2003年 中国の当面する重要問題

 南方週末 03/01/16 記者 張大偉

 1/5日、 中国社会の現状分析を専門家達が共同で行い、大胆な予測を含んだ白書を公表した。同時に党中央学校で学ぶ150名の地方公務員にアンケート調査を行った。
 これらの白書とアンケートにより今年度の中国の態勢が我々の前にはっきりと示されている。

  政治改革の焦点

 アンケートの中で最も注目されるのは、最重要問題が、36%の人が政治改革だと述べて、次が機構改革と人事の24.5%である。
 これを評して専門家は、この2項が地方公務員にとって自分たちの利益と密接に関係していると分析している。また、この2項が事実、今後中国の発達にとって大きな問題であろうという。
 現在改革は攻勢の局面で、政治改革の重要性はますます重くなっており、その中心は党内民主主義である。これが基本である。
 中国社会科学院陸建華博士は昨年の第16党大会以降その改革は少しずつ実行されようとしている。がこの03年に具体的な形が見えるかと言えばそうでもない。党内で今それを巡って見えない所で激しく争われている。
 中国の共産党は世界で最も大きな政権党である。この党のどんな改革も直ぐに社会に明確な形で現れる。従ってその改革は大きな成果を現すもので無ければ、結果は悲惨なものとなる。したがって良き環境を創るため現在構想が練られている。

  高度経済成長は続くのか

 この2,3年世界経済は低迷している中で中国のみ成長率8%という高成長を維持している。国内総生産額は10万億元を突破した。
これは世界で6番目の額である。
 しかし去年から国外の学者達はこれに異議を唱えている。ノーベル賞経済学者のチュクロクマン教授は「中国はアジアで奇跡を起こした。しかしこの奇跡は神話のようもので、やがて消えていくのではないか」と述べている。
 中国の経済学者達は保守的或いは急進的な傾向の両方の科学者が共にこの予想に対して、中国を弁護している。
 中国社会科学院の李培研究員は国家統計局が本年の成長率として示した4から7.6%の数字は現在の経済成長が続けば確かなものと言えると語っている。条件として政府の拡張政策が必要で、その場合各種条件の協調が必要だと補足している。
 例えば通貨量下落、消費指数下落、失業率拡大、株式低迷、企業収益下落などの負の側面である。
 この説明からすると、中国の経済成長は危険性を含んで居るとも表現できるし、その中身について注意を払わないといけない。

 公平な分配と貧富の開き

 専門家の分析によると中国は現在都市と農村の間の経済力の差が開きつつある。農民或いは農業経営の収入面は成長がないかまたは緩やかである。
 現在西部開発に力を注いでいるが、中国では、東西の格差も依然として拡大している。
 中でも都市と農村の差は西部に置いて甚だしく,又都市内部における格差も開きつつある。それは社会の安定にとって重要な問題を孕みつつある。
 かって登小平は92年、”貧富の差の拡大が何時どんな時に現れ解決できるか、今後の問題として研究する必要がある。恐らく20世紀末のやや安定した頃に解決の見通しがつくだろう”と語った。
 専門家の見る所、この解決の見通しは既に環境としては熟している。我が国は改革開放の20年間を通して大きな成果を達成してきた。同時に貧富の差は社会の安定上の大きな問題にまで広がっている。21世紀に入りこの差はますます広がっている。この貧富の差の拡大を押しとどめるための今後の重要な目標は中産所得層を広げ、低所得層の水準を高める事であろう。
 専門家の予測によると、この目標達成のために、投資家の合法的な利益を守る中で、賃金のあり方、労働のあり方、税収体勢、社会保障体制、福祉政策、財政の地方への移譲などの問題が改善されるべきである。これらは収入の分配の問題として調整が期待される。

