北京の世界遺産
 
拝観料 公聴会 

04/12/16 南方週末 記者 馬揮 

 11月30日北京で世界遺産(故宮、万里の長城、等6カ所)の拝観料公聴会が開かれた。
 これについて今北京は勿論、中国全体で議論百出である。公聴会に参加したのは各界代表21人、10名の市民の傍聴、12名のマスコミ記者であった。
 だがこれらの公聴会は実際は何も公表されていない。記者の質問に答えてくれる参加者は「当面はその時期でない」として返答無しであった。 参加者の選定にも大いに疑問がある。その参加資格基準が発表されていない。どの代表なのか。
 現在年間の拝観者の総計は700万人になる。1カ所だけでも60元はする。年間総収入は幾らになるのだろうか。このままで維持補修が出来ないのだろうか。
 多くの学者が問題の公開性と透明性を要求している。
 今回の「公聴会」は名ばかりで、その実態は始まりから終わりまで何も公表されていない。
例えば有る代表は「私は個人の意見を発表した。誰かの代表ではない」という。
 このような意見が出ること自体、その選定の意図が「民意の汲み取り」では無いことが分かる。

しかし今回の「公聴会」の発表で、中国人の大きな関心を引き起こしたのは事実である。
 本来はこのような問題を公表し透明な議論の中で、「公民」としての意識が、国民としての参政意識が発展するのではないだろうか。

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投稿 薜涌

 故宮などの文化遺産拝観料が現在300元近い拝観料代が460元に跳ね上がるようだ。だがこの高額を何処の中国人が望んでいるのか。
 現在これら中国の観光名所の拝観入場者の95%は外国人である。
これまでの入場料でさえ、一般中国人にとってはあまりにも高嶺の花だった。地方の人が北京への交通費や旅館代等を払って見学すると数ヶ月の月収が飛んでいく。
本来これら中国の名所旧跡は中国人が最も多く見学する権利があるものだ。だが考えても見よ、北京に住んでいる出稼ぎ農民の月平均の収入は499元である。1ヶ月の収入を出して農民がこれら観光地を見に行くだろうか。

 現在1日の入館者は最高季節で12万人に達する。これだけの入館者が有れば大切な古跡が破壊される恐れも充分ある。現状を維持補修し、そして広く観覧を可能とするのにどんな手段があるのだろうか。

外国では世界遺産のような観光施設はほとんど無料に近い。国家がその維持補修代を保証している。普通の発達した国家では子供達の教育費も国家が負担している。学校には体育館もある。400メートルのトラックもある。サッカー場もある。驚くのは国民の休養にまで国家が予算を充て、その充実を目指しているようだ。

 中国では話にならない。まして農村の学校を見たら外国人でなくともその粗末さに驚く。
 中国は北京の名所旧跡の入場料を上げて国家予算の補助にしているのだろうか。
 更に本当に心配なのは、中国人の多くが拝観料の金額について考えたこともなかったという事実だ。

 現代中国では農民の出稼ぎが社会の経済の重要な部分を支えている。しかしその部分には国家予算はほとんど割かれていない。
都会に住む市民は最近の経済発展の中で大きな利益を受け中産階級となっている。彼等は社会の弱者に先進国を見習って義捐金などの行為を盛んに行うべきではないか。都市市民は未だに被害者意識から抜けきれない。
 このように、国家のするやり方に透明性と公開性が無く、市民が弱者に配慮することがないままでは、中国は近代国家としての精神的発達は望めないのではないか。

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訳者注:
 現在の中国人の都市民の平均月収は約1000元。北京で1300元程度。そして出稼ぎ農民が499元とあります。これからすると拝観料はべらぼうに高い。名所旧跡の拝観者の95%が外国人というのも驚きです。(入場料の高さからすれば当然ですが)地球上にこのような自国民の利用を無視した国家があるのでしょうか。
 ちなみに日本円に直すと入館料は約7000円です。日本だって国内にこのような公営の名所旧跡の入園料が有れば高額だと問題になるでしょう。
 大連の労働公園入館料が50元でその高額に吃驚したことがあります。10元有れば1日3回の食事が出来ることを思えばこの高額が分かります。でも公園の中に中国人も少し居ました。
 中国は表向きだけ「選挙」や「公開」等を大々的に発表宣伝しています。学校の教科書にも載っていました。これまでも農村の村長や議員の選挙を紹介しました。だがそれらは権限のないもので、場合によれば党によって途中解雇されています。
 中国の政策に透明性、公開性がないのも、「全ては党が指導し、大衆はそれで利益が守られる」という独裁国家の運営の基本を示しています。

 それにしても農民の地位はこれでは永久に改善されないのでは。