驚異的貿易依存度

05/06/30 南方週末 栄明

 2001年に世界貿易組織に加入して以来中国の対外貿易依存度は上昇速度を速め、総生産(GDP)の70%を占めている。
 また中国が地球全体と関係を深め一体化しつつあることを。世界と中国が相互依存する関係は強まる一方で、中国商品の取引国家が限られていること、また産業資源の多くは輸入せざるを得ないことなど、多くの問題が露出している。 

 04年の貿易総額は世界で第3となっている。輸出総額は1兆米ドル。
 02年度の国家全体の貿易依存度は51%、03年度は60.2%、04年度は70%程度となっている。
 
 貿易依存度とはどのようなものかを知る一つの手だては、01年の米国・日本・印度・ドイツなどがほぼ14%から20%以内となっている。中国が改革開放を唱えた80年代初めは15%程度であった。

訳注:日本のGDPが約500兆円でその内貿易総額は約50兆円程度。

 これは地球全体と中国が一体化されていること、地球上のどの地点の変動も中国へ影響が来ること、等を示している。
 中国の輸出は欧米と日本が主で、その他香港・東南アジアが続き、新興国への輸出は極めてわずかだ。日本・米・欧州への輸出額は全体の62%、その内香港経由のものも含めると、米国だけで全体の40%となる。
 貿易相手国を廣く散らすことで、他国の影響を受けないようにするには、まだ一方的に偏っていると言える

 中国の服飾と靴製造産業は外国依存度が71%、DVDは84%、バイクは63%、カメラ56%、冷蔵庫47%、テレビ46%、空調機42%で、これらは特に逆に国内での販売が低いことを示している。そしてこれらの販売先が地球的に広がれば相手国の突然の変動などには影響されない安定を期待できる。
 また労働密度集約型産業が輸出に占める割合が非情に高く、質的・技術的向上が期待されている。
 貿易の内容では、一般の取引よりも加工貿易が断然大きくまた増加している。部品や資源を輸入し、加工して輸出する、この形が断然多い。この加工貿易が就業や消費等の国民生活に大きく影響し、今後の社会の安定に密接に結びついている。
 その加工過程では、中国は初級の段階を担当している。生産に当たっては原料の輸入を外国に頼っており、エネルギー大量消費の問題も生じている。

 国家安全上の問題として、輸出入共に戦略資源を外国に依存している度合が問題となる。
 03年度の鋼材・酸化アルミ・鉄鉱石それぞれの輸入依存度は51%、22.6%、32.9%である。石油が35%程度。石油のこの数字は2020年度には60%に膨らむと考えられている。
 科学技術の遅れが、資本と技術と高級加工品の輸入の依存度を高めていることも問題だ。これらは国家の安全に直接影響する。
 貿易額に比べGDPが相対的に小さいことが、現在問題になっている「元」の切り上げを複雑困難にしている。

 さて中国の輸出入依存度が極めて大きく、世界との繋がりに頼っていること、その影響を受けやすいことなど、これは時代の流れというものか。
 
 特に米・日・欧州などと中国の経済は密接に繋がってしまった。特に米国とはその国の盛衰が直接に我が国に影響してくるだろう。
 米国への依存度は、97年が5.4%、03年が8.95%である。これが各種の貿易摩擦を生じさせている。
 特に輸出入相互平衡への要求と紡績関係の障壁を下げることなど、(これは欧州からも強い要求がある)関税を完全撤廃する要求が米国からされている。これらの要求を如何に理性的に対処していくか、これが今中国当局にその能力が試されている問題点だ。

 輸入が拡大している現状で、その内容が天然資源が増加の一途で、総量も急速に拡大していることは、外国の影響を受けやすいことを意味し、どこかの国で突発的に事件が発生すれば、直接に中国に影響が現れることを示している。 
 
 中国の貿易輸出額が増大しているのは国内としては良いことだが、エネルギー資源や天然資源の急速巨大な輸入がそれらの価格の急上昇をもたらしていて、他国から「中国脅威論」が取りざたされるようになっている。
 中国から出て行く完成品のほとんどは欧米や日本へ向けてのもので、それらの中国での生産は、該当国と中国との合弁または該当国の企業が中国で生産したものが多い。従って価格上昇は中国だけの責任にするのは不当だ。

 紡績服装、靴、玩具などは労働密集型産業で、これが中国の輸出を支えている。
しかし世界市場ではこれらは既に過剰気味で、中国はこれらに変わる産業を育てる必要に迫られている。しかし中国の第3次産業があまり育っていない。国内での購買力が弱く市場が狭い。 
 GDPのなかでこの分野の比重が高まれば、貿易依存度の指標も下がることになる。第3次産業育成の必要性は当面の大きな目標になるだろう。
 
 中国企業への税制優遇策、銀行貸出し優遇策、これらが労働密集型産業構造を変革し、貿易摩擦を回避する大きな道を開き、貿易依存の現状の中国が、外国依存型国家となることを防ぐ。
 貿易依存に一方的に頼る政策を変革し、合理的で将来性のあるものに、貿易大国から貿易強国へ変えていく必要がある。

 今は世界全体が一体化されつつあり、この環境の中で中国の経済力を高めていくことが重要だ。その中身は国内国外両方で実現する必要がある。どちらか一方だけを重視することは出来ない。国外への貿易高を維持しつつも、政策的に国内の賃金水準を上げ、国民収入を高め、住民の生活改善の期待に応える、そして内需を増やす。
 
 現在中国が海外へ投資している額は5000億元を超えるが、その中に技術が含まれているのは40%で、60%強が規模の小さい、技術レベルの低いものだ。国内の労働密集型産業も飽和にきている。そのためにそこで造り出されたものは海外へ輸出せざるを得ない。
そのため中国の労働密集型商品が世界にあふれる現象が起きている。それは国家として望ましいものではなく、ドル交換比率や各種金融政策などの実施に大きな困難・複雑さをもたらしている。この部分への改善に大きな努力が必要だろう。
 (著者は 中国常駐世界貿易組織代表団) 
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 訳者注:
 この記事は客観的事実を述べ中国の貿易に関して国家として健全なあり方の原則を述べその将来を国民全体として考慮して欲しい、と言う希望で書かれています。このような原稿が新聞に載ること自体、社会主義国家では異例です。建国後今ままでほとんど無かったでしょう。新聞は党の宣伝の場であり、党が国民を教育する場でした。
「人民日報」を中国人がほとんど読まなくなっている理由がそこにあるのでしょう。(しかしホテルや公共の場には必ず置いてありますが)
 この辺が社会主義では民主主義が育たない理由の一つでしょう。
 前回掲載した「國學院」設置の記事も、この南方週末が掲載しました。新しい中国の正常な国家建設をこの新聞が切り開いているような気がします。

 他方この記事から日本の問題も考えさせられます。
 高度成長期は米国への輸出依存度が強く、誰もがアメリカ無しには日本は成り立たないなどと言っていた時代がありました。
 それが今も政治の世界では続いているようで米国一辺倒の姿が見られます。(この数年対米貿易が減っているようですが)
 健全な社会として、本来如何にあるべきか、その原則を常に念頭に置いて、貿易も生産も「金儲けだけに流されない」ことがその国の評価を高め信頼を形作るのでしょう。

 ドイツ(西)ではヒットラーのような独裁者の再現を阻止するために、法的に大企業の市場占有率を押さえ、貿易の1国依存度の偏りを禁じていると聞いています。
 日本も常に健全な原則を持ち、「金儲け主義」と国際的に批判されないようにしたいものです。