 就業と社会保障

 李教授は「当面の中国社会発展上の問題と傾向」として報告書を出した。
 その中で、まず失業がある。これは中国建国以来5度目の高失業率を示している。失業者の中で、約700万人が登録されている。それ以外に1000万人以上が国営企業の解雇者として存在し、120万から150万人の出稼ぎ農民の失業者が居る。70万人の大学卒業生の未就職者が居る。
 国営企業の解雇者は依然として増大している。
 02年9月末の全国の就業人口は11005.3万人で昨年比362.3万人減少となっている。その内国営企業は7508.2万人、昨年比444.8万人減少である。半官半民企業は1253.5万人で昨年比171.3万人の減少である。再就職率は、98年は50%、01年は30%、02年は15%とと年ごとに下がっている。これは資源の投資を見送られやすい傾向の企業、時代遅れの産業に置いては深刻となっている。
 李教授によると、これら再就職の率は社会の安定に直接影響するとの意見だ。この解決のためあらゆる手段が執られているが、労働の素質を高め、新規に社会に出る人を減らすこと。これは学生の修業年限を増やすこと、すなわち教育期間を引き上げること、或いは職業訓練を施すこと等を意味している。しかしこれらの努力も当面の差し迫った再就職の要求には応えられそうもないのが現状だ。
 そこで李教授は当面彼らの最低生活保障制度を改善することと、広い見地から新しい対策が必要であろうと提言している。この方法とは財政を拡大し、貨幣を金融市場の中で大いに循環させることである。低所得層の収入を高めることで消費市場を拡大させることである。
 同時に市場競争を刺激することは社会的な各種問題も誘起する。中国を安上がりの粗末な国としてではなく、コストを掛けて立派で安定したものにするためには、直ぐに解決すべき問題がある。それが社会保障体制である。
 
 反腐敗は依然として熾烈

 03年発表の社会白書は、全国の検察機関が発表した5万元以上の汚職、10万元以上の公金流用事件は約7万件余に昇る。犯罪として立件された県の幹部は1万余人。局幹部は700人、省幹部は21人、これらによる経済損失は235億元に達する。
 02年これらのいくつかが発表されて社会的に大きな反響を呼んだ。
 いくつかの省で適当に選出してアンケートを採った結果によると、74.4%の人が反腐敗の成果を認め、69.3%の人がこの摘発で腐敗現象蔓延が抑制されるのでは、と答えている。今後とも反腐敗の闘いに期待していると言う人が68.9%を示している。これらの数字は6年前の同調査より1割以上増えている。  
 そして「腐敗が厳然として社会経済の発展にとって大問題となっている」と誰もが認めている。 これらの審理が報道されるようになって、大衆の反応も明確に表現されるようになった。が、官員の浪費態度はまだ熾烈で、”いくつかの地方ではその現象が露骨に出ている。”これは有名な社会学者陸学芸氏の意見だ。
 これら腐敗問題は、貧富の拡大と失業者の問題と並んで重要なことだと、上記の意識調査で解答されている。中国の発展にとって大きな影響・制約となる腐敗の問題を、当の官員達の意見では昨年は摘発に大きな成果を収めたと表現している。だが根本的と言えるような状態では全くない。有る所では腐敗は蔓延し、それに対する闘争は進んでいない。官員達の半数が中国の将来にとってこの腐敗がさらに重要な問題となることを指摘している。

