夫婦げんか
02/04/18 南方週末 

 最近放送されたテレビ劇「誰に言っても解らない」が人気を呼び、その中の夫婦間の暴力が話題になっている。
 筆者は1999年8月から2000年8月の間、全国60ヶ所に於いて、20歳から64歳までの人を対象に調査を行った。調査に応じてくれた3815組の男女が回答してくれたその結果が、現在中国の男女間の状況を充分に表しているのではないかと考え、ここにその結果を発表する。
 
1.夫婦間の暴力=妻を叩く ?

 この調査の中で、夫婦間でこれまで暴力を揮ったことがあるのは37.2%。そのうち夫が妻に対してが18.9%。妻が夫に対してが3.3%。共に闘ったのが15%となっている。
 調査の1年間だけで夫婦間で暴力が有ったのは12.1%。その内、夫から妻へが5.6%、妻が夫へが4.1%、共に叩き合ったが2.4%有った。
この調査から解るのは、当然であろうが、夫が妻に対する暴力が最も多い。しかし意外なことに夫婦共に闘うのも少なくはない。一般には夫婦の暴力と言えば夫が妻を叩くものと理解されているが、しかしこれは事実に合っていないばかりではなく、妻が暴力を揮うことも有ることを理解しないと、中国女性を甘く見ることになる。
 
 今日まで妻たるもの如何なる状況でも夫に従い、例え打たれても「死をも厭わず従う」ではなかったのか。
これは過去の考えであろうから、この調査から見えている妻側の武力?は中国女性の一歩進歩していることを示すのか。   
 夫が妻に暴力を揮うことに反対する呼びかけだけでは、これは少し滑稽なものとなってしまう。

 もし妻側が絶対手を出さないとして、夫からの暴力は如何に防ぐことが出来るのか。各家庭に一人の警察官を住まわせるべきであろうか。
 今回の調査が示しているのは、結婚以来重傷を伴う暴力を受けたのは、夫が3.5%、妻が8.6%となっている。
 調査の一年間だけでは、夫が1.5%、妻は3.9%の傷を伴う暴力を受けている。これで見ると妻が受けた暴力は夫が受けた暴力の2倍以上となっている。ここに女性の弱さが表れている。
 この場合妻はどうすればよいのか。
 実態から見ると、夫が暴力を揮ったとき妻がただ何もせず大人しくしていた場合、妻が障害を受けた数は67.6%、妻も抵抗した場合は53.8%となっていて、抵抗した方が14%傷害が減っている。
つまり、一般に考えられているように、妻が抵抗する例はやや少ないが、しかし抵抗した例の方が妻の傷害を減らしていると言える。つまり、夫が暴力を揮ったとき、それまでのよしみを棄て自分なりの反抗を表に出すべきなのか。

2.夫の暴力は次第に多くなるのか
 
 今回の調査の中で、夫が揮った暴力は30,40歳代が一番多く、22から23.4%。60から64歳はただ8%しか現れていない。20代は10.9%で、過去の調査と似とようなものだ。もしこの年代が今後とも暴力を揮わなければ、30,40歳代になったとき、10%以上その数が減少することを示している。つまり現在の20歳代の者が今後暴力を揮わなければ、件数は減少していくことを示している。
 又この調査の中で解るのに、夫婦が共に暴力を揮い有った数は40歳以上では11%、30歳代では17.7%、20歳代では18.4%を示している。また、妻が夫に暴力を揮った例が50歳以上では1%、30歳40歳代では2.6%、20台では7.7%となって増加しているこの二つの例は、何か異常な状況を示しているのではないか。
 どちらにしても夫婦の暴力は、結婚というものの中で、何故手足を出し合うことになるのか、

