中国の車社会


05/04/21 南方週末 顧海兵

 10年前、中国で出現するかもしれない「車社会」について、賛否両面から激しく論じられた。
 その後の10年、明らかに急速に車の量が増えている。今後とも1%前後で車両が増えれば、何時かは、13億の人口の半分が所有することになるだろう。2人に1台の所有は米国の水準で、中国にあてはめると7億台の車が有ることになる。3人に1台の所有なら4億台でこれは日本の水準である。
  だがその時、空気汚染はどうなっているだろうか。騒音、運転手の病気、交通事故、等を考えると、もう考えただけで耐えられない。
 
 中国の現在のエネルギー消費は19.7億トンで、その内原油が2.9億トン、さらにその内輸入が1億トンである。世界第2の輸入国である。石油消費の半分が車である。

もし米国水準に追いつけば、7億台の車で個人使用の車だけで3.5億トンの石油消費となる。それは現在の全世界消費に等しい。
日本の水準(3人に1台)に達するとすると、4億台の車で、現在の日本全体の車の2倍の台数となる。その時の石油消費量は1.3億トンである。
 少し現実的に考えて30年後、現在の石油使用量が2倍になるとすると、車は10人に1台の台数で、これは現在の世界平均である。この時既に世界の石油供給は需要に追いつかない。
 
 ある人の計算では北京は現在で収容可能な台数は200万台、これが2020年に500万台になると言う。だが真面目に考えてこのまま台数が増えることを許して好いのだろうか。
 このままその台数が全国平均に蔓延するまで、量の拡大を許して好いのだろうか。
 現在の北京の人口は1500万人。将来の人口は2000万人になると言われている。そして車が1000万台。そのように街全体が車だらけでもがやはり北京と呼べるだろうか。
 これまで世界は比較的少数の人が大量の車を有し、世界のエネルギーを消費してきた。中国もその鉄を踏んでよいのか。

車の使い方についてはいろいろある筈だ。例えば発達した国家のギリシャにはイダラ島というのがあり、それはギリシャの主要な貿易港だが、毎日数百台の商船が出入りしている。だが未だに100年前の姿を維持している。その島には車がなく、車の変わりにロバが使われている。ここから中国も何か学べないだろうか。

  中国は現在の人口が13億人。これが16億人にまで増え、その頃の中国は発展途上国と考えられている。
 そこへ行く途中、各種困難と巡り会うだろうが、13億の人にとって受け入れられる選択をして貰いたいものだ。個人と社会と環境との合理性を模索すべきである。

 これは一般庶民が車を持つことを制限しろと言うのではない。車で山に登る、これは本当に必要だろうか。交通渋滞が一層激しくなり、そうして初めて経済が発展するというものではない。先ず汚染が許されて、その後に対策を考えるというのは科学的ではない。

 現在、我々は壺の中にいる蛙のようなものだ。壺の中の水の温度が一定に上がる前までは、何の危険も感じない。一定温度になって初めて身の危険を知るというものだ。
 筆者は北京の街角に立ち呼吸をすると、最近ますます空気の汚れを感じる。街の温度も上がっているのを感じる。ますます多くの交通事故を目撃する。人間関係も一層緊張したものに感じる。
 (筆者は中国人民大学教授)


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 訳者注:
 中国は今、産業発展のために環境を全く無視しているように見えます。各都市の空気汚染は恐ろしいものです。
 
 4月の記事の中では工場勤務の農村出の女性が双頭子の出産をしました。工場の汚染が原因と考えられています。
 そしてここに論じられている心配は、13億人、または16億人が活動する責任というものが巨大であることを意味しています。地球規模です。(全世界の人口は約60億人)
 車の交通ルールを無視して走る様も恐ろしい感じがしました。
でもとにかく、この問題は全世界共通の人類の問題でしょう。それが今、目の前に見えてきているわけです。
 (勿論農民の解放の方が大事で急を要するけど)