最悪の日本経済の実情
02/01/31 南方週末 
    鄭理

 日本経済はすでに連続2年マイナス成長を記録。OECD最近の発表によると、日本経済は2002年も続いて経済は悪化し、マイナス0.75%の成長になる模様。2002年度もマイナス1%と予想されている。就業率、消費傾向などもかなりの厳しさを迎えている。
 日本全体が目下、抜け道のない状態となっている。そこへ持ってきて中国からの追い上げが大きく影響するのではないかと言う声もある。この後者の、中国の影響がどれほどの影響を与えるのだろうか。日本は果たしてまたこの悪境を抜け出すために真珠湾攻撃のような世界に衝撃を与える手段を執るのだろうか。

 最悪の実体

 今また多くの経済人または政治家が日本のこのような窮状が何をもたらすか解らないと言う警戒感と、対ドルの円切り下げに目を見張らして注目している。
2001年上半期にすでに、日銀の早見総裁は経済回復の手段として、円切り下げがあることを示唆していた。これを聞いた各国は大きな警戒を始めている。実際、昨年末から円は暫時下降を続け、最近になってまた大幅に下がり始めている。最高で126円、最低で123円を示している。
 日本政府は現在介入の態度を示していないが、内務省技官黒田東彦は最近の講演で市場傾向で、このまま円安が続くと言う見方を示した。
 モルゲンスタンリー証券の研究では、日本はアジアの中でその重みを減らし、円安の要素を増やしていると発表している。もしこのまま下がり130円の大台を越えれば、またそれはすぐに140円に近づくことをも内包していて、中国の人民元は大きな痛手を被るだろう。それは同時にアジアにおいても市場不安をもたらすだろう。
 これまでアジアでは中国の人民元切り下げで大きな打撃を被ってきた。このようにアジアでは価格変動が市場混乱の大きな要素となってきており、日本円の「真珠湾攻撃」的な突っ込みに今後とも警戒を要求されている。

 本当に日本経済は落ちたのか

 日本経済の真の実力は、統計によると、1990年から2000年までにGDPの伸びは平均で1.75%。同時期の先進国の中で、トップを走ってきたドイツの2.25%から遅れること0.5%にしか過ぎない。
 日本経済の成長は落ちている。しかし現在日本は先進国の中でGDPはトップである。その技術水準は世界一流を示し、研究に投じられる資本も先進国の前列に位置し、対外国際収支は断然トップである。保持する外貨もまた世界一である。
 ある経済分析家は、日本は真の経済的陥没に落ちて衰退を示しているとは思えないと指摘する。ただその一種の転換期ではないかと述べている。すなわち、経済成熟期に向かってのどの国も経験してきた曲がり角ではないかという。
 この曲がり角、高速道路から一般道への分岐点、そこでは速度が落ちるのは当然である。 すなわち、再び快速に飛ばし始めると競争の最前列を行く可能性を持っている。この予想はすでに日本のある企業では実現している。すなわち日本の5大自動車産業では2001年度に円安に助けられてその企業利益は操業史上最高を記録している。その5個の企業利益の合計は10087億円で前年比47%の増加である。
 名目上の総利益は20000億円を示す。9年続けてアメリカ3大自動車産業の合計利益を凌駕している。
 新聞紙上では日本経済の不況を書き立て、ある面では研究開発投資の一段と増資をうたっている。ある報道によると2000年度の日本の研究開発費は16.2893万億円(約1357億ドル)昨年度比1.7%の増加で、国内総生産の3.18%に達している。また2000年度の日本から輸出された技術は1.0579万億円で前年比10.1%の増加となっている。輸入は4433億円で前年度比8.4%の増加を示している。

百年目の大転換  

 1968年に日本のGDPは世界第2に躍進。20世紀末まで、80年代前後から日本の工業技術水準はその精細な加工面の技術において、組立産業において、世界の最前列に位置してきた。これらの意味するところは、一国の歴史的高度発達の段階はすでに終極に達していることではないか。
 ここでは経済構造上の調整は相当深刻な問題を含むのではないか。
 日本経済は130年に渡った発展を、今再整備する段階で、追いつけ追い越せの姿勢から成熟を目指したものに方向転換が必要ではないか。しかしこれまでの経済成長のみ追求してきたやり方を転換することは簡単ではない。
 同時に世界的に見ても、昨年の9.11事件後日本経済は一段と動きが鈍くなっている。2001年の日本経済のマイナスは決して不思議な現象ではない。
 しかし、その緩慢な成長とその必然性は以下に述べるように2つの方面から指摘されうる。
第1は、日本経済の基本的力量は世界的に見て相当大きい。2000年度の中・日のGDPを比較して今後を類推すると、もし日本が今後2%の成長を続ける場合、その成果と同じものを生産するには中国は8.88%のGDP成長を達成しなければならない。
 第2に、後発国としての位置付けが無くなっていること。後発国が経済的飛躍を実現するとき、その国は先進国から進んだ技術を模倣し又は買い取ることが必要である。我が中国は今まさにこのような段階である。しかし後発国はいつまでもこのような手段に頼ることはできない。日本が20世紀80年代以降の経済低迷はこのような状態を意味しているのではないか。日本が中国に与えている貴重な教訓はまさにここにあるのではないか。すなわち高度成長の完成前に独自の創造的な技術と産業育成が必要なことを。

