湖北省の幹部74人が汚職で逮捕
  記者 黄広明  南方週末 03/10/30
  概略
 襄(シアン)市と樊(ファン)市で74名の腐敗幹部を逮捕。10月25日、市は第9回全体会議を開き、江沢民の提唱する「3個の代表」を一層深く学習し、人民の利益を守ろう、と決議を固めた直後の出来事である。
最高責任者の孫楚寅は技術者出身の為、文革終了までは、抑圧される身分だった。毛沢東死後経済を立て直すため技術者が社会には必要と見直され、出世が始まった。老河口市経済委員会主任、市事務所主任、市党委副書記、市長、市党委書記、襄樊市副書記、政治協商会議主席、党委書記と進んできた。
その収賄額は巨大で、嫌疑犯罪は無数、また多くの女性との関係を持ってきた。
そして彼を逮捕して調査したところ、長い鎖のように収賄で名を揚げている幹部達がぞろぞろと明るみに登場。
「10万元で現在の椅子を約束、20万元で地位を一つ上げる。30万元で他の地位を選べる」これらの合い言葉が普通に使われていて、官の身分の売買市場となっていた。
2003年1月から9月までに立件されたものは、汚職収賄が329件、関係者341人、そのうち確定事件284件、起訴274件、国家に直接与えた損害4000万元余、収賄額の最大値は150万元を超えていた。
 この犯罪規模の大きさは新中国始まって以来この湖北省では第2番目の大きさ。

市政府の建物の正面に面している通りを人びとは正式地名で呼ばず「煙草と酒通り」と呼ぶ。そこには酒と煙草の店が30軒並んでいる。これらの店で売っているものは酒も煙草も最高級ばかり。先ずここで手土産を買って市役所に入る。店での儲けは莫大で、今年の正月だけで、有る店は純利益30万元である。酒や煙草単体の利益は30から40%だが、売ってすぐに、この商品を貰った役人が売りに来る。それを極めて低価で買い取る。それを再び数倍で売る、と言う仕組みだ。
一旦始めれば商品仕入れの元手がいらない。
 中国では原則的に親戚が同じ行政の職場で働くことを禁じている。しかしここでは例外だらけだ。有る党の責任者は退職後、3人の娘を県の高級幹部に据えた。普通の家庭の身では不可能なことだ。

有る党幹部が記者に匿名で教えてくれたところに依ると、主犯の孫楚寅に来た手紙を見せてくれた。
 「おじさま、私の父と貴方は長年のつきあいです。今回書記になられました。出来たら私の父を取り立ててください」と言う内容。
手紙を書いているのは小学生である。

別の例で、街灯に看板を着けるとき、原価は3千元である。が、これを役所に頼むと5倍の1万五千元となる。
ここは諸葛亮の生誕地、中国では有名な観光地。ところがこの数年、市は至る所に広場を造っている。そして諸葛亮の周囲も多くの反対意見を無視して花崗岩で道路を固めてしまった。昔の面影は全く消えた。工事は全て借金で工事を進め、返済は後任に任せるという。
襄樊市魚梁洲地帯は国家級自然保護地帯。その自然が有って50年に1度の漢江の洪水にも耐えることが出来る。従ってそこは建物など永久建築物は建ててはいけないことに決められている。
しかし政府はそこに20億元を投資し、2万人の住居を建てた。そして今年の9月洪水に襲われ莫大な被害を出した。
 勿論これら莫大な投資、次から次への積極的な投資は、そこに賄賂が伴うからである。
 この5年間ほどで、このような腐敗現象は急激に増加している。

訳者注:
 中国では収賄を腐敗と言います。受け取り側が党幹部だからです。
 これほど大胆に腐敗現象があると、ギネスブックに記録されるのではないでしょうか。
 普通の国ではここまで大胆露骨な腐敗はあり得ないでしょう。1党独裁であることと、司法制度が実質無いことなど社会主義であることがその理由でしょうか。98年に法治国家になることを決議していますが、やはり社会主義である限り、それは実現しないのでは。

 ここに記された腐敗は日本人には目を見張らせるものですが、しかし最近の中国では記され得ない腐敗が急速に広がっているそうです。何故記され得ないかというと、それは政府と黒組織(暴力団)とが結びついているからです。いったん黒組織と結びつくと、報道の自由が無いのを利用して、すぐに恐怖社会になります。この南方週末も黒組織と結びついた政府のことは書けないそうです。 

 もっとも毛沢東がいた頃は、毎日が階級闘争で、親子でも信頼できなかった社会で、国全体が恐怖社会でした。どちらを「恐怖社会」と呼ぶのが正しいのでしょうか。