江蘇省が腐敗の”温床”を全面凍結

02/04/11 南方週末   記者-黄広明

 3月14日江蘇省政府は公文を発表し、即日、省内の全てのホテル・飯店・招待所などの資産・財務・人員編成などを凍結し、監査班を編成して、監査を始めた。
 ことの起こりは2月の2つの会議から始まった。会議の席上、省内の民主党と商工関係の有志らが連名で、共産党の腐敗を防ぐために上記の提案がなされたことによる。
 今年になって596件の提案がなされたが、本案がその第1番に設置された。それは誰の意見をも包含するもので有ったからだ。
 江蘇省党委員会省政府の主な責任者は全てこの案に賛同。こうして全面凍結の命令が下された。
 何故各級ホテルが腐敗の温床なのか。
この提案では、政治協商委員達の意見は下記のような理由を提示している。
”有るホテルは常に非正常なやりとりのための重要な場として利用されている。そこでは客を迎え土産を持たせ、飲食各種の遊びなどお金が目鱈やたら使われており、かなりの腐敗分子どもが私的に、どん欲にこれらの場所を使っている。”
さらに”これらホテルをかなりの数の幹部達が腐敗のやりとりに使っており、その筋の人達の間では「腐敗の温床」と呼ばれている。

 最近全国的にも表面化している腐敗の各種事件が、一般民衆の注目を集めている。
 これら多くの腐敗分子達はそれぞれの自分用のホテルを常用している。最近有名になった「五毒の書記」”張二江”のように、湖北省江口市と天門市の間を行き来して両市のホテルを腐敗のやりとりに頻繁に使っていた。 そのホテルで収賄を受け取るだけでなく、異性を呼んで遊び、賭け事なども行っていた。
 彼等腐敗分子は自分特有のホテルだけではなくその他多くのホテルを使っていたのだが、ただ、より安全を選ぶときは特別のホテルを使ったようだ。
 ホテルでの腐敗現象は時々名前を変えて「訓練所」などでも盛んに行われた。その名前が一般の人に察知されにくいからである。
 1999年国家計画委員会から来た特派員達は道路水管検査を行ったが、1.1億元をこれら「訓練所」に於いて受け取っていた。
 普通の人の考えでは、「訓練所」とは教育や図書館や、資料閲覧室および教職員宿舎と理解されているが、三星級のホテルと同じ客室や集会所を備えている。又内部にはプールやボーリング場、さらにはサウナや美容室ダンスホールなどの娯楽施設を備えたところがある。このような所の「訓練」とは何を指しているのか、計りがたい。
 同じように名前からはその実態が計りがたいところで「療養院」と言うのもある。

 今回の提案をしたうちの鄭建和と李一鳴が言うには、当政府機関が創ったこれらホテルや訓練所などは計画経済の下で人員の往来と職業訓練などを目指したものであった。
 管理員の説明では、初めはその道に合った利用がされていたが、経済の発達に連れて次第に大きな問題が発生するようになった。
 この2人の所属する寧海大楼は商工局が主として使用するホテルであったが、下層部分が商工局の三星級ホテル、高層部分は商工局統括部や各民主党およびその他の企業の事務所となっていた。このようにホテルと事務所が同居しているスタイルがかなりあり、生活と仕事が一体となっていた。
 寧海大楼の向かいにある法宴ホテルには高級人民法院の事務所があり、別名法官訓練所
となっている。
 これらの様式は全国の多くの地方で、1980年代から建設が始められ、宿舎・娯楽所・休憩所などの共同複合体をなしてきた。 
これら建物の投資形態から見ると、大半が党政治機関が出資している国有財産とも呼べるもの。それが実際の使用は商工関係や企業の名前が登録され、又一部は実際の訓練所ともなっている。しかしその所有区分も明確でない部分が多い。
 投資額から見ると数10万元からの小さなものから数千万元のものまであり、数からすると1500軒以上はある。名の知られたものは、寧海大楼商工幹部療養院、太湖明珠国際大酒店などである。

