広州駅の麻薬族
 02/07/22    周浩

 2年前、「南方日報」記者梁文祥が単身広州駅広場で麻薬を吸っている群衆に交じり、その実体を写真に納め、世間を驚かせた。どんよりとした目つき、注射の痕だらけの二の腕、骨と皮だけになった身体。
 この新聞が発表されると、広州駅の広場は世界の注目するところとなった。各級組織が注目し、広州市は警察力を動員し、周囲一帯の大規模検査が始まり、多くの麻薬患者が収容され、広州駅はその様子をすっかり変えてきた。そして2年が経った。そこで我が南方新聞社は再び記者を送った。

 02/06/25、国際禁毒日の前日、広州駅前広場。真昼の太陽の下、西広場の歩道橋の上に、10数人の男女が座ったり寝ころんだりしている。彼等のほとんどは身体の生気が無く、衣服はぼろぼろ、落ちくぼんだ目に輝きの消えた顔つき。
私達が写真を撮り始めると、一人の痩せこけた中年の男性がズボンを拾って立ち上がった。その脚は竹のようで、皮膚には入れ墨がしてある。彼は狂ったような目で記者を睨みながら、ばたばたと走るようにして歩道橋から駆け下り姿をくらませてしまった。
 近くの、様子が判る人に尋ねると、ここは麻薬を吸う人達のたまり場である。ある時には麻薬を買う金を求めて歩道橋で頭を下げて通行人に施しを訴える。
 しかし広州警察が警備を強化しているので、座り込む場所も少なく、仕方なく大人しくして「思うとおりにいかないこと」を我慢しているようだ。
 そして一昨年の100人前後の人数が現在は20人くらいに減っている。
 2名の記者がここへ来る前に警告を受けていた。彼等が以前と比べて、資金が入りにくい為凶暴の感があると。
 そこで記者は乗ってきた車の運転手に近くに止めドアを開けておくことを命じた。万が一の時は素早く車で逃げ出すためだ。
 寝ころんでいる群れの中に入って、ちょっと懐柔策を弄して、王という名の男性に話を聞いた。彼の左肩には恐ろしいほどの注射の痕がある。王さんは本当は30才を超えている。しかしその顔色はもうすっかり老け込んでいる。ほぼ50歳くらいに見える。彼が言うにはここへ来る前に「戒毒所」に通ったという。しかしその効果はなかった。その上自分ではエイズに罹っているのではないかと疑っている。
 彼の後ろには顔色が真っ青な青年が寝ころび、尻を上に持ち上げ、ゆっくりとズボンを上げようとしている。彼の名前は楊という。東北出身。ここに来て半年になる。王さんの説明によると、この楊さんは、つい今し方白い液を太股に注射したところだという。ズボンを上げようとして、そのまま又眠ってしまった。このスタイルを「飛行機に乗った状態」と彼等は称しているそうだ。
 こんな話を聞かせてもらっている内、彼等は当方への警戒心を解き始めた。
 彼等のこれまでのことを聞かせて欲しいと頼むと、一人の男性が話し始めた。
 2年前100人以上居た愛毒者達はほとんどもう死んでしまったのではないか、天の方へ飛んで行って、と語ってくれた。
 傍で寝ころんでいる先ほどの楊さんは鼻ですうすうと音を立てて、こちらをからかっているようだ。自分の将来には全く関心がないような様子だ。
 2年前見かけた「大姉御」は今は見られない。彼等に様子を聞くと、「大姉御」はまだ生きているらしい。しかし今は骨だけの身体となって、頭も狂い、歩くこともままならず、駅の時刻表を売り有ることも出来ず、まあ、天へ行くことも数日では無いかという。
 王という男が今は警察の手入れが多いので、あまり本当のことは言えない、いざというときは逃げなければならないから、と言う。

 その歩道橋から少し離れたところで、駅が雇った警備員が棍棒を握って、歩道橋の上を睨んでいる。彼の職務は、駅周辺の自転車やバイクを整理することと、愛毒者が広場に集まってくることを制止することだという。 「もし彼等が広場に現れたら、この棍棒で殴ることが許されている」とのこと。しかし彼の話では愛毒者達は警察を恐れるが、警備員は恐れないと言う。彼等は時々4,5人集まって警備員を襲撃することもある。でもほとんどの時間は歩道橋の上で寝ころんでいるだけだという。この状況は2年前に比べてとても良くなった、と警備員が話す。 

訳者注:
 中国でも麻薬は禁止されています。しかし、報道機関が世間に写真などで現実を見せないと政府はなにもしないという、その典型の一つの実例です。
 揚子江より南の海岸周辺の鉄道駅に近づくときは麻薬を売る人達が居ます。巻き込まれないように注意が必要です。