   私営経済発展の兆し

 02年10月25日公布された「フォーブス」によると、中国大陸の100人の資産家の総額は190億ドルで、昨年比10億ドル増加している。明らかに私営企業家の地位が高くなっている。昨年行われた党大会に私企業主の党員が7人参加している。
 がしかし、現段階で私企業主の影響が確実に拡大していると見るべきか。いや実際はそうではない。
 学者達の見る所、中国が今後発展していくためにはどうしてもこれら私企業家の参加拡大が必要で、非国営企業の分野ではこれら私企業の増大は着実に増えている。特に第3次産業では目覚ましい。
 今、03年、中国の私営企業は発展の春の時節を迎えている。
 有る学者はこの傾向を中国の清末、民国初期に例えている。
 中国はこの千年間かってなかった変化の時代である。この「千年間の」という言い方は、新中国建国時が「政治上」の千年で、54運動が文化上の「千年」で、78年から始まった改革開放は「経済上の千年以来」の変化の時代である。
 この様な大変革期を迎えて中国経済が全地球の上で活躍する段階を迎えており、昨年の党大会もこれを提起し、「重要な戦略上の好機」と表明した。03年以降の20ないし30年間がその中で決定的な時期で、危険を孕みながらも発展を維持できるかどうか、自国民の生活を高めることが出来るかどうか、経済が発展すると同時に、国家の盛衰と大衆が国家を見捨てるかどうかの分かれ目になるだろう。

訳者注:
 参考数字    (2000年度)
総 人 口  12.9533億人
人口約13億は表向きで、二人目の子供を届けない人も多いらしい。
 下記の中国人の話によると、毛沢東在世中の約30年間、「労働人口こそ国家の力」と言う奨励が行われて、何処の家庭にも7,8人の子供が居たそうです。これで人口が6億から9億位に伸びた。

平均寿命 男 69、女 73歳
現役軍人   250万人

党  員    5800万人(97年)
人民日報     600万部(95年)
  150万部(99年)

 話変わって、
 2/20、若い中国人2人が家に食事に来ました。2人とも毛沢東が亡くなった76年直後に生まれています。現在26才位。
 一人は大連で知り合いました。他の一人はその友達。
 大連の時は日本人を捕まえては、南京大逆殺をどう思いますか、と、かなり詰問調子の学生でした。ところが私が南方週末の翻訳に熱心な事を話すとその人は拍手をして「素晴らしい」と言ってくれました。勿論私の興味が中国の民主化に有ることを知っての発言です。ものすごい変化ではないかと吃驚しました。(日本に来て2年くらい)
 私の妻が「お二人は文革など知らない世代でしょう」と聞くと、2人とも揃って「でもよく知っています」と話してくれました。
 一人は、「父が紅衛兵だったけれど母はそんな悪いことはしていません」と言います。もう一人は両親とも紅衛兵だったようです。そしてやがて「下方」で農村に行ったそうです。
 毛沢東が亡くなって文革は終了しますが、その後も数年間は食べる物は「ヒエや粟」ばかりで、毎日毎日、明日の食事が心配だったそうです。
 この状態を登小平が「改革開放」しました。計画経済を止めて、農民に土地を与えて自主生産の許可を与えたのです。92年には「豊かになれるものから豊かになろう」と言う政策を発表しました。以降中国の生産は目覚ましい成長を記録し続けています。
(でも登小平は文革終了後、学生達が階級闘争などのマルクス主義を見直そう、と提案したとき、その運動を弾圧し投獄しています。)
 私の妻が「走資派」と言う言葉を知っていますかと尋ねると、2人とも「知っていますよ。資本主義の道を求める人達ですよ」と解説してくれました。走資派と名指しされると、頭に三角の帽子をかぶって大衆の前で懺悔をさせられます。背中を蹴りつけて背骨を折るなどと言う、ちょっと日本人には信じられない「階級闘争」が行われました。
 その時中国人のどちらが言い出したのか、「今の北朝鮮と同じだったのですよ」と言って2人が目を見合わせて軽く笑い出しました。
 私はそれを見て、「ああ、今は中国も変わったな、平和になったな」と思いました。
30年前だと、もし横に中国人が居て、こんな会話をしたら、必ずどちらかが相手を裏切って党に告発し、そして「走資派」として糾弾したことでしょう。
 その他、現在日本に来ている中国人達が、友達が困ると「数十万円」でも貸し借りする心がけについても話が出ました。彼らは友達を信用しているから当然だと言います。
 私の妻の感想は「本当に今の日本人の学生には見られない位まじめな中国人の若者だ」と感心しています。