3.叩きたいと直ぐ手が出る。

テレビ劇が放送されて、人々の興味が集まったが、いったいどんな男が妻を叩こうとするのか。毎日の生活の中では何の法的な規制がないので、直ぐ手が出ると言うことになるのであろう。ではどんな男が手を出すのか。多分、自分の実力が相手よりも劣っていると感じた男が手を出しやすいと言うことであろう。
 中国では相対的に女性の地位が当然男性よりも低いので、だから夫が妻に手を出すというのが多くなる。
 夫婦が共に手を出す、および妻から夫に手を出す例は若い層ほど多い。これは最近の男女平等の社会的傾向を表しているのであろう。
 農村では都会と比べ総じて8.5%夫側の暴力が多い。これは農村の男子だけ素質が低いと言うことではなくて、やはり女性の地位の低さを物語るのであろう。
しかしこの傾向も変わりつつある。調査から見ると、夫婦対決は都市よりも農村の方が2%多いのである。これで見ると農村女性の絶対服従の思想は現在減少しつつあると言うことであろう。
 特に興味を引くのは、農村から都市へ大量に出稼ぎに出ている組達の、妻側の、または対等の暴力を伴う喧嘩は、農村にいる組や都市にいる組に比べて多い点である。おそらくこれは、共に臨時工としての夫婦では妻の腰もかなり高いと言うことか。

 以上のことから引き出せるのは、お互いに出来る限り手を出さない方が良い、というのは当然として、その裏に潜んでいる問題は、男女間の役割が激変している時代が始まっていると言うこと。男性側がこの社会的傾向の中で女性の権利意識の目覚めに対し如何に対応するべきか、それが問われているのではないか。男は「良き男性」になる道をしっかり勉強しなければならないということである。
 女性側はこの男性の絶対的上位の社会の中で如何に夫に対抗すべきか、これが彼女たちの重要対策である。
 最後に、私達結婚している者達は、公平な夫婦のあり方を今からでもいろいろと夫婦でやりとりするべきである。
 男が気に入らないとき、女が行き詰まったとき、直ぐに野蛮な方法に訴える。結婚生活の中で対立したとき、ただ単純な手段に訴えるというのは、極端な道で、だから声を大にして夫婦暴力反対と叫ぶべきであるが、しかし、結末だけを強調するのではなく、その過程を納得できるような方法が必要であろう。
(作者は中国人民大学性科学研究所員)

(訳者注)

 夫婦喧嘩について 

 私は日本に来ている中国人夫婦と知り合いました。その夫婦は共に高学歴の人でしたが、あるとき夫が妻に暴力を揮いました。すると
妻は日曜日に東京に来ている中国人の複数の友達を集めて、夫の暴力を詳細に暴露しました。
 夫はかなり衝撃を受けたようでした。
彼の暴力の原因は、1つが妻のテレビ視聴の内容で、彼の気にくわないものばかりと言うことでした。2つ目が保育園に行っている子供の教育です。中国では子供が小さいときからかなり難しい教育を家庭で夜遅くまでします。その教育程度が夫婦間で合致しなかったようです。
 もちろん他にも夫側に、日本での生活が思い通りに行かないなどの心的負担要因があったようですが。
 ちなみに本国ではどんなにしているか、彼に聞いたら、中国では夫が妻を殴ると、妻が直ぐに外へ走り出て、「夫が暴力を揮ったよう」と叫ぶそうです。
 
 中国での男女の地位について

 現在中国では一人っ子政策が採られています。そこでは親にとって男の子がとても大切になります。 
 というのは、子供が大きくなって結婚すると男子側の親と同居します。多分住宅の貧困も関係しているのでしょう。つまり、娘はいつかは家を出て行き、夫の親と同居することになります。しかもその娘以外に子供は居ないとなると、もう決定的に男子が大切にされます。
 更に娘が出て行った後、親は年を取って生活が次第に心細くなっていくわけです。

 でもいつかは、中国でも新婚夫婦が親と同居では結婚できない時代が来るでしょう。嫁姑の問題は世界共通だそうです。