”虎” 資源の貿易解禁か


05/07/28 南方週末  張可佳

 現在中国政府は保存された虎の
骨或いは皮などを輸出することに
許可を出すらしい、という噂が伝
わっている。
 第1年目は30頭の虎の骨を使用
した薬品に許可を出すらしい。

 国家稀少動植物管理室の話では、
現在中国には約3000頭の虎が飼
われている。それらは瀕死の動植物」
管理国際規約によって、これまでは
それらを使った貿易が禁止されてきた。
 しかし中国内の多くの動物園ではそ
れらを冷凍管理し保存している。今そ
れらの使用を許可するのだろうか。

  死んだ虎を使って生きた虎に役立てる

 黒竜江省の横道河動物園では1993年の禁止令以来既に6ないし70頭の虎の骨を冷凍保存している。それらはいつでも使用することが出来る。
 中国では多くの虎の骨、虎の皮、虎の内臓などを保存してきている。虎は一般的に養うことが比較的簡単で虎を飼っている企業はそれらの使用要求を以前から出していた。

 桂林のある動物園はかって1000頭の虎を飼うと宣言した。ところが虎は大食で1頭に1食で数10元かかる。そこでその企業は100頭くらいまで増やしたところで音を上げた。
 
 野生動物保護の中国科学院研究所の汪先生の話では、一つの動物園でそんなに大量の虎を飼うことは不可能でしょう、という。管理が最も行き届いている北京動物園でも数頭飼うので精一杯だという。
 他の専門家の話によると上記のような虎を飼うことを目的の動物園の真の目的は「虎貿易」で儲けることにあると指摘している。

 また他の専門家は「”虎酒”は本当に病気に良く効きます。かってオランダの友達が全身痛みが走り医者がさじを投げたとき、”虎酒”を身体になすりつけたら直ぐに快癒した」、と述べている。
 国際規約でも虎が2代・3代と子孫が増えれば登録後”虎の使用”を許可している。
 
 有る林業の専門家の話によると、中国で虎を大量に狩り始めたのは1950,60年代である。1956年の1年間だけで900頭の虎皮が売買された。それ以降大量の森林が伐採され虎の生息地が激減した。
 この林業専門家の話では、「虎にとって最も良いことは虎が住める地帯を保護することだ。それが出来れば少しは売買に使っても良いかも」と言っている。

   貿易販売は良いことか

 1973年国際協約が決められたとき、鯨・象・虎・犀などの動物はその後25年以内に絶滅と考えられていた。それを国際協約によって少しでも先延ばしにしようとしたのである。
 実際には隠れて貿易をする人が居るわけで、それらの人達はこの国際協約を「反貿易協約」と呼んでいる、という。
 02年、国際協約委員会は一つの決議を決めた。
「アジア大陸では禁止令を破って密貿易をする者が絶えず稀少動物の危機が迫っている。加盟各国は協約完全実施に力を出すべきである」とした。
中国以外の協約関係者の話では、虎骨を保存している国家は、その量を斬減し最終的には所有を禁止すべきである、と言っている。
 米国の経済学家のPaul氏とAnges氏は「そのために国家が金を出せ」と主張している。
 アフリカのガーナ政府は動物保護の観点から毎年保護区を購入して拡大し、81000ヘクタールを自然保護区とした。

 だが地球全体を買い取ることは出来ない。1991年、WWFは薬品の使用のため、犀の角に変わってカモシカの角を使用することを許可した。虎の骨の代わりに豹の骨を使うことも許可した。だがそれらは共に一時的措置で、どの品種も絶滅が危惧されている。

  国内の虎生息の実態

 現在地球全体での生息数は数千頭と見られ、数十年内に絶滅と考えられている。中国はその中でも虎の生息が多い。だが近年経済が発達し虎の生息地が急速に減少し、虎の薬品としての要求も拡大している。1916年に既に中国の新彊では絶滅を宣言している。河南省と東北の虎も急速に減少している。
 河南省は既に回復の見込みがないとされている。
 河南省国家林業局は01年から02年に掛けて8ヶ月間の虎探索を実施したが、1頭の姿も発見できなかった。
 東北地帯はロシアと国境を接しているので、近く中国・ロシア・モンゴル・朝鮮の各国と協力して「東北シベリア虎の道」を作るべく計画中である。

