四川省:警察の倫理改革条例
04/04/01 南方週末 曹勇

 概略
  四川省公安部に今年新しく任命された部長、
周永康は規律改革の新条例施行に頭を悩まし
ている。 李昭遠事件以来、不正の空気が充満
し、腐敗で名を揚げた警察機構の志気を改善す
るために、党は重大な組織および風紀の改善を
計画し彼を任命した。しかし各地方の公安所長
は辞職覚悟で今その改革に抵抗し彼を困らせて
いる。

訳注:李昭遠事件 
 昨年1月の夜、四川省のある売春宿へ警察大隊
が強襲し性行為中の10数人を捕縛した。車に乗せ
ようとしたところを、これまた警察の一軍が押し寄せ
数人を解放して逃げた。
 警察同士のこの対決は街中に大変な驚きを与え
た。そもそも、その売春宿は李昭遠と言う派出所
所長の弟が経営していて、李昭遠がその経営を実力
で擁護すると豪語していたものだった。
 その後の6月になって、公安庁長の呂卓がテレビに
出演し次のような談話を発表した。
 「現在、公安組織内に多くの悪風がある。特権思想を
持っている、執行を乱暴に行う、賄賂を強要する、調査
が横暴冷酷である、娯楽場への経営に深く参与している、違法な娯楽場へも保護を約束している、そこから利益供与を強制している、強制収容や罰則を適当に行っている、調査が嘘で固められている、真相を隠す、法を無視して逮捕する、等々である。」

 この事件が発覚して以降、各種隊伍規律改革の条例が発布されたが、その発布当日の6月5日、中国全体を震撼させた事件、「四川省西都市の警察が3歳の幼児を餓死させた」(李思台事件)ことが発覚した。さらに大学入試試験問題が警察によって盗まれた。また警察が容疑者に暴行を加えた事件などが同時に発覚した。
 
訳注: 李思台事件:
 昨年6月1日、3歳の李思台の母、李桂芳が近所でパンを盗み逮捕された。署で彼女は幼児のことを話し、帰宅が許されたなら、親戚に幼児を預けた後に警察に戻ることを約束したが警察はこれを無視。6月21日、警察が彼女の家に行ったところすでに幼児は餓死していた。

 李思台は出産後父親が逃げた為、戸籍がない。母は生活が困窮し時々パンを盗み捕まることがあった。その日も幼児が空腹で泣くので母が盗みを行ったもの。
 李思台はこの世に生まれながらこの世に受け入れられなかった。
 世界は大きく中国は広い。しかし李思台はその小さな身を置く場所さえなかったのか。今回捕まえたのは公安であり、国家である。そしてその手で、パンの一片も与えられず一命を終わらされた。
 これは以下のホームページを訳したものです。詳細は下記をご覧ください。涙無しには読めない家庭の様が説明されています。
http://www.hinomad.com/bbs/replytopic.asp?Forum_ID=13&TOPIC_ID=21938
 中国では出生した赤子の名前は父親からもらい、母とは別姓となる。李思台の李は母親の姓で、これは正式のものではない。

この条例発布に伴って警察が本務と無関係に営業している370の商売を止めること、189の本務以外の収入を停止、84項目の法令以外からの罰金を止めること、乱暴に取り押さえた91万元を返還すること、等を約束した。

呂卓公安庁長の考えでは、本来の公安の任務は勇気や知恵や義侠心が有り、国家に尽くす、人民に忠誠で、社会正義を守る、のがその役目である。しかし現実は腐敗が充満し、全て「金銭」が支配している。

警察は国家機構の一部であり、その経営は「お上」からの支給で賄うものである。しかし実際は「お上」からの支給は必要経費の5分の1程度である。残りは各省で自給する必要がある。
 各種関係者の賛助金や協力金を雑費と呼び、売娼婦から取るものや、法外の罰金で繕うものを「小便飯」と呼び慣わしている。
 なおこの「小便飯」と言う言葉は呂卓が初めてテレビで使い、前朱容基首相が気を遣って3000万元を四川省に回したことから、新華社の辞典に掲載されている。

 2003年の調査では「お上」以外の収入は全省から1人あたり20元の罰金を取っていることになる。
毎年予算の確定に当たって、罰金取得額が各公安に割り振られるとき、公安庁内は誰も顔を真っ赤にしてケンケンガクガクとなる。
 しかしこれをこなさないと公安組織全体が墓穴を掘ることになる。
 だが世間の強烈な批判を受けて改革の条例発効となったが、問題はこれからである。

 条例は後門を閉め、前を開けた形になっている。実行・前進するしかない。
 しかし現場の最前線の派出所所長達はこれを「米無しで飯を炊く」ようなものだとして実現不可能と言い、辞職覚悟で職務を放棄しているのだ。 

04年2月の四川省全市の党書記が集まった席で公安は省政府に対し条例は貫徹不可能と宣言。
だが、公安隊伍の整理整頓と改革の風紀は改まったとして、多くの賞賛を得た。
 呂卓は03年は公安にとって陣痛の時であった。しかしその改革によって警察は特権を失ったが、民衆の支持を得たので喜んでいると話している。

訳者注:
 開いた口がふさがらない!!!!!
 
ただし、あまり悲観的になる必要もないと思い直しています。
 それはここに挙げた2つの事件は、「YOHOO中国」で検索したら出てきました。
つまり、中国がWHOに加盟したこの2年間に報道が随分開かれてきていると言うことです。
 私がこの4年間翻訳してきた記事の中に、他国では信じられないような人権無視、非民主主義の事件が山とありましたが、これらは肝心の中国内の人達はほとんど知らないのです。
 2000年の6月に中国人と旅行したとき,たまたま見たテレビで「客船遭難事故」が報道され、それを見た中国人がびっくりしたように「あれ!中国で昨日の事件が報道されている」と大声を上げました。
その頃以降YAHOO中国に乗る記事が飛躍的に伸びているようです。
 但しその頃、党がEメール検閲を強化することも発表していますが。確か20万人の検閲官が任命されています。

でもインターネットが発達して、多くの人が情報を多角的に拾うことが出来るようになってきました。外国の人達が商用や観光で多数中国へ入り込んでいます。商用も観光も中国の経済を支える重要な資金源となっています。この2つの資金源無しに中国の国家体制は維持できないでしょう。
 インターネットはこれらの取引・連絡に欠かせません。この時に情報をこれまで通りに隠すことは信用上許されなくなっています。
 勿論情報が今後とも開かれて行っても、独裁国家が自然に倒れることは無いかもしれませんが。
部長、周永康