時の人 郭光允、 孫志剛
1. 郭光允  04/01/01 南方週末 記者 櫨栄

 昨年8月9日、61歳の河北省石家庄の元党幹部の「郭光允」氏の家の電話は鳴り止まなかった。彼は反腐敗の闘いで8年の獄中生活を送り、当日釈放されたときのことである。 どの電話も「郭さん、おめでとう。貴男は男の中の男だ。まさに誇り高き漢人だ」と褒め称えた。彼の住む地域では爆竹を鳴らし、酒を飲んで祝った。
 彼の妻は記者の質問に泣きじゃくりながら、「あの人の人生は本当に茨だらけでした」と語る。
 8年の獄中生活で彼は、「心臓病、高血圧、糖尿病」になった。
 彼は1973年の頃から反幹部の闘いをしてきた。73年当時もそのため2年間の「労働改造教育所」に入れられ、自由の身を奪われた。彼が省の最高幹部「程維高」の腐敗を警告し続け1995年省のトップの腐敗を書き、党中央に匿名で手紙を送った。それがどうしてか、省トップの程維高の手に入った。程の疑いの目はすぐ郭さんに注ぎ逮捕された。独房での拷問が続き、3ヶ月の入浴を禁じられたとき、妻が面会に行くと、靴下が足にこびりついていて、湯で洗い落とすのが大変だった。省全体が敵となって、家族に口をきく人はいなくなった。

 程の周囲の4名の党書記が権力を利用しての莫大な財産形成で先ず逮捕され執行猶予付きの死刑となった。そしてついにその月(03/08/09)、程も腐敗を理由に逮捕され、死刑となった。
 そして郭さんが自由の身となったのだ。この間8年が過ぎ去っている。

省のトップの程と郭さんは同じ大学出身だと言うことで、程は彼を取り立てようと努めた。しかし程の豪華な自宅の建設を依頼されたときから郭さんはその好意を断っている。
それらの依頼工事は全て国家の金を使って私用に回すものだった。それらの仕事は他の党書記が程の機嫌取りとして完成させている。
 どの工事も郭さんは建設部門に問題有りとして警告書を送ったが、受け取った部門はすぐに廃棄処分している。
 腐臭ふんぷんする李山林という党書記が程の推薦で副市長になる選挙が人民大会で行われたとき、郭さんは大胆にも反対意見を述べ、副市長は他の人に決まった。こんなことで程省長の疑いを強く受ける身となった。

郭さんが匿名の手紙を書き中央に送ったとき、程氏はそれを手にして、省幹部を集めた席上「犯人は徹底的に探す」と恫喝し、見る者を恐怖に震えさせた。
 郭さんが逮捕されたのは、市政府へ来るように言われたときで、それは騙しであった。看守所の職員は彼を政治犯として独房に入れ、高熱が3週間出たときも、上着を脱げと恫喝した。
 やがて程の周囲の党書記の腐敗が表に出、99年、党中央委の視察があり、そのとき獄中の郭さんのことが取りざたされ、追求が始まり、程の国家資産の私有化が暴露されるようになった。

今、郭さんは人々に「英雄」と呼ばれているが、もし程氏の誘いに乗っていれば、今頃罪の身になっていることを想い、複雑な気持ちだという。
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 訳者注:
 昨年中国では大きな民主化が生まれています。おそらく歴史に残る大事件ではないでしょうか。
 春には「黄色CD事件」として逮捕された新婚夫婦の事件があり、夫は獄中で精神異常にさせられました。この事件報道が波紋を広げ、ついに社会主義中国としては初めて公安が折れて弁償することになったことは昨年お知らせしました。
 そして第2がここに書かれた郭さんの事件だそうです。

2. 孫志剛 

 第3番目が、私の見るところでは次の事件で、昨年最大の民主化のようです。
 日本の朝日新聞始め世界の報道に登場した事件、それは「孫志剛」という人です。
 彼は住民証を携帯しないため公安に逮捕され、獄中で殴打され死亡しました。しかし彼が大学を出ていたため、同情の声が広がり、多くの学者が声明を発表したため、なんと、ついに国務院が収容所を廃止すると声明しました。
 次は「南方週末」とcn.yahoo.com から得た情報を簡約したものです。
 孫氏は農民出身です。が、大学を出て広州の企業に就職したので、仮住民証を自宅には持っていました。逮捕されたのは昨年、03/03/17 です。(以下は裁判記録による)