このたび幾つかの虎骨を所有している企業がその利用許可を政府に上申した。
 彼等は「死んだ虎の骨を売って、生きた虎の保存に役立てたい」と言っている。
 この10年と少しの間禁止されてきた”虎酒”や虎骨膏薬の製造業者は虎の骨購入の許阿を求めている。
 政府管理部門はこの話を一挙両得の良い話として歓迎している。
 国務院は03年5月、稀少動物の販売を「厳格に管理する」態度でやってきた。
 私的取引や盗難などに目を光らせながら、部分的に必要な薬品市場には提供をしてきた。
 国際機関の監視員は中国のこの態度に感謝し高い評価を与えると言う。
 だが”虎”は世界的な稀少動物である。今此処で貿易の取引きを許可して良いかどうか、大いに議論の必要なところだろう。

 国際動物保護官員の ガロイ氏は「地球が一体化された現在、もし稀少動物の販売が宣伝され、その値が跳ね上がったとき、それは国際的に投機の対象となり、世界中で資金が動き、より多くの動物を求める傾向が続くだろう」と言う。
例えば、印度で虎骨の高価なことが報道されると、密猟が始まり、国家自然公園の47頭の虎が直ぐに18頭に減ってしまった。 今年3月のイギリスの新聞によると、印度が国家を上げて調査したところ、350ヘクタールの密林の中に1頭の姿も見つけることが出来なかった。
 1993年には、印度全体で3750頭が居たが、現在3000頭以下と見られている。 印度の新聞によるとこの10年以内で密猟された虎について、その販売で得た利益は約90億ルピー(約270億円)と見られている。
 1頭の虎は約600万ルピー、その皮が100万ルピーという。
 
 記者が調べたところ上記の虎骨等の販売は中国のチベットを経由して中国内に持ち込まれていることが解かっている。
 03年10月9日の当地の税関は半世紀に亘って活動してきた稀少動物密輸業者を逮捕した。彼等は虎や豹などの1200以上の「皮」を販売し暴利を得ていた。
 WWF インドネシア の調査によると1998年から02年の間に約50頭のスマトラ虎が密猟されている。現在スマトラ島原始林には500頭のみ生存しているという。
 インドネシア国内にもそれら虎や豹の皮・骨等の取引市場が有るという。
 インドネシアのジャワやバリ等の虎は20世紀40年代から80年代の間に絶滅したとされている。
 虎の保存が急速に注目を浴びているのは、虎が生物の連鎖の中で、ひとたび絶滅すると回復が不可能と見られているからである。
 
 国際野生動稙物保護学会のアジア担当のピーター・サラー氏によると「虎は象の命運と似ている。象牙の取引が行われて、それが市場を形成し、象の密猟を引き起こした。もしここで虎骨の薬用利用を許可すれば、虎の密猟が必ず出現するだろう」と言う。
 また「どこかの国が一度虎骨の利用を許可すれば、必ずその暴利を求めてやみ市場が出現する。それは世界中のどこかで現れる」という。
 このように今世界規模の専門家が一致して虎の資源利用について警告をし慎重になるように各国に呼びかけている。
 
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 訳者注: 中国で有名なのは”二胡”ですがこれの皮が稀少動物を使っていて国外持ち出しは禁止されています。
 でも実際はどうしてか日本で持っている人が居ます。あの無愛想な威張りきった公務員をどう買収したのでしょうか。
 中国社会主義は金さえ有れば何でも可能と聞いていますから、何とかなるのでしょう。

 虎が激減したのが1950年代というのも驚きです。中国の建国が1949年です。建国後の5年と言えば、中国は毛沢東指示による「階級闘争」真っ最中です。中国全体が地区委員会で管理されていて、何時自分が「敵階級」に成るなるかも知れず人々は俯いて生きていた時代です。しかし”虎を狩る”と言うことで儲けた人も大量にいたわけで、中国人自身でさえ信じられない話でしょう。
 さらに20年ほど下った時代に、農民は党に隠れて農作物を耕作します。その時見つかったときの救済対策に「血判」を書いています。植物採集でさえこのような国家でどうして狩猟が出来たのでしょうか。
 
 私が杭州に居たときの新聞では、河南省の虎が動物園の入り口で飼い慣らされていて、入園者と列んで写真を撮っているところがありました。完全に野生を失っている様子でした。
そしてこの記事は虎の骨の利用について政府に慎重にやるよう求めています。地球規模の問題であり、「死んだ虎を使って生きた虎に役立てる」と言う上手い言葉に載らないようお願いしたいものです