国家へ薬価抑制の直訴

 04/02/05 南方週末 記者 包軍

青年教師、劉飛躍が中心となって543名の署名を集め、党中央に医薬行政上に長期間存在する中国では宿痾となっている問題の解決を訴えた。
今年の1月14日、人々が忙しく正月を迎える準備をしている頃、湖北省の随州の一人の青年教師が、543名の署名を集め公開の形で国家発展改革委員会・衛生部・国家食品薬品監督管理局・党中央規律検査委員会などへ、中国に長期存在し続けている「べらぼうに高い薬品」について、これらの問題を根治するように請願書を送った。
 
党中央規律委員会研究室は最近中国に存在する「重大な5大腐敗」について発表したが、医薬品の「薬価吊り上げ」は上から3番目に位置する。
 長年にわたって中国ではこの薬価吊り上げへの大衆の不満は巷に充満していると言える。だが中国でこのように多くの署名を集め国家に対し直訴するなどの行為は全く驚天動地の行為である。
 劉飛躍は何故このような行動に出たのか、記者は1月26日劉飛躍氏に採訪した。

 記者:今回の行為のそもそもの行動の発端はどこにありますか、またどのようにして人々に署名の賛同者を集めたのですか。

 劉:病気になれば金がかかる、これは誰でもが頭の痛い問題です。誰もが現在の医薬行政に不満を持っています。その改善を求める人々の声は「渇望」と言える状態です。私1人の嘆願では、やはり信用度にも問題があると考え、私は随州の公開の場所に「直訴」の原案を書き、賛同者を募る張り紙を出しました。
 賛同者の中には労働者や農民や学生や公務員、あるいは知識人と言われる人達などが居ます。彼らと私は一面識もありません。

 記者:あなたの直訴文の中に「医者はむやみに薬を提供し、高価な薬に偏り、賄賂を請求し、その結果医者達の中には年収が数十万元を超える人達が居る。逆に一度病気に罹かれば、もう貧窮がすぐに差し迫る状態に追い込まれる。病人を抱える家庭はどこも負債の山を抱える」、と書いています。これは誰かの姿を見て書いたものですか。
 
劉:他人からの聞いたものもあります。しかし私の妻が結核に罹ったことが直接の理由です。私の妻は結婚して、半年後、1995年、結核だと言われました。
 それから1998年までの間にいろいろな病院に行き、無数の薬を買い、、無数のお金を使いました。合計約5万元使いました。それらのお金は親戚から借りました。だが妻の病気は直っていません。私たち二人が働いて貯めた金は全部使い切りました。その間、新しい服を買ったことはありません。新しい家具や電気製品を買ったこともありません。だが、借金だけは山のように貯まりました。
病気になって以来、医者には食事をご馳走し、魚を届け、賄賂を送りました。
 私は病院で、全く貧乏そのものの貧しい服を着た農民が自分の子供を救うために必死になって医者に30元を渡すのを見ました。その医者は堂々とその金を受け取りました。その慣れきった態度を見て、これが現代の医者だと実感しました。
 また署名した人の話ですが、ある病院で重病人の家族が賄賂を送る金がないのを知って医者が治療を止め、すぐにその人は亡くなったという話を聞きました。
 またある人は目眩がするので病院へ行ったところ、心電図を撮るように言われ、たったそれだけで、半月分の賃金が飛んでしまったのです。
 またある人は、隣人が貧しかったのに、その叔父が一つの病院の医院長になったとたん、家も車も新調され、また薬局も経営しています。
 また多くの人が私に訴えました。それは、医者は好んで漢方薬をどんどん出し、それは病気には全く関係ないものです。飲めば甘いだけです。私の妻が病気になったときも、医者は「アミノ酸」系の補助薬をどっさりと出しました。これは結核とは何の関係もありません。
 
記者:薬価がべらぼうに高いというその評価を確かなものにするために、あなたは一つの薬品の卸値と小売値の極端な差額を例として列挙しています。この調査はあなた自身がしたものですか。

 劉:それは権威のあるメディアが公開して発表したものです。
 例えば、貴州経済堂製薬工場が出している「塩酸二甲」という薬品の工場出荷価格は5元です。政府の公認価格は46.8元です。
この調査は党中央の「人民日報」が02年9月27日発表したものの一部です。
 山西恒大製薬有限会社が製造した「止血注射液」は卸が2.1元です。小売りでは14.5元です。これは「新華社03年11月」の記事に載ったものです。
 訳注:新華社 中国国営出版社
このようにして調査したものを、現行の「国家薬品最高価格指定策」への改善を願って書き出しました。
 薬品の高額売り出しは決して秘密ではなく、前記国家の薬価指定策の中に「バーゲンセール店の小売価格は値引きを45%までとする。それでも利益は6ないし10%ある」と書かれています。これは「バーゲンセール店」の出現でマスコミが暴露したものです。
 これらは医薬行政の腐敗を示し、それによって病気は高くつくこと、病気になったら看病しきれないこと、と言う考えを一般大衆に植え付けています。大衆は不合理な医療体制を諦めていて、それを改革する可能性を考える人はいません。
 
 記者:あなたはどうして国家に対し「公開書」を提出し、長年存在し続けた医療行政の疲弊を改革しようと希望したわけですが、それは本当に効果があると考えますか。

 劉:私自身が薬価吊り上げの体験者で、犠牲者です。私は自分のこと以外にも、たくさんの人達から薬価吊り上げのために生命と健康を維持できない例を数多く見聞きしてきました。国民の中に現行政への強烈な不満が満ちています。
 国家の存亡はそこに住む人間に責任があります。現在抱えている中国のこの痛烈な苦しみに、国民が意見を表明することができません。表明する権利がないのです。政府の担当部門が良識を持って行動することに期待するしかありません。
 もし政府当局が国民の訴えを聞く耳持たず、その改善が不可能なら、問題は永遠に続き、そして人々の不満が高まり、改善を求める人の数も増えるでしょう。何時かは改善されるときが必ず来るでしょう。