監獄が火事

四川省 趙程 南方週末 03/08/07

 私は5日前にここの監獄副官吏としてやって来た。来るやいなや大変な目にあった。諺も言うように「早くやれなければ巧くやれ」というのを実際に経験した。
 それは監獄の財務室から火事が起こったのだ。火はすぐに燃え広がり、大勢の官吏員が火消しに懸命に当たったがなかなか消えそうにない。そのうち私は大変ことに気が付いた。財務室には小切手や「档案」が入っている。 財務室の鍵を持って居る担当者は出かけていて留守だった。鍵が開かない。周囲は炎が燃えさかっている。
 そこで昔の諺を思い出したのだ。監獄の中には、各種の泥棒が入っている。その中にどんなところにも忍び込む、素早いやつがいるのを思い出した。そこですぐその泥棒と相談した。話はすぐ付いて、かれは獄舎から出ると、自分の身体に水を何倍もかけ、そして炎の中を脱兎のごとくくぐり抜けていった。
 一度出てくると手には幾つかの貴重な小切手や档案の束を持って這い出てきた。そして又再び水をかぶっては炎をくぐり抜ける芸当をやって見せた。
 周囲の歓声が連続したのは言うまでもない。
 私は自分が監獄副官吏員であり、彼が泥棒であることも忘れて何度も「謝、謝」とお礼を言った。
 そして数日後監獄として彼に感謝状を渡し、彼は刑期を短くして出獄出来ることになった。

 訳者注:
 「档案」は社会主義で人間管理の基本的な方法として必要なものであることは、もう何回も出てきました。これが監獄にもついて回ります。ここには個人の全てのことが記入されています。社会主義では個人は管理の対象です。主人公ではありません。