 先述の鄭建和によると、訓練所は「市場経済と計画経済の狭間」に存在し、腐敗現象が発生しやすいところであり、同時に次の3個の弊害を発生している。
 その1.社会資源の極度の浪費。建物の利用目的が無く、何の役にも立っていない。利用者がほとんどいない。
その2.政府機能を弱化している。党政府部門がホテルに入り浸り、指導部が仕事を放り出している。
その3.公平な競争に基づく市場経済の良いところが何もない。党政府が利用することによって、それが特権的であり、一般の利用を図ることが出来ない。逆にこれが又党自身を破壊している。

 予想しにくい今後

 これら弊害はあまりにも明確で、しかし正道に戻すことは簡単ではない。
 記者が4月南京に来たとき、江蘇省の監査班が丁度組織されたときであった。
 その責任者が、これから徹底的に検査を始めますと声高らかに宣言したが、それ以降具体的な行動は何もない。「何を言うのも言い難く、政治的性格から極めて敏感な雰囲気」となっている。
 当省の体制改革研究会会長は、「これは上手く行けばとても良いことだが、それだけに又難しい」と言っている。
 正規の商業目的の民営ホテル等は今回の省の行動に歓迎を表している。「市場競争の原理は公平性を高める」と、南京市の太酒店の社長は意見を言っている。
 「これまでは政府関係の会議は全て政府系のホテルが独占してきた。宿泊より会議が主で、泊まりは団体客扱いで普通は三百元の所を二百元にしてきたので、こちらへは宿泊客は流れて来なかった」とのこと。

 南京新世紀大酒店の副社長が言うには、「 政府系ホテルの部屋代は市場の価格とはかけ離れて安く、それだけに当然独立採算は出来るはずが無かった。ただし、政府系ホテルとして税制上の待遇は極めて良かった」

 やがてこれらの政府系ホテルが問題視されてきて、一般庶民も今回の取り組みに賛成をしている。ただ彼等の理解は、政府系ホテルの利害が庶民と密接に関係しているだけでなく、これからの監査は良い面もあるが悪い面もあると言う風に言う人が多い。
 省商工局の有る職員は、今回の監査が上手く行けば福利行政費用について大きな無駄使いが除かれるが、かなりの政府機関と企業などがこれに頼ってきたので簡単に整理できるだろうか、と話してくれた。
 また省商工局の訓練担当官は「今後中国がWTOに加入したからには、更に一層幹部達を教育訓練しなければならない。それには先ず会議が必要で、その後具体的な行政活動に参加できる。そのために政府系の非営利団体としてのホテルが絶対必要であろう」と言う。
又彼は「本省は全国でも進んだところで、年頭から会議が重なっているのは、全国から見学者が山と来るからで、本省は魚と米が有名で、来たからには名所旧跡の多いこの土地柄、だれでも一日でも多く宿泊していきたいところである。そうなれば民間のホテルではとても高くてママならぬのではないか」と言う。
ただ彼が担当している訓練センターは会議として使われているだけでなく、宿泊所としての利益も2,3月だけで1万から2万元出ているという。
と言うわけで、この監査の責任者の鄭は、「監査の態度は積極的に、行動は穏便に」、と話している。
 昨年、既に政府系を離れた鐘山ホテルは鐘山集団公司の所属ホテルとして再出発した。政府や関係の人達も新しい試みとして注目をしていたが、1年経つと立派に独立採算が出来ていることが解った。

 今後の具体的な整理整頓の方針は、今後政府からの援助が減少していく方向で、以下のその営業を守るかも大きな問題となるであろう。
 有るその道の専門家は、このようにして政府から本来必要でない「皮」を取り除くことで党の清潔が保たれるのではないかと言う意見である。これまでこの「皮」なるものが、党を腐敗させてきたし、市場経済の成立を妨げてきた。一段と「皮」を剥ぐ中で政府の清潔さを保ち社会環境を拡大して行く、その方面の意義が大変大きいと言うことだ。

 訳者注。
 江蘇省は上海の北側で太平洋側に位置する省でGDPは広東省、山東省についで3番目の大きな省。南京、蘇州、無錫などが有名。

 中国には6つの民主政党が存在します。彼等は建国時に党に協力したのでその存在を認められています。ただし、共産党の指導を受けることと、会議の内容を報告する義務があります。
 この記事では指導されている民主政党が共産党の腐敗を無くするように提案しているわけで、どちらが指導と言えるのでしょうか。