 当日の夜、かれは寝る前に空腹を感じ外へ出てパンを買い、近くのビルの入り口の階段に腰をかけて食べていました。そこへ公安が来て逮捕されたのです。その時、彼は身分証を携帯していませんでした。
 収容所に入れられた彼は職場の電話番号を知らず、外部と連絡をすることが出来ません。彼の入った獄房は12人の大部屋でした。
 同じ頃入った「張明君」という学生が、自宅へ電話し、家族がお金を差し入れ、管理人に渡します。そのため、その張氏が獄房の親方に指名されます。親方は房内のややきれいな便所を使えます。他の者は隣の汚い便所を使います。この張という人は「親方」に指名されたため、殴打者達12名の主犯となります。
 この収容所には隣接して大きな病院があります。もちろん全ての病室は鉄格子付きです。孫氏は逮捕翌日この病院に心臓麻痺として診察されています。しかし父親は「家の息子は極めて健康であった」と証言しています。
 入房当日から拷問に会っていたようです。 この病院には資格としては何もない元保安係が、看護士として働いており、彼らが常時入房者の拷問を担当しているようです。
 拷問には看護婦も参加しています。
 孫氏が逮捕された3月17日には3名が脳挫傷などで死亡した記録が病院に残されています。
 3月20日の朝方、201号室の窓から「助けてくれ、殺される。俺の公司に電話をしてくれ」と言う声を隣接する獄房の人達や収容所から出る人達が聞いています。しかし電話番号が解らず、この叫びが役立ちませんでした。その日の朝9時50分死亡が確認されています。
 張氏はもし自分が殴打しなければ、看護士達に殺されていたと主張しています。<BR>
 看護士達は「房内の人間を殺すなんて、蟻を殺すより簡単だ」と常時大声で叫んでいたそうです。
(此処までが裁判記録から)

このことをしばらくして、03/04/25の「南方都市報」と言う新聞が報道しました。(この時点では死亡の理由は正確には解っていませんでした)
 農村で息子を待つ父親は息子からの連絡が途絶えて毎日都会へ出て、役所や公安や収容所を訪ね回りました。どの役所も冷たい対応でした。
 息子は就職するとき「これまでの親父が残した借金は俺がすぐに返してやるからな」と言って都会へ行きました。

 やがて、当然のこととして、世界の報道界と政府が現代世界の事件としては異常な人権侵害として注目するところとなりました。(中国の新聞はインターネットで見ることが出来ます。朝日新聞も「南方都市報」を見たのでしょう)<BR>
 それが中国内にも逆反映し、新聞を読める人達が騒ぐ事態となり、父親が裁判に訴え、そこで次第に詳細が報道されるようになりました。<BR>
 今では、cn.yahoo.com に「孫志剛」と入力すれば、関連項目が延々と出てきます。(yahooで外国語変換処理をすれば日本語PCでも検索できます。)
 そしてついに国務院が収容所を廃止するとの声明を発表しました。
 21世紀に、世界にもまれな猟奇的非人道的行為が国家が行う制度として存在していることが暴露されました。時はsars で世界が中国に目を向けている時でした。

 私が中国にいたとき中国の学生達は「私達の国は今では北朝鮮ほど悪くはない。建国時代とは変わって、もう中国は開放されつつある」と胸を張って主張していました。都会を見る限りこの言葉が信用できそうな気がしました。しかし人格が尊重されないという点では北朝鮮とまだあまり変わらないのではないでしょうか。もしSARS で世界が中国に注目していなければ収容所が廃止されたでしょうか。
 でもとにかく、大きな民主化が実現したのも事実です。それに「インターネット」が大いに役立っています。

 添付の写真は北京市の収容所で、3000人入れます。ここに農村から北京へ出稼ぎに来ていた人が逮捕され、3歳の娘と一緒に収容されたことが記事になっています。3年間で7度も逮捕され、そのたびに1000元取られています。母親は他の男と逃げたため、北京に出て、リヤカーを人力車として客を乗せ、稼いでいました。住民証が無いため、公安の休みの時間をねらって稼いでいました。たまたま乗せた客が遠距離を頼んだため、公安に逮捕されたのです。
 収容所では3歳の子供が泣きやまず、周囲の人が寝られず、またトウモロコシの饅頭を食べて激しい下痢をしたため、翌日仮出所しています。
 この娘を近所の人に預け、また稼いでいたところを逮捕されました。
 でもこの収容所も今は無人で、ガラスは割れたままです。 

 なお話は変わりますが、yahoo で中国のホームページを見ていて気が付いたことですが、今の中国のyahoo は最初の画面から女性の誘惑的な写真がふんだんに載っています。日本のyahoo は随分大人しく感じます。 勿論それらは広告です。携帯電話の番号を入力しなければ、詳しくは見えません。<BR>
 昨年の「南方週末」にも街頭で女性が完全なヌードになって、商品の宣伝活動が行われていることが紹介されていました。
 私の見る限り、道徳的な頽廃(自由化?)は日本を遙かに追い越したような気がします。
 では昨年中国の西安で日本の学生が裸踊りをしたことが現在の中国人にとって本当に驚きだったのでしょうか。辻褄が合いません。 誰か真実を教えてください。
 
ついでに、今年の中国の正月は1/22日です。(農歴と言います)
 今頃中国では爆竹を鳴らし、「過年好」(コウネン、ハオ)(日本語の”新年おめでとう”)と祝っていることでしょう。