 依然としてその実力は抜群

 日本の経済を分析すると、
 1.一人あたりのGDPは先進国のトップである。1999年アメリカのGDPは34047ドル、日本は35567ドル、日本はアメリカの約4.5%強。2000年度ではアメリカ・日本・ドイツのGDPは99631億ドル,47496億ドル、18724億ドルを示す。すなわちアメリカは日本の2.1倍。日本はドイツの2.5倍である。
2.世界一流の製造技術。日本の主要な工業部門での技術水準および生産能力はアメリカをすでに追い越している。電子顕微鏡、半導体、計算機、工業ロボット、超伝導応用、光ファイバー関係の高度技術部門、炭素繊維、セラミック、IC関係、等の新材料関係ではすでにかなり優位な位置に立っている。特殊産業に絞っても日本は得意の分野を多く持っている。
 たとえば液化天然ガス推進船では日本は世界市場の100%を独占している。
3.研究開発費用も日本は世界の先進国のトップである。20世紀90年代、日本とアメリカの経済力は際だった対比を示した。その主要な原因は、開発能力と新産業育成への適用能力にあって、日本はアメリカに及ばなかった。
 ただし、1996年、日本の研究開発方面への投資はGDPの2.8%で、アメリカの2.64%、ドイツの2.41%を越えている。
4.国際収支はダントツである。日本の商品は競争力で他を圧倒している。近年日本の貿易が減少を示していると言われるが、貿易額では依然として世界最高である。2000年、日本の貿易収支の黒字は1166億ドルである。アメリカは4361億ドルのマイナスである。
5.外貨準備では世界最大である。2000年末、日本の外貨準備高は3616億ドルに達し、アメリカを含んだ主要先進国の外貨準備高の合計は2778億ドルで、日本はその1.3倍を保持している。
6.依然として世界最大の債権国である。対外純資産の合計は年平均13.4%の速度で増えている。2000年の国外純資産は11579億ドルで1990年度の2.53倍を示している。

独り立ちを始めた日本経済

 日本財務省の発表によると2000年末に日本の海外総資産は346兆円(約32046億ドル)で日本のGDP総額の67.42%となっている。地球全体の海外資産の5割を占めている。その中身は13280億ドルの金融債権と、18766億ドルの剰余金は製造業と不動産業への直接投資である。この項目ではアメリカも日本の背後に並んでいる。日本の海外製造業の売上総額は中国のGDP総額を超えている。
 特に注目に値するのは、地球上のいかなる地点にも顔を出し、特に経済的に重要と思える地点には大量積極的投資を行い、その成果はまさに漁夫の利を得るがごとくである。2000年末に日本の海外資産が一挙に増加した額は3317億ドルで総額は32046億ドルに達した。海外証券資産の分野では13280億ドルで地球全体の3割強である。
 日本の2000年度に海外へ投資された額は只の26.63兆円、そしてそれが年末には48.3兆円に増加している。一年で21.67兆円増加しており、これは約2000億ドルになる。これだけの純利は単純計算でも20000億ドルの生産が必要である。これらの利益追求の過程でのリスクなどを考えるとき獲得したものは計り知れない。

 静的観察

 最近になって日本国内では「中国の驚異」が叫ばれている。中国経済がやがて日本に取って代わるのではないかという言い方で。この言葉が中国人を喜ばせているのも事実である。しかし識者の見るところ大きな反論がある。
 日本経済産業部主席研究員の”関志雄”は、中国が日本に遅れること約40年の開きがあると言う。
 他の言い方をすれば、中国と日本との実力の差は高度な技術の分野で顕著である。統計の示すところでは、日本からアメリカへの計算機の輸出額は減少を示しているが、中国からアメリカへの輸出は増加している。しかし専門家によると、中国が輸出している計算機の質が問題だという。すなわち、中国の計算機の部品と技術は全て日本から買っている。中国の過去10年の経済は飛躍的に成長してきた。しかし日本のそれはほとんど伸びていない。それなのに中国人の年間収入は1000ドル以内で、日本は中国の約40倍となっている。中国のGDPは日本の25%だ。
 日本の教育水準は世界のトップである。これはその国の素質を測る大きな要素である。しかし中国が日本の教育水準に達するには今後数世代以上の歴史的時間が必要である。
 現在アメリカの経済も衰退している。ヨーロッパも低迷。日本経済はマイナス。アジアでは1997年の通貨変動危機で今も厳しい状況下にある。現在のドル換算で計算すると、日本のGDPは中国・インド・東南アジア4つの竜国(台湾・韓国・シンガポール・タイ)等15の国家のGDP総和の1.6倍である。
 従って日本経済が回復軌道に戻ることは、アジアの安定的平和的発展から見ても重要な意義が有る。