々と持続して保存され、演目も増えている。

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訳者注:
 太平天国 1851年〜1864年、洪秀全によって指導されたキリスト教天国。
 当時清朝政府はイギリスに阿片を大量に買わされ、また古い習慣がはびこり 社会は腐敗と貧困に満ちていた。
 フランス元軍人が志願してこの軍隊を指揮。
 その支配下では、男女の平等を実現し、纏足などの各種悪習が廃止され、若い女性が馬に乗って街を闊歩する姿が勇壮で,西洋人がこれを見て中国に民主的・開放的な気分が現れたと驚いた。(杭州記念館)

 傘や鳩の上で何故娘が踊れるのでしょうか?