3個の卵で1個の即席麺
02/03/07 南方週末   孫勝恩

 西部の貧困地帯では多くの家庭が卵を即席麺と交換して子供の食事にしている。
 これは「西安交大医学院」が農村基礎調査で判明した現象である。
 この調査は当医大と国連児童基金の援助の下で西部の9省、100以上の貧困県で行われた、農村の衛生・婦女子の栄養調査に関するもの。
 この調査では14000人に聞き取り、0から36ヶ月の嬰児に関して、およびその母親の貧血発生率と赤血球内のタンパク質調査も含む。
 その結果、嬰児の栄養不足で成長が遅いものが23%、身長が伸びないものが22.6%を占め、また貧血症が23.3%を示し、発達国家の水準には遙かに及ばないことを示している。
 この調査で最も気になるのは、この卵で即席麺と交換して食事にしていることであろう。

 調査責任者の顔紅教授は3才の子供ふたりを調査したとき、その子達は手に即席麺を持って食べていた。気になってその家を訪問すると、家にはおじいさんおばあさんがいて、彼等が言うには、両親は共に遠くへ出稼ぎに行っていて、おじいさんおばあさんが子供を育てているという。家の中に一つの籠があって卵が入っている。そして子供達は即席麺を食べている。おじいさんは、「子供が好きでね。
 この県ではどこでもこうして卵と即席麺を交換して子供にやっていますよ」と言う。

 この村では貧血病の人は人口の4分の1で、タンパク質の摂取がとても重要な成長期に栄養がとれなかったのである。しかしこれら貧困の農村では都市市民のように、牛乳や肉魚類をほとんど与えていない。しかし庭には鶏がいて卵を食べることはそう難しくはないはず。1個か2個の卵で子供の成長に必要なタンパク質は足りている。特に卵の燐資質は子供の脳の成長に欠かせない。この卵の優れた要素が全く顧みられていないことが気になるところ。しかし、即席麺と交換することで、大切な栄養摂取がなされていない。 
 即席麺はこの村では8角9分で(元の一桁下)卵3個の値段となる。しかし栄養から見れば、卵の方が遙かに尊い。0から36ヶ月というと子供の成長のピーク時。この時期タンパク質が不足すると、現在だけではなく、後々の身長や体重、免疫力などにも影響してくる。これは後から取り返すことは出来ない。 この村の諺では「村を通り過ぎては買い物が出来ない」と言う。今こそが栄養の摂取時期なのだ。
 しかしこの村の人たちは大半が文盲で栄誉や科学知識は全くない。現在各家庭の食事を司っている母親達にも栄養に関する知識は皆無である。母親達に常識的な栄養教育が出来れば、大きな成果が直ぐ現れるであろう。
 この村の誰も、1個の卵が子供の成長にとってとても大切な栄養を含んでいると言うことを知らない。この村の人達の話では、即席麺は太らない食品として歓迎されているらしいが、栄養的に不完全品とは誰も知らない。
 1982年に既に、まだ食券制度だった頃、真っ直ぐな乾麺に代わって即席麺が出現している。この面の包みの印刷が飾られていて、人々の欲望をそそった。今ではその魅力が薄れたが、しかし市場には常に大量に存在し、その料理の簡単さから今でも愛されている。しかし栄養素としては不完全であることを誰も気づいていない。
 西部地帯の貧困地帯の婦女子の生活を改善するために、彼等の現実の生活を見る必要がある。
 全体としてこれらの地区では、出産に専門医にかかる率は49%。新生児の死亡率も都市部と比べると遙かに高い。当然西洋の国家と比べるともっと率が悪い。特に4から6ヶ月の嬰児には栄養補給が欠かせないだろう。
 実際この省の女性達はどんな風に出産するのだろうか。”ほとんどの女性は自宅で産婆を呼ぶ。ある地方ではまだ「作土」と言う習慣が残っている。これは竈の上に土を盛りその中で出産をする。その家の習慣を守って出産することはその家庭の決まりである、と人々は言う。もちろん地方政府がこれまでも助言を行ってきた。しかし封建思想が強く又、最大の原因は経済が未発達なことであろう。

 又、嬰児に栄養補給を与える問題は簡単には解決しない。その理由は一つには母親の労働が強度で、土地を耕し、また遠くへ出稼ぎに行き、嬰児に母乳を与えることはほとんど不可能である。その代用品が必要である。逆に1才を超えてもまだ母乳だけという家庭もある。たとえ栄養補給するといってもその内容は粗末で、米や粟の”かゆ”類のみである。

 西部貧困地帯のこれらの問題が上級組織の関心を呼ぶようになって来たが、具体的な動きは現在まだ何もない。
 根本的な解決は社会全体の資源が豊富にならなければ解決できないと言う言い方である。つまり経済が発達するまで不可能と言うことか。
 世界銀行の統計によると発展途上国の栄養不良による労働損失は経済指標上約3ないし5%を占めている。これによって計算すると中国では毎年2610億から4350億元の損失が生まれている。
 これらは人類全体にとっても大きな損失である。
 これら栄養から見た大きな負担を持つ国としては、世界的に見ると、最も遅れた国家の一つとなっている。
 (中国食品新聞参照)