偽造紙幣と銀行

03/11/06 南方週末 何雪峰

 預金者と銀行の闘いは公平に終わるのか

 10月初め、蔡さんから本社へ偽造紙幣のことで投書があった。
 8/22日午前、蔡さんは建設銀行南寧市常北支店へ1000元を引き出しに行った。応対した銀行員は「2294」番の人であった。蔡さんの話によると2294嬢は偽造紙幣チェックの機械を通すことなく紙幣を数えて蔡さんに金を渡した。見たところどの窓口もテェック機を使っていない。そのまま10枚の100元紙幣を持って帰宅した。
 そのうち600元を使ったとき、9/2日に蔡さんは残りの紙幣が全て偽であることが判り、このことを銀行の受付へ電話した。銀行の要求により残りの紙幣を銀行へ届けた。受け付けたのは周という女性であった。
 銀行は機械で鑑定し、その紙幣が偽物であると確認し、その紙幣の番号を書き取り、その紙幣を没収し預かり書を渡すという。しかし蔡さんは紙幣は自分で所持したいこと、紙幣に付いている指紋をチェックして、銀行員2294の指紋が付いていることを確認して欲しいと要求した。
 これに銀行は反対し、そこで物別れとなり、以降銀行は面会も断った。
 蔡さんは銀行に弁償しろと要求しているのではない、と言う。ただ2294銀行員が規則違反で出金したかどうかを確認しているだけだと言う。多分預金を下ろした当日のビデオも残っているはずで、それを見れば彼の言い分が正しいことが分かるはずだとも言う。
 そこで蔡さんは本紙へ投書したわけである。
彼の隣家の人も先日同じような経験をしているという。
 本紙の記者と蔡さんは銀行へ同行し、このことを尋ねた。周女性は、銀行の紙幣は全てチェック済みで偽紙幣はないこと、銀行員の取り扱いに問題はなかった、銀行窓口を離れた時点で銀行に責任はなくなる、従ってその偽紙幣は蔡さんの責任だ、と答える。
 当日のビデオを今ここでチェックしたいと要求すると、それは銀行の仕事で第三者には見せられない、と言う。
10/17日、記者は銀行の事務主任の所へ行き、再調査を要求した。主任は後日書面で回答するという。1週間後書面で、2294銀行員は紙幣を手と機械と両方でチェックしていた。当日どの窓口も機械チェックをしていた。すでに蔡さんにはこのことを説明している、との内容であった。このことを記者が蔡さんに連絡すると、3項目とも嘘だという。
蔡さんは、私の損失は軽微かも知れないが、銀行の信用失墜は大きいのではないか、と言う。蔡さんはこの件で法廷に訴える考えはないと言い、彼の友達らは「先ず勝ち目はない」と言う、とのこと。

銀行の規則とは

 記者が調べてみるまでもなく、このような事例は今中国全土に広まり、日常茶飯事となっている。
 なのに銀行はこれに対して真剣に対処する規定を持っているのだろうか。先の事務主任は銀行の対処規定は他者には見せられないと言う。
中国銀行安徽省の評議員主任の董さんに尋ねた。
 法律としては03年7/1日に”偽造紙幣鑑定法”が出来、各銀行は紙幣引き出しに際し機械チェックをするなどの法律を作った。しかしこれがどの程度実行されているかは不明で、さらにその実施については銀行に任されており、預金者が銀行窓口を離れた時点で銀行の責任は問えないこと、偽造紙幣が出た時点で銀行が没収して良いこと等となっている。このため一般預金者は銀行に対し「役人はやりたい放題」と言う考えを持っている、との認識を示した。
 彼は又機械チェックが銀行側にしかできないため、「預金者は不利だ」と言う考えがあると思うとも言う。各銀行には機械チェック装置が設置されているが、そこには常時長蛇の列が出来ており、自由に検査をすることが出来ない。ましてや紙幣の数が多い場合は先ず不可能となる。このため預金者が安全を得る方法は現在存在しない。従って窓口で紙幣を受け取るときに銀行員の機械チェックを確認するだけだ、と言う。

 先の銀行員は何度も「銀行の扱う紙幣に偽造は絶対混ざらない」と説明した。これは事実か。
 例えば、00年11/23日北京のある銀行で連続偽造紙幣が発見された。これは後日銀行員李某の意識的行為で有ることが判った。このように銀行員の風紀・道徳上の問題も多々存在している。

 このような事件となる事例は多々あるがそれが法的に司法の場で解決された例はほとんど無い。中山大学の嶺南学院の副主任の牛先生は「これはまだ中国の法律が完全ではないからです」と指摘する。彼によると発達した社会の欧米では取引が電子的に交換されることが多く、反対に手で数えることが多い中国の場合、極めて危険性が高くなっている、さらにそれらの国では銀行員の職業意識が高い、更に外国では銀行を中心とした信用体制が発達している、もし銀行側に問題が出ればそれらの国では地球規模で信用がなくなる、銀行の存在自体が否定される、と言う。 従って中国が信用を確立するためには、信用を確立する法的な整備が先ず前提となる、と指摘している。

訳者注:
 私が大連にいたとき、銀行へ時々日本円を中国元に交換に行きました。窓口の女性が通路を指さし、「あの人に頼めば率が良い」と薦めます。そこには日本で言うやくざ風の人が立っていて、人相の悪い感じですが、銀行の中なので持ち逃げなどしないと思い、交換して貰いました。その態の男の人は銀行の入り口表に数人並んでいます。勿論偽造紙幣のチエックはしません。確かに銀行よりは少し交換比率が良かったです。銀行員はその紹介で、私設交換業者からバックリベートを貰うそうです。その紙幣の中に偽造があるかどうか私には判定できませんでした。学友の中には偽造紙幣を大切に保存している人もいました。
 このようなことは後進国では普通のことではないか、と私は思っていましたが、皆さん如何でしょうか?
 台湾には私設交換所が有りました。(宝石店を通って奥に入ります)
 でも台湾には偽造紙幣は無かったと思います。