人民元の真価は如何
 南方週末 03/01/23

 人民元の交換レートが現在低すぎるという議論がされているが、それは誰のためなのか。大衆にとってはいかなる意味があるのか。
 人民元のレート上昇を狙って投機が盛んになってきているが、それは経済の発展にとって致命的な打撃になるのではないだろうか。
 記者 夏英

 誰が人民元を吊り上げようとしているのか。
人民元はどの程度の実力があるのか、今米日の経済界ではこのことが喧しく議論されている。彼らは人民元に対し、恨みを込めて、「現在は低すぎる」と主張している。
 日本の財務大臣塩川正十郎は特に声高にどちらかと言えば脅迫気味に、直ぐにでも対ドル価格を上げないならば、次回のG7で西方七カ国の一致した意見として取り上げ要求を出すだろうと言い出している。
 その根拠はそんなに複雑ではない。去る12月2日、財務省次官黒田と参事官河合が英国の「finance times」に自説を載せた。
 言う、「中国は輸出が拡大しており、一方対米ドルに対する為替レ−トを固定することによって、自国のみならず世界の通貨の流動を押さえている」と。そして「今こそ人民元のレートを上げ、世界規模での通貨流通拡大に貢献すべきである」と締めくくっている。
  これまでにも世界経済の動きについて2つの対立した傾向が主張されてきた。
1つは通貨流動を刺激して経済を活性化する、1つは過熱した経済を引き締め、冷却する必要があること。この対立する意見が常に交わされ続けてきている。
 彼らの言い分は、語意を強めて「中国は米日及び欧州の経済活動の安定化に貢献すべきだと」との主張である。そのことが世界の経済安定に貢献するとの含みがある。
 黒田と河合は、かってアジア経済危機が発生した時、人民元だけが変動せず、アジアの中で存在価値を示したのを忘れては居ないだろう。逆に日本円の下落が周辺国を寒むからしめたのだ。
 一見言い方が紳士的に見えるアメリカは、しかし口角泡を飛ばして、日ごとに差が大きくなる中米貿易の一方的赤字(アメリカにとって)を強調し、”IMFの強化から見て”という言い方で、人民元の実力に応じた変動制を要求している。昨年11月末、財政部部長の項環誠は香港で、人民元上昇の圧力を感じていると表現したが、中央銀行前頭取の戴相龍はそれについて「人民元は94年から名目上5%上昇している。その実力は4割上がっている。中国の外貨準備高も上昇を続けているが、しかし中国国内に金融危機も内包しており、このことから見て現状維持が適当と思う」と発表した。
 また「華エル街日報」の社説では新任の中央銀行行長、周小川の担任後最初の仕事が交換レートの調整ではないかと指摘したが、しかし事態はそんな簡単なものではない。

 中国の輸出超過が財政を圧迫しているか

 人民元レートを上げろという言い分は、「今中国が世界の工場」となりつつあり、そこからの輸出超過が通貨緊縮を要求しているという考え方である。ではどんな対策が最善か。
 中国での分析ではこの問題は「小児科」の担当であり、大して議論するほどの問題ではない、と言うのが専らだ。
 この言い方は少し荒唐無稽に聞こえるかも知れないが、しかし日本の野村證券の分析でも似たものである。それによると日本の中国からの輸入は日本経済の2%しか占めていない。しかもその商品は末端の低級産品であり、中国からの輸入超過が財政を圧迫しているというのは過大評価だと伸べている。
中国からの輸出超過を過大評価するのは適当ではない。昨年秋発行された「中国経済分析と予測」に依ると、02年度中国からの輸出の伸びは15%で、03年度もその辺りと見込まれている。これは決して1人勝ちという数字ではない。
 中国の輸出の相当部分は加工産品で、その加工費から出る利益は極めて少ない。また、中国が半導体や通信設備、或いは先進的デジタル設備の輸出額が増大していると言っても、しかしその実態は労働密度集中の産業に絞られている。
 また他方で次のような指摘もされている。中国がWTOに加入して以降、市場が外国に解放され、中国に投資を求める外資が鰻登りに増えている。
 さらに、「例え中国がそのレートを固定していることに関係なく、人民元の力が世界通貨をアンバランスにすると言うのは当たらない。只しかし、世界の貿易界に競争を激しくしているだけではないか」
 
 中国内には次の指摘も出ている。「日本が中国の輸出急増を非難するのは、自国の経済政策失敗の言い逃れに利用しているのではないか」 

 もしレートが上がると

人民元評価を上げろと言う主張は実現するだろうか。米国のポール・オールク貯蓄銀行主席は「今レートを上げると投機意欲が加熱し、経済活動に致命的な打撃を与えるだろう。現在は中国に目を向けることではなく米ドルに注目すべき時である」と警告している。
 1/9日の「finance times」に依ると、「G7が早急に人民元を上げるべきかどうかの議論をすべきだという説は、その可能性はあまりない」と述べている。また同紙面でニューヨーク為替銀行主席のマーク・チャドランは「7カ国がこの議論をするのは時間の無駄だ」と決めつけている。
この中で彼は「人民元の安定が最善だ」と主張している。
 アジア銀行行長の謝国忠は最近「人民元の改訂は通貨流通に加重な刺激を与え国内の購買力を弱めるだろう」という文を寄稿している。その中で「中国は膨大な余剰労働力があり、利益率の低い産業で世界の貿易界の競争に参加している。人民元を上げることは東アジアに通貨の緊張を生み出し、同時に東アジアに経済的不安定をもたらすだろう。このことは誰にとっても利益はない」と主張している。

 中国の経済学者楊帆は「飢えは人を餓死させる。しかし飽食もまた人を殺す。人民元の上昇は良いことばかりではない。例えばアメリカで国民の財産を急速に増加させるとしたら、それは同時に株式と土地の価格を急速に上げ、実体の伴わない経済発展を生み、両極端な対立をもたらすだろう。それは続いて輸入超過を引き出し、国内産業を圧迫する。通貨の緊張が高まり、財政危機に結びつき、これは悪性の通貨拡大に繋がる。これはまた通貨の下落となる」
 誰も当分は人民元の上昇はないと期待してはいるが、しかし中国当局の交換率政策は弾力的にならざるを得ないのも事実だ。
 中国は今極めて急速な経済発展段階にある。これはやがては通貨とその実態が遊離するときが来るだろう。
 前述のアジア銀行長は「現在中国当局が真剣に人民元の適正価格について考慮している、と信じている。しかしこれは下手をすると一国の命取りとなる。恐らくその変動の範囲は3ないし5%辺りを検討しているのではないか。その後通貨変動制に移行するのではないか」 

訳者注:
 外国(人と新聞)名は正確を欠きます。原文は全て漢字の当て字なので。ゴメン。

 しかしこの文は日本人にとっても興味大ではないでしょうか。
私が中国にいた99年に、日経は10%上昇すると予想しました。でも上がらなかった。

南方週末は中国内の新聞です。しかしこの記事では日本が何回も登場します。アメリカと日本が同列の扱いの感じです。唯、少し反日感情が出ている気もしますが。
 世界経済で日本とはこんなにアメリカと同列の実力があるのでしょうか。私は